HappyOathDay
中瀬と付き合い始めて一週間が経った。
と言ってもすぐに冬の選抜が始まったから、恋人らしいことはまだ何もしていない。
選抜が終わって、年が明けたら二人で初詣でも行きてぇな、なんてぼんやり考えている程度。
今は目の前の試合の事で頭がいっぱいだ。
準々決勝を終えた夜、就寝前の自由時間に同じ部屋の荻野が俺に問いかけてきた。
「そういやモロ、ちゃんと渡したのか?」
「何を?誰に?」
「…今日はマネージャーの誕生日だろ。」
「えっ!?……マジで?」
「知らなかったのか?」
確かに、俺は中瀬の誕生日を知らない。
付き合うまで友人として接してきたけど、聞き出す勇気が出なかったのだ。
だけど、付き合い始めてすぐに、そんな大事なイベントが来るとは思いもしなかった。
しかも大事な選抜中に。
一気に頭の中がパニックになる。
が、ここでふと疑問がよぎる。
「何でお前は知ってるんだよ?」
「普通にいつなのか聞いたからだけど?お前、聞いたことないの?」
「…聞けなかったんだよ。」
「肝心なとこヘタレだよなー、モロって。」
…こいつ。
動揺している俺を面白がりながら、いけしゃあしゃあと言い放つ親友が憎らしい。
が、こいつに構ってる余裕は今はない。
「どうすんの?もうすぐ就寝時間だけど。誕生日終わっちまうぞ。」
「…ちょっと中瀬のとこ行ってくる。」
部屋を出て一気に階段を駆け上がり、一つ上の階の中瀬の部屋の前まで辿り着く。
ここまで大した距離じゃないのに、緊張で呼吸が乱れている。
今日一日を思い返す。
知らなかったからとは言え、普通に接してしまったことが悔しいし恥ずかしい。
中瀬は…どう思っているだろうか。
…あれ?でも今日、誰も誕生日を祝ってなかったよな?
「ああ、もう!うだうだ考えても仕方ねぇ!」
俺は大きく深呼吸をして、少し躊躇いがちにドアを二回ノックした。
───コンコン。
「はい?」
「あ、あの…諸星だけど。」
緊張で少し声が上ずってしまった。
ややあって、少し開かれたドアから中瀬が顔だけを覗かせる。
「どうしたの?」
「あ、あのさ、話があるんだけど…入ってもいい?」
「…どうぞ。」
中瀬は少し戸惑いながらもドアを開けてくれた。
両想いになってから二人きりになるのは初めてだから、中瀬も緊張しているのだろうか。
「…お邪魔します。」
宿泊施設とは言え、中瀬が過ごしている部屋。
中に入れてもらったものの、奥まで入るのは気が引けて俺は入口付近で足を止める。
どう切り出していいかわからずいると、中瀬から話を振ってくれた。
「話って何?」
「…今日、誕生日なのか?」
「あ…うん。実はそうなの。」
「言ってくれれば良かったのに。…いや、違うよな。ごめん、もっと早く聞いてればよかった。…なんか聞き出せなくって。」
「ううん、いいのいいの。」
予想に反して、中瀬は手をパタパタ振りながら、あっけらかんとした態度。
ちょっと拍子抜けしてしまうが、じゃあいいかというわけにはいかない。
「良くはないよ。」
「本当にいいんだって。選抜中だからそっちに集中してもらいたいもん。」
「でも、知った以上はお祝いしたい。」
「その気持ちだけで十分だよ。」
「いや…ダメだ!お祝いデートしよう!」
「えっ、デート!?」
「そう、名古屋帰ったらすぐに!プレゼント買いに行こう!」
「…いいの?」
「当たり前だろ!むしろお祝いさせてくれよ。…彼女の誕生日なんだから。」
彼女、と言う単語に改めて、中瀬との関係が変わったことを実感する。
と同時に恥ずかしくなって、思わず口元を押さえる。
中瀬は俺の言葉に驚いた様子を見せた後、目を細めてはにかむ。
「…ありがとう。」
「と言ってもあんまり金ねぇから、大した物買えないけど…。」
「ううん、嬉しい。」
「…来年は頑張るから。当日にはちゃんとお祝いできないだろうけどさ。」
「来年?」
「うん。」
「…そっか、来年も諸星がお祝いしてくれるんだ。」
「来年だけじゃなくて、再来年もその次も、ずっとお祝いするよ。」
「ずっと…!?」
「うん…ダメか?」
「…ううん、とっても楽しみ。」
中瀬は顔を赤らめながら、嬉しそうに微笑んでくれる。
今日の罪滅ぼしというわけじゃないけど、その笑顔に少し救われる。
と、ここで一番言わないといけないことを思い出す。
「…いけね、肝心な事言ってなかった。」
「何?」
「中瀬、誕生日おめでとう。…彼氏としてお祝いできるの、すげぇ嬉しいよ。」
「…ありがとう。」
さっきの言葉が嘘にならないように、この笑顔をずっとそばで見ていけるように、この関係を大切に育てていこう。
大切な人の誕生日は、俺の大切な誓いの日になったのだった。
