132．これから

それからしばらく泣き続けていた小夜達だったが、小夜が静かになったと思った一行がグレンのしっぽで抱きしめられている小夜を覗き込むと目を閉じていた。


一体どうしたのかとパニックになった一行の様子をどこか微笑ましく見ていたアルセウスが声をかけた。


おい、お主ら静かにせんか。小夜が起きてしまうだろ

その言葉を聞いてもいまいちピンと来ていない様子のメンバーを見て、アルセウスはため息をつくと呆れたように呟いた


心配するな、小夜は泣き疲れただけだ



アルセウスにそう言われた一同が小夜を見てみると、穏やかな表情でスヤスヤと寝息をたてていた。安心した一同に先程の口調とはうってかわり、どこか威厳さえ感じる真剣な口調でアルセウスは話し始めた。



よいか、お主達も聞いていた通りこれからの旅は困難なものとなるだろう。小夜にとっても心を傷める事もあると思う。お主らはそれでも小夜と共に行くと言ったな。その言葉、しかと覚えておこう。もし、小夜の事を裏切ったり泣かせるような事があれば、我が許さない


その事を覚えておけ



そう言ったアルセウスの瞳は全員を見つめており、その圧倒的とも言える雰囲気に息をのんだ。

さて、小夜も疲れた事だろうからそろそろ帰すとするかの

でわな

ケロっとした様子に戻ったアルセウスがそう呟くと次の瞬間、眩しい光に包まれると目を開けた時には見慣れたポケモンセンターの一室だった。










小夜をベットに寝かしつけた後、部屋の中は沈黙が漂っていた



のだが



あーも！なんなの?!この雰囲気！
小夜も無事に戻って来たんだからいいじゃん！



その沈黙を破ったのはコアだった


そうよね...こんなしんみりしてたんじゃ小夜が起きた時に悲しむわ

そうだな...よし！切り替えていきましょう！


待て、オレは気になる事がある。小夜の過去についてグレンとナイトは知っていたのか？


おそらく、グレンとナイト以外のメンバーが思っていたであろう事をジンが真剣な様子で尋ねた。


...知らなかったと言えば嘘になるでしょうか。私とグレンも小夜は記憶を無くしたと聞かされていました。しかし、それだけでは無い何かを抱えているのだろうと思っていました。グレン、お前だってそうだろ？

あいつは...時々寂しそう顔をするんだ。理由を聞いても大丈夫としか言わなかった。だから、何かあるとは思っていた。

...そうか。疑うような事を聞いて悪かった

小夜は...ずっと1人で色んな事に我慢してきたのね...。体の傷だってそう...。女の子なのに...あんな..！酷いことされてきてたなんて

小夜が大人、特に男性に過敏に反応することがありましたがそれも過去の経験が原因でしょう

僕...そいつらのこと許せない！もし会えるんだったら小夜が受けて来たこと以上のことしてるのに...！

コア、姫の前でそんな言葉使うんじゃないぞ...

何でだよ！

それは...

「私なら大丈夫だよ」

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アルセウスさんの出番終了です