Aizawa
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「…すまなかったな」
「ええ、本当に。心臓が止まるかと思いました。生きていて本当によかったです」
生きている、そう思ったときふと君の顔を思い出した。
いつも無表情だが、時折見せる笑顔がとても好きで、結婚式の日に見せた泣き笑いなど一生ものの思い出だ。
USJへ現れた敵達の排除、あの死柄木といったか…あいつの個性で腕をやられ、オールマイトにも匹敵する力を持った奴になすすべなくこのざまだ。
「眼窩底骨が粉々ですって、目があってよかったですね」
「怖いこと言うな。だがそうだな…目が見えていてよかった」
ふと、お前の顔が見れなくなったと思うとぞっとする。
それに俺の個性は目がすべてだ。
これを失ってしまえばおそらくもはやヒーローとしてもやっていけないだろう。
「リカバリーガールが少しずつ回復させてくれるとのことです。これを気に少し休んだらどうですか?