と言ってもすぐに冬の選抜が始まったから、恋人らしいことはまだ何もしていない。
選抜が終わって、年が明けたら二人で初詣でも行きてぇな、なんてぼんやり考えている程度。
今は目の前の試合の事で頭がいっぱいだ。
準々決勝を終えた夜、就寝前の自由時間に同じ部屋の荻野が俺に問いかけてきた。
「そういやモロ、ちゃんと渡したのか?」
「何を?誰に?」
「…今日はマネージャーの誕生日だろ。」
「えっ!?……マジで?」
「知らなかったのか?」
確かに、俺は中瀬の誕生日を知らない。
付き合うまで友人として接してきたけど、聞き出す勇気が出なかったのだ。
だけど、付き合い始めてすぐに、そんな大事なイベントが来るとは思いもしなかった。
しかも大事な選抜中に。
一気に頭の中がパニックになる。
が、ここでふと疑問がよぎる。
「何でお前は知ってるんだよ?」
「普通にいつなのか聞いたからだけど?お前、聞いたことないの?」
「…聞けなかったんだよ。」
「肝心なとこヘタレだよなー、モロって。」
…こいつ。
動揺している俺を面白がりながら、いけしゃあしゃあと言い放つ親友が憎らしい。
が、こいつに構ってる余裕は今はない。
「どうすんの?もうすぐ就寝時間だけど。誕生日終わっちまうぞ。」
「…ちょっと中瀬のとこ行ってくる。」
部屋を出て一気に階段を駆け上がり、一つ上の階の中瀬の部屋の前まで辿り着く。
ここまで大した距離じゃないのに、緊張で呼吸が乱れている。
今日一日を思い返す。
知らなかったからとは言え、普通に接してしまったことが悔しいし恥ずかしい。
中瀬は…どう思っているだろうか。
…あれ?でも今日、誰も誕生日を祝ってなかったよな?
「ああ、もう!うだうだ考えても仕方ねぇ!」
俺は大きく深呼吸をして、少し躊躇いがちにドアを二回ノックした。
───コンコン。
「はい?」
「あ、あの…諸星だけど。」
緊張で少し声が上ずってしまった。
ややあって、少し開かれたドアから中瀬が顔だけを覗かせる。
「どうしたの?」
「あ、あのさ、話があるんだけど…入ってもいい?」
「…どうぞ。」
中瀬は少し戸惑いながらもドアを開けてくれた。
両想いになってから二人きりになるのは初めてだから、中瀬も緊張しているのだろうか。
「…お邪魔します。」
宿泊施設とは言え、中瀬が過ごしている部屋。
中に入れてもらったものの、奥まで入るのは気が引けて俺は入口付近で足を止める。
どう切り出していいかわからずいると、中瀬から話を振ってくれた。
「話って何?」
「…今日、誕生日なのか?」
「あ…うん。実はそうなの。」
「言ってくれれば良かったのに。…いや、違うよな。ごめん、もっと早く聞いてればよかった。…なんか聞き出せなくって。」
「ううん、いいのいいの。」
予想に反して、中瀬は手をパタパタ振りながら、あっけらかんとした態度。
ちょっと拍子抜けしてしまうが、じゃあいいかというわけにはいかない。
「良くはないよ。」
「本当にいいんだって。選抜中だからそっちに集中してもらいたいもん。」
「でも、知った以上はお祝いしたい。」
「その気持ちだけで十分だよ。」
「いや…ダメだ!お祝いデートしよう!」
「えっ、デート!?」
「そう、名古屋帰ったらすぐに!プレゼント買いに行こう!」
「…いいの?」
「当たり前だろ!むしろお祝いさせてくれよ。…彼女の誕生日なんだから。」
彼女、と言う単語に改めて、中瀬との関係が変わったことを実感する。
と同時に恥ずかしくなって、思わず口元を押さえる。
中瀬は俺の言葉に驚いた様子を見せた後、目を細めてはにかむ。
「…ありがとう。」
「と言ってもあんまり金ねぇから、大した物買えないけど…。」
「ううん、嬉しい。」
「…来年は頑張るから。当日にはちゃんとお祝いできないだろうけどさ。」
「来年?」
「うん。」
「…そっか、来年も諸星がお祝いしてくれるんだ。」
「来年だけじゃなくて、再来年もその次も、ずっとお祝いするよ。」
「ずっと…!?」
「うん…ダメか?」
「…ううん、とっても楽しみ。」
中瀬は顔を赤らめながら、嬉しそうに微笑んでくれる。
今日の罪滅ぼしというわけじゃないけど、その笑顔に少し救われる。
と、ここで一番言わないといけないことを思い出す。
「…いけね、肝心な事言ってなかった。」
「何?」
「中瀬、誕生日おめでとう。…彼氏としてお祝いできるの、すげぇ嬉しいよ。」
「…ありがとう。」
さっきの言葉が嘘にならないように、この笑顔をずっとそばで見ていけるように、この関係を大切に育てていこう。
大切な人の誕生日は、俺の大切な誓いの日になったのだった。
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