「＿＿＿天っ！！！」


タイムを縮めるだけだったら天で高く上がる必要はない、自分を少しだけ浮かせ、そのまま前のめりになり飛行する。その際に気を付けなければいけないことは姿勢を保ちバランスを崩さないこと。それを意識しながらまっすぐに目標に向けて飛ぶ。







個性の訓練を始めてから数日たった。お母さんは仕事の関係でいるときといないときがあるけれど事務員の人たちやお父さんが見ている中、訓練を行った。“風”の方がどちらかと言えば扱いが難しいのでお母さんがいるときには基本的に“風”の訓練、いないときに“天”の訓練を行う。今日はお母さんは雑誌の撮影でいないから“天”の訓練の日だ。

“天”の訓練も“風”の訓練も今のところ順調、50mタイムは3秒台前半まで縮められたし、“風”は属性を言うだけで扱えるようになった。お母さんの見立てでは雄英入試までにはできるようになるらしい。


「お嬢！！いい感じっすよ、さっきのタイムは3.1っす」
「結構縮みましたね」
「最初は確か4.3っすよねだいぶ縮んだっすね」
「あとはこのスピードで1㎞走り続けることができれば」
「そうっすね、でも無理は禁物っすよ、ボスやお嬢の個性は強い分キャパ超えたときやばいんすから」
「そうですね、救急車のお世話にはなりたくありませんし...ランニングでスタミナ特訓が一番ですかね」
「まぁそこらへんは一度ボスに相談してみるのもありじゃないっすか？試しに今日家まで走って帰ってみます？俺方向一緒なんで護衛するっすよ」

護衛だなんて大げさな、事務所の皆は私のことを昔から知っている。個性がうまく扱えなくて泣き虫だった小さいころを知っている。そのせいか私に対して物凄く過保護だ。

それにしても家までかぁ、30㎞近くあるよね。


「あっ海浜公園からだったら人も少ないしいいかもしれませんね」
「海浜公園って、ごみの不法投棄の？この前ボスが満足に個性使える状態だったら掃除したかったって言ってたとこっすか？」

えっお母さんそんなこと言ってたんですか...??
私たちが今の家のある所に引っ越してきたのは一年前、私が中2の時で、お母さんはヒーローとしての活動はできなくなっていた。そういえば引っ越す前にお母さん海浜公園の記事見て眉ひそめてたなぁ。


「今日のお迎えお母さんですし、海浜公園近くで下ろしてもらってそこから家までは走ろうかなって思ったんです。海浜公園から家までだと７㎞前後だったと思うので走るにはちょうどよさそうですし」
「そうっすね、んじゃそういうことで、ちょっとボスに連絡してくるっす。お嬢はこのまま訓練続けててください」
「はい、おねがいします」


ヒーローになったら、長丁場の現場もあるだろうし、スタミナは付けとくに越したことはないよね！