ドーベルマンの瞳は鋭く
デートに遅刻したのに、怒るどころか、むしろご機嫌な久莉奈と雑貨屋の店内を歩く。
確かに喧嘩したことないから、久莉奈の前でキレることなんて、そうはない。
でも、ナンパされたのだって俺のせいなのに、俺がキレた顔なんか見てそんなに嬉しいもんか?
少し不思議な気持ちで、隣の久莉奈を眺める。
けど、あまりにも楽しそうなその姿を見ていたら、そんな小さな疑問はだんだんどうでもよくなってきた。
まあ…喜んでくれてるならいいか。
「あ、これ!」
おもむろに久莉奈が声を上げ、棚に並べられたぬいぐるみを手に取った。
「犬?」
「うん、ドーベルマン。何だか大君みたい。」
そう言うと、久莉奈はぬいぐるみの顔を俺に向ける。
久莉奈の思わぬ発言に、俺はマジマジとその顔を見つめる。
実物は厳つそうな顔なのに、ぬいぐるみだとなんと言うかちょっと間抜けな顔つき。
これみたいだと言われても、いまいちピンと来ない。
「…どの辺が?」
「犬って、表情豊かでしょ。それにドーベルマンは家族に愛情深くて、勇敢に守ってくれるイメージ。それが大君みたい。」
「そう、なのか…?」
「実物見たことないからイメージだけどね。でも、さっきだって守ってくれたし。顔もなんか似てない?」
「えぇ?そうかぁ?」
「うん、かっこいい。あ、このぬいぐるみはかっこいいより可愛いかな?」
買っちゃおうかな、なんてウキウキしている久莉奈。
恥ずかしがり屋のくせに自分が何言ってるのか、わかってねぇのかな…。
「…あのさ。」
「何?」
「さっきから割と大胆なこと言ってるけど、自覚してる?」
「え?」
「”家族に愛情深い”とか、”かっこいい”とか。」
「…あ。」
やっぱりわかってなかった。
急に顔を真っ赤にして、なぜか手に持ったぬいぐるみをひたすら撫で始める。
その焦り具合が面白くて可愛らしくて、俺の悪戯心に火が付いた。
「や、やだなぁ!家族って言うか、身内に優しいってこと!」
「かっこいい、ってのは?」
「それはドーベルマンの話だから!」
「でも、ドーベルマンって俺みたいなんだろ?」
「…うう…。」
言葉に詰まった久莉奈が、ぬいぐるみを棚に戻す。
その様子が愛おしくて、思わず抱き締めたくなる衝動がこみ上げる。
が、ここは外なのでジッと堪える。
「買わないの?」
「…だって」
「久莉奈と家族、俺は大歓迎だけど?」
「えっ!?な、何言ってるの!?」
「かっこいいってのも大歓迎。」
「…もう!調子に乗らないの!」
「ははっ、そう言ったのはそっちだろ。これ、買ってやるから怒るなって。」
そう言うと、俺は久莉奈が戻したぬいぐるみを手に、レジに向かった。
…いつか、本当に家族として愛情を注げる日を、心待ちにしてるからな。
確かに喧嘩したことないから、久莉奈の前でキレることなんて、そうはない。
でも、ナンパされたのだって俺のせいなのに、俺がキレた顔なんか見てそんなに嬉しいもんか?
少し不思議な気持ちで、隣の久莉奈を眺める。
けど、あまりにも楽しそうなその姿を見ていたら、そんな小さな疑問はだんだんどうでもよくなってきた。
まあ…喜んでくれてるならいいか。
「あ、これ!」
おもむろに久莉奈が声を上げ、棚に並べられたぬいぐるみを手に取った。
「犬?」
「うん、ドーベルマン。何だか大君みたい。」
そう言うと、久莉奈はぬいぐるみの顔を俺に向ける。
久莉奈の思わぬ発言に、俺はマジマジとその顔を見つめる。
実物は厳つそうな顔なのに、ぬいぐるみだとなんと言うかちょっと間抜けな顔つき。
これみたいだと言われても、いまいちピンと来ない。
「…どの辺が?」
「犬って、表情豊かでしょ。それにドーベルマンは家族に愛情深くて、勇敢に守ってくれるイメージ。それが大君みたい。」
「そう、なのか…?」
「実物見たことないからイメージだけどね。でも、さっきだって守ってくれたし。顔もなんか似てない?」
「えぇ?そうかぁ?」
「うん、かっこいい。あ、このぬいぐるみはかっこいいより可愛いかな?」
買っちゃおうかな、なんてウキウキしている久莉奈。
恥ずかしがり屋のくせに自分が何言ってるのか、わかってねぇのかな…。
「…あのさ。」
「何?」
「さっきから割と大胆なこと言ってるけど、自覚してる?」
「え?」
「”家族に愛情深い”とか、”かっこいい”とか。」
「…あ。」
やっぱりわかってなかった。
急に顔を真っ赤にして、なぜか手に持ったぬいぐるみをひたすら撫で始める。
その焦り具合が面白くて可愛らしくて、俺の悪戯心に火が付いた。
「や、やだなぁ!家族って言うか、身内に優しいってこと!」
「かっこいい、ってのは?」
「それはドーベルマンの話だから!」
「でも、ドーベルマンって俺みたいなんだろ?」
「…うう…。」
言葉に詰まった久莉奈が、ぬいぐるみを棚に戻す。
その様子が愛おしくて、思わず抱き締めたくなる衝動がこみ上げる。
が、ここは外なのでジッと堪える。
「買わないの?」
「…だって」
「久莉奈と家族、俺は大歓迎だけど?」
「えっ!?な、何言ってるの!?」
「かっこいいってのも大歓迎。」
「…もう!調子に乗らないの!」
「ははっ、そう言ったのはそっちだろ。これ、買ってやるから怒るなって。」
そう言うと、俺は久莉奈が戻したぬいぐるみを手に、レジに向かった。
…いつか、本当に家族として愛情を注げる日を、心待ちにしてるからな。
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