聖夜を導く一番星
12月20日、初めての冬の選抜直前、部活が終わって暗い夜道を諸星と歩く。
いつからか帰りの時間が合う時は、諸星が私の家まで送ってくれるようになっていた。
家が逆方向だし、練習で疲れてるだろうから、本当は遠慮したいんだけど…。
でも、好きな人と二人きりになれるのは、やっぱり嬉しい。
いつもみたいに、部活の話や他愛のない話をしながら歩く。
とても楽しい時間のはずなのに、今日は鞄の中にある物のせいで気もそぞろだ。
もう選抜が始まっちゃう…渡すなら今しかない。
私はこっそり深呼吸をすると、意を決して鞄からそれを取り出した。
「…諸星。」
「ん?」
周りに誰もいないのを確認して、立ち止まって声をかける。
こちらを振り返った諸星に、私はそれを躊躇いがちに差し出す。
それを見た諸星は、驚いて目を丸くする。
「え?それ…」
「ちょっと早いけど…クリスマスプレゼント。」
「俺に?いいの?」
私は視線をそらして、小さく頷く。
「あ、ありがとう。…今、見てもいいか?あそこの公園寄ってこーぜ。」
「え…。」
プレゼントを受け取った諸星は私の返事を待たずに、すぐそばの小さな公園に入っていく。
目の前で開けられるのは、本当は恥ずかしいんだけど…そうも言えず、ただ黙って後ろについて行く。
「いつものでいい?」
「…うん。」
諸星は自販機で飲み物を二つ買うと、すぐ横のベンチに座った。
「はい。中瀬も座んなよ。」
「…ありがと。」
差し出された温かいミルクティを受け取ると、少し距離を開けて隣に座る。
諸星は買ったばかりのココアに手も付けず、プレゼントの包みを丁寧に開く。
私はそれを、緊張の面持ちで見つめる。
手の中のミルクティの熱さがわからなくなるくらい、体温が上昇しているのを感じる。
心臓の鼓動がどんどん早くなっていって、呼吸が上手くできない。
「お、スポーツタオルとリストバンドだ。…あれ、星付いてる。」
諸星は黒いリストバンドに入った、小さな白い星の刺繍をジッと見つめる。
「それ…私が刺繍したの。」
「えっ、すげぇ!刺繍なんてできんの!?」
「…初めてやった。」
「そうなの?すげぇ上手だよ。」
「…ありがとう。」
気持ち悪がられたらどうしようかと不安だったけど、そんな様子を見せない諸星に、私は小さく胸を撫でおろす。
「何で星なの?やっぱ、諸星だから?」
「それもあるけど…試合に勝つことを白星って言うでしょ?だから、勝利のおまじないって言うか…我ながら安直かな、と思ったんだけど。」
「わ、マジで!?めっちゃ嬉しい。」
諸星はリストバンドを腕にはめ、両手を前に広げマジマジと眺める。
そして、私の方を向いてニカッと笑った。
「中瀬、サンキュな!選抜で使うよ!」
………ダメ
私の心を救ってくれた、その笑顔。
今、それを向けられちゃったら、もう耐えられない。
ポロリ、と私の目から自然と涙が零れ落ちる。
「…えっ!?中瀬!?」
諸星は慌ててポケットからハンカチを取り出すと、私に差し出す。
私はそれを受け取ることが出来ず、顔を伏せて手で覆う。
「ど、どうした?俺、なんか変な事…」
「好き。」
「…え?」
「…私、諸星が好き。好きなの…。」
言うつもりなんてなかった。
諸星は優しい。
けどその優しさは、みんなに分け隔てなく向けられている。
だから、私もきっとただのクラスメイトで、選手とマネージャー。
報われないなら、気まずくなるなら、気持ちを隠してその関係でいる方がいい。
そう思っていたのに…欲が出た。
望んでしまった。
諸星の特別になりたい、って。
「……参ったな。」
しばしの沈黙の後、ポツリと、諸星が呟いた。
その一言で私の涙がピタリと止まった。
体から急激に熱が失われていくのを感じる。
覚悟はしていたはずなのに、本人の口からそれを告げられることは、こんなにも辛いのか。
…やっぱり、言わなければ良かった。
「…先に言われちゃったか。」
「…え?」
次に続いた言葉に驚いた私は、弾かれたように顔を上げる。
諸星は困ったような申し訳なさそうな表情を見せ、私の両肩にそっと手を乗せる。
「…中瀬。」
「は、はい。」
諸星は大きく深呼吸をすると、私の目をジッと見つめる。
「俺、中瀬が好きだ。初めて会った時からずっと。…俺の彼女になって欲しい。」
思いもしなかった、けど何よりも望んでいた言葉に、一度止まった涙がまた零れ落ちる。
「……本当に?私でいいの?」
「中瀬じゃなきゃ嫌だよ。」
諸星はさっき取り出したハンカチで、私の頬を拭ってくれる。
その手つきが余りにも優しくて、却って涙が止まらなくなる。
「…そんなに泣くなよ。」
「これは…嬉し涙だよ。」
「…俺も嬉しいよ。」
諸星が優しく微笑む。
その笑顔につられて、私は涙でクシャクシャの顔でめいっぱい微笑み返した。
