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歴史書

●1999年:皇樹の侵林おうじゅのしんりんBlooming Blueブルーミングブルーほか
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イメージイラスト:Tori絵師

 地球の歴史がおかしくなった全ての原因と言っても過言ではない大事件。
 同年の夏、ヨーロッパ上空に直径10kmという巨大な黒い球体が宇宙から降下してくる。
 この球体はレーダーでもソナーでも捉えることができないのに目視することはできるという奇妙な性質を持っていたが、人類の持つあらゆる手段で一切の傷を付けることができなかったため、サンプルを地上に持ち帰ることができなかった。
 この球体は1週間ほど上空に留まった後、大気を吸い込み蒸気を噴出する、という呼吸のような活動を開始。
 同時に、ゆっくりと移動を始める。
 これらのことから、何らかの意思を持った生物であると人類は考えたが、意思疎通ができないため知的生命体であるのかどうか、どういった理屈で大気圏内を浮遊し、どういった目的で地球にやってきたのか、などの謎は様々な憶測を呼んだものの結論は出なかった。
 移動を開始した黒い球体は同じ場所は二度と通過せず、人類を襲うでもなく、街を破壊するでもなく、ただ地上の様子を観察するように上空を遊覧。
 その行動から、人類は黒い球体に[#ruby=侵略者_インベーダー]ではなく傍観者オンルッカーという名を与えた。

 オンルッカーは基本的に無害で大人しかったが、直径10kmもの巨大な生物らしきものが頭上を通過することに不安を覚えた者も少なくなく、各国のオンルッカーへの対応は様々であった。
 国によっては撃墜を試みて航空機やミサイルなどによる迎撃も行われたが、やはりオンルッカーには全く通用せず、しかし反撃なども一切無く、当時の人類の力ではオンルッカーの行動に影響を与えることはできなかった。
 真偽は定かではないものの、核兵器を撃ち込まれても無傷であったとの情報もある。

 この年、結局オンルッカーの飛来は世界中を騒がせたものの、先進国が多額の軍事費用を無駄に浪費したことと、オンルッカー通過時に日照が遮られてしまったこと以外、オンルッカーによる大きな地球への影響は無かったかのように見えた。
 ……本格的に異変が起き始めたのは、翌年初頭のことである。
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