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歴史書

●2000年:CALLコール

 西暦2000年には大きな出来事が2つ起きている。

 1つは、同年1月末よりヨーロッパ方面を中心に発生し始めた、ノロイおよび黒獣疾患こくじゅうしっかん
 この2つの奇病は共に、治療不能、予防不能、原因不明であり、特に人間のみが発症するノロイは、発症すれば約半年から一年の間に確実に命を落とすという非常に厄介な代物であった。
 どちらも原因は西暦時代の間に解明されることはなかったが、オンルッカーが上空を通過したルートに沿って順に発病者が現れていったため、何らかの関連性があるのではとささやかれることになる。
 しかし、オンルッカーの体表およびオンルッカーが噴出する霧状の蒸気からは未知の物質、あるいは細菌やウィルスなどを発見できず、明確にオンルッカーがもたらした奇病だと証明できなかったのだ。
 この二つの奇病は、(オンルッカーが1年かけて世界中を余さず遊覧したためか)世界中に蔓延まんえんすることとなり、やがては人類を滅亡させることになる。

 そして、来る7月に第二の事件、すなわちオンルッカーの消失が起こる。
 それまであらゆる対話や物理的な攻撃に一切の反応を示さなかったオンルッカーは、日本近海に差し掛かった所で唐突に停止。
 さらに海岸に接近したオンルッカーは、それまでずっと等速で上空を移動していたにもかかわらず、約30分の間だけ地表近くまで高度を下げるという不可解な行動を取った後、唐突に消滅してしまった。
 元よりオンルッカーは波動性を持つものを吸収してしまう性質を持っていたため、電波でも音波でも探知することができず、可視光を反射しないことから肉眼でのみ黒く見えていた。
 しかし、この瞬間よりついに肉眼での捕捉もできなくなってしまったのである。
 オンルッカーが何の痕跡も残さず消えてしまったことに関しては、自衛隊の最新兵器による撃墜説、遊覧を終えて宇宙に飛び去った説、海中に消えて深海を回遊している説など、様々な憶測が飛び交ったが、この時代の人類の力では理由を突き止めることができなかった。
 以後、人類は残された2つの奇病と戦っていく歴史を歩むことになる。
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