いつからか帰りの時間が合う時は、諸星が私の家まで送ってくれるようになっていた。
家が逆方向だし、練習で疲れてるだろうから、本当は遠慮したいんだけど…。
でも、好きな人と二人きりになれるのは、やっぱり嬉しい。
いつもみたいに、部活の話や他愛のない話をしながら歩く。
とても楽しい時間のはずなのに、今日は鞄の中にある物のせいで気もそぞろだ。
もう選抜が始まっちゃう…渡すなら今しかない。
私はこっそり深呼吸をすると、意を決して鞄からそれを取り出した。
「…諸星。」
「ん?」
周りに誰もいないのを確認して、立ち止まって声をかける。
こちらを振り返った諸星に、私はそれを躊躇いがちに差し出す。
それを見た諸星は、驚いて目を丸くする。
「え?それ…」
「ちょっと早いけど…クリスマスプレゼント。」
「俺に?いいの?」
私は視線をそらして、小さく頷く。
「あ、ありがとう。…今、見てもいいか?あそこの公園寄ってこーぜ。」
「え…。」
プレゼントを受け取った諸星は私の返事を待たずに、すぐそばの小さな公園に入っていく。
目の前で開けられるのは、本当は恥ずかしいんだけど…そうも言えず、ただ黙って後ろについて行く。
「いつものでいい?」
「…うん。」
諸星は自販機で飲み物を二つ買うと、すぐ横のベンチに座った。
「はい。中瀬も座んなよ。」
「…ありがと。」
差し出された温かいミルクティを受け取ると、少し距離を開けて隣に座る。
諸星は買ったばかりのココアに手も付けず、プレゼントの包みを丁寧に開く。
私はそれを、緊張の面持ちで見つめる。
手の中のミルクティの熱さがわからなくなるくらい、体温が上昇しているのを感じる。
心臓の鼓動がどんどん早くなっていって、呼吸が上手くできない。
「お、スポーツタオルとリストバンドだ。…あれ、星付いてる。」
諸星は黒いリストバンドに入った、小さな白い星の刺繍をジッと見つめる。
「それ…私が刺繍したの。」
「えっ、すげぇ!刺繍なんてできんの!?」
「…初めてやった。」
「そうなの?すげぇ上手だよ。」
「…ありがとう。」
気持ち悪がられたらどうしようかと不安だったけど、そんな様子を見せない諸星に、私は小さく胸を撫でおろす。
「何で星なの?やっぱ、諸星だから?」
「それもあるけど…試合に勝つことを白星って言うでしょ?だから、勝利のおまじないって言うか…我ながら安直かな、と思ったんだけど。」
「わ、マジで!?めっちゃ嬉しい。」
諸星はリストバンドを腕にはめ、両手を前に広げマジマジと眺める。
そして、私の方を向いてニカッと笑った。
「中瀬、サンキュな!選抜で使うよ!」
………ダメ
私の心を救ってくれた、その笑顔。
今、それを向けられちゃったら、もう耐えられない。
ポロリ、と私の目から自然と涙が零れ落ちる。
「…えっ!?中瀬!?」
諸星は慌ててポケットからハンカチを取り出すと、私に差し出す。
私はそれを受け取ることが出来ず、顔を伏せて手で覆う。
「ど、どうした?俺、なんか変な事…」
「好き。」
「…え?」
「…私、諸星が好き。好きなの…。」
言うつもりなんてなかった。
諸星は優しい。
けどその優しさは、みんなに分け隔てなく向けられている。
だから、私もきっとただのクラスメイトで、選手とマネージャー。
報われないなら、気まずくなるなら、気持ちを隠してその関係でいる方がいい。
そう思っていたのに…欲が出た。
望んでしまった。
諸星の特別になりたい、って。
「……参ったな。」
しばしの沈黙の後、ポツリと、諸星が呟いた。
その一言で私の涙がピタリと止まった。
体から急激に熱が失われていくのを感じる。
覚悟はしていたはずなのに、本人の口からそれを告げられることは、こんなにも辛いのか。
…やっぱり、言わなければ良かった。
「…先に言われちゃったか。」
「…え?」
次に続いた言葉に驚いた私は、弾かれたように顔を上げる。
諸星は困ったような申し訳なさそうな表情を見せ、私の両肩にそっと手を乗せる。
「…中瀬。」
「は、はい。」
諸星は大きく深呼吸をすると、私の目をジッと見つめる。
「俺、中瀬が好きだ。初めて会った時からずっと。…俺の彼女になって欲しい。」
思いもしなかった、けど何よりも望んでいた言葉に、一度止まった涙がまた零れ落ちる。
「……本当に?私でいいの?」
「中瀬じゃなきゃ嫌だよ。」
諸星はさっき取り出したハンカチで、私の頬を拭ってくれる。
その手つきが余りにも優しくて、却って涙が止まらなくなる。
「…そんなに泣くなよ。」
「これは…嬉し涙だよ。」
「…俺も嬉しいよ。」
諸星が優しく微笑む。
その笑顔につられて、私は涙でクシャクシャの顔でめいっぱい微笑み返した。
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