「はっ、はっ、はっ、はっ、」

ただ闇雲に逃げる者と、獲物の狩りを楽しむ者。隼はとにかく逃げ続けていた。山道にあるゴツゴツとした岩を蹴る。飛びながら逃げ、なんとか龍人を播こうとがむしゃらに傾斜林に飛び込んでいた。

しかし、慣れない足場に速度が落ちる。武器をもったままでは尚更だ。後方からは国を襲った龍人達が執拗に追ってきている。隼には振り返って確認するだけの余裕すら無い。もうどれだけの距離を逃げたことだろう。知らず知らずに体力が奪われていく。とうとう呼吸が苦しくなった時、目下に古城のような物が目に飛び込んできた。

(一端あそこに逃げ込もう)

咄嗟の判断だ。このまま走り続ければ捕まるのは時間の問題だ。一際助走をつけ、突出した岩崖から飛び、翼を広げ古城まで翔んだ。隼の姿は、すぐさま崖下の暗闇へと溶けた。
少し遅れて、龍人三人が岩崖で立ち止まる。

「あのガキどこ行きやがった。」
「鳥は一々飛ぶから腹が立つな…」
「おい、あそこじゃないか。」

隼とは対照的に、全く疲れた様子も見せない龍人。月明かりにぼんやりとうつる古城に目をやった。休息に身を隠すのにはうってつけだろう。一人が喉を鳴らして笑う。

「くく、ぁあ。獲物を追うのは楽しくてしかたがないな。」
「捕まえたらどうしてやろうか、羽でも剥ぎ取って遊ぶか？」
「尋問してから殺す。まぁ、じっくり狩りを楽しもうぜ。」

隼は崖から飛んだが、流石の龍人でもその崖を降りるのは危険である。彼らは周り道を選び、古城を目指した。
夜の狩りに狂気に喜ぶ金の眼差しが、ゆっくりと古城に近づいた。