128．悲しい過去



おい......なんだよ、消えてなくなるって...‼どういうことだ！

グレン達は何もない白い空間にいた。
そして、そんなグレン達の向かい側には小夜とアルセウスの姿があった。

アンノーンと言ったな、これはどういう事か説明をしてもらおう

ジンが殺気を出しながらアンノーンに声を掛けるが、アンノーンは声色を変えずに答えた。


目ノマエノ事ガ全テダ
アノ者ハ別ノ世界カラアルセウス様ガツレテ来タ
ソノ全テヲ記ス

そう言ったアンノーンの体が光り大きな石板のような物が現れた。
よく見てみると、石に書かれているのは様々な形をしたアンノーンであり、不思議と全員が読むことが出来た。

そこに書かれていたのは１人の女の子の悲しい過去だった。






１人の少女がいた。その名を小夜という


彼女は別の世界の人間であり彼女の世界で我々は時に書物として、時に玩具として生命は無かったが、存在していた

そんな世界で彼女は父や母に大切にはされていなかった

暗い部屋に閉じ込められ、ろくに食事も与えられず、どんなに寒いときでも着るものは限られていた

彼女は愛情というものを知らなかった。狭い部屋の中でただ１人、必死に暴力に耐え愛情を求めた


しかし、そんな環境の中でも唯一心が安らぐ時があった


それは我々の世界を夢見ている時だった。書物や玩具で見る我々が彼女は大好きだった。我々の事を思っている時だけが彼女の救いだった


しかし、その感情も過酷な環境では次第に感じる事が出来なくなっていった。理由もなく蹴られ、殴られ、時に火を当てられるその体は限界だった。心の感情はなくなり、楽しさや喜びは感じられず、ただ悲しみだけが残ったのだ


そして、とうとう限界がやってきた

彼女の魂は世界から離れようとしていた
彼女はやっと解放される思った



しかし、その時我らがアルセウス様が手を差し伸べた。アルセウス様は知っていた。彼女がどれだけ我々の世界を好いていたか

命などない世界でまるで本当に命が宿っているかのように我らを思ってくれた彼女を助けたいと思ったのだ


アルセウス様は彼女に問いかけた
こちらの世界で生きたいかと


彼女は答えた
ここでは無い世界でもう一度生きてみたいと
そして、愛されたいと


アルセウス様は禁忌を犯した
彼女を我々の世界に連れてきたのだ


彼女を我々の世界に連れて来るために世界の神にある条件を出した
それはこの世界を救う事。人間の悪意が広がりつつあるこの世界を救う事。それが世界の神に出したアルセウス様の条件だった


世界の神はその条件を許した
そして、もしもこの条件を彼女が断ったならば彼女が消えてしまう条件を世界が提示したことも許した


アルセウス様は従うしかなかった
“この世界を救う”それがどんなに困難であることかも分かっていた

それでも、そんな無謀な条件を付けてでも彼女に救いの手を差し伸べたいと思ったのだ




彼女はこちらの世界にきて６匹のポケモンと出会った

様々な旅をする中で彼女は選択の時を迎えた

彼女が選んだ選択は




石板に書かれていたのはこれまでだった





石板を読み終えた時マリアは泣いていた

コアやミズキは見たことがないほどに真剣な表情で怒りを露わにしていた

ジンやナイトは痛いほどに爪を自身に食い込ませていた

そして、グレンは燃えるような紅い瞳に決意を宿していた

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悲しい過去でした
消えてなくなることは世界の神が言ったことです。でも、それをあたかも自分が提案したことのように言うアルセウスさんは...好きだ！