持つべきものは…?

「マネージャー、モロどこ行ったか知らない?」

昼休み、同じクラスの荻野が私の元にやってきた。
同じバスケ部の荻野は、諸星の一番の親友だ。
私とはすごく仲がいいというわけでもないのに、何でか最近はよく話かけられる気がする。

「さあ?…荻野、何で私に聞くの?」
「だって、マネージャーに聞くのが一番早いだろ。マネージャーの飼い犬なんだから。」
「あんなに大きな犬、飼った覚えないけど。」
「じゃあ、マネージャーが飼われてるの?」
「何、馬鹿なこと言ってんの…。」
「あっ、一緒に飼う方がいいか!」
「なっ!?なんで一緒に飼わないといけないの!?」
「なんでって…そりゃ、ねえ。」

意味深に荻野がニヤリと笑うと、急に声を張り上げて私の後ろに声をかける。

「なあ、犬飼いたいよなあ?」
「犬?そうだなー、飼うなら大きい犬がいいなー。」

今、一番聞きたくない声が、後ろから近づいてくる。
私は肩をビクッと震わせ、その声の主に恐る恐る視線を向ける。

「もっ、諸星…。」
「ん?何?」
「今の…聞いてた?」
「犬飼いたいって話だろ?飼うの?猫いなかったっけ?」
「う、うん、そうそう、そういう話!飼わないけど!あっ、荻野が探してたよ!」

諸星の反応を見るに、聞かれてはいない様子。
私は話をそらそうと、目の前の荻野を指さす。

「あ、そうなの?何だよ、荻野。」
「犬飼いたいよなあって話。」
「は?そんな話するために、俺探してたの?」
「いや、特に用はない。」
「はあ?何それ。」

諸星は訝しむが、タイミング良く他の人に呼ばれて、私達のそばを離れていった。
私は内心、胸を撫でおろす。
そして、用がないのに諸星を探していた荻野を、今度は私が訝しむ。

「…諸星に用があったんじゃないの?」
「いんや?俺がマネージャーのとこ行けば、モロも来るだろ。」
「はい?」
「そうすれば、マネージャーがモロと話せる機会が増えるじゃん。」
「なっ…!」
「マネージャーは俺にもっと感謝してくれていいよ?持つべきものは気の利く友ってね。」
「すっ、するわけないでしょ!余計なお世話!」
「照れんなって。俺は応援してるぜ。」

カラカラ笑いながら、荻野は私のそばを離れていく。
私はその後ろ姿をじろりと睨みつけた。

「…このお節介焼き。そんなことされたら、私の心臓が持たないよ…。」
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