94.みにくいアヒルの子

空から降って来たポケモンは地面に落ちるとピチピチと跳ねていた。

「この子って...」

そう言いながら小夜はポケモン図鑑を開いていた。

【ヒンバス】
さかなポケモン　みずタイプ　ホウエン地方のポケモン
みずぼらしい姿なので人気がないポケモンだが、わずかな水や汚い環境でも生き延びれる生命力を持つ。のろまであり捕まえようとするトレーナーは少ない。

なんですか...わざわざ読むなんて嫌がらせですか⁈

小夜が図鑑の説明を呼んでいるのを聞いてヒンバスはピチピチと跳ねて涙目で怒っていた。

「ごめんね！そんなつもりはなかったんだけど...」

っ？あなた、私の声が分かるのですか？

「う、うん...。」

そうですか...。悪気がなかったのであればいいです...。どうせ、そこに書いてある事は事実ですから...。

「そんなことないと思うけど...」

そんなことない...？

「うん。図鑑にはみずぼらしいって書いてあるけどそんなことないでしょ？」

こんな汚くて取りえもない体ですよ...

「そんなことないよ。その大きな目も可愛いし、唇だって素敵。それに、鱗だってお手入れすれば綺麗になるんじゃないかな？この湖は他の湖よりちょっと濁ってるからそれで汚れちゃってるだけだよ」

そう言って小夜はヒンバスを抱くと近くの湖にそっと入れ、優しく体を撫でて汚れを落としていった。

「ねっ、綺麗になったでしょ？」

小夜にそう言われヒンバスが自身の体を見てみると、先ほどよりも少しだけ綺麗になっている体があった。

.....今までこんな風に優しくされたり、体を洗ってくれた人いなかったから....。ありがとうございます...。

そう言ってヒンバスは泣いていた。

そんなヒンバスを優しく見ていた小夜だったが、急に顔に冷たい感覚を感じたかと思えば、怒った声が聞こえて来た。

おい！人間！さっきから見てれば余計なことしやがって！そいつをさっさとここから連れていけ！

声の主はニョロモだった。そして、ニョロモの周りには進化系のニョロゾやニョロボンがこちらを睨んでいた。

「どうして...？ここに住む同じ仲間でしょ？」

そいつが仲間だって？ふざけたこと言うなよ！そんな汚いやつと一緒にするな！

そうだ！そうだ！そいつはそっちの汚い湖にいたらいいんだ！こっちに来たらこの湖が汚れるだろ⁈

早く出ていけ！

ニョロモ達の言葉を聞いていたヒンバスは俯きながら泣いていた。

「....。この子は汚くないよ。」

.....もういいんです。行きましょう...。

さっさと行け！

お前なんか汚いし、ほかのヒンバスよりも体が小さいから釣られたって逃がされてばかりの役立たずだ！俺たちとは違うんだよ！

そう言って近くにいたニョロゾがヒンバスに向かって水鉄砲を打って来たが、小夜がヒンバスに当たる前に湖から抱きかかえた。

「あなた達にはきっとこの子の良さが分からないんだね...。」

小夜はそう言うと、ヒンバスを抱きかかえ悲しそうな表情でニョロモ達を見てその場を去った。

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うわぁ...我ながら酷いニョロモ達だと思います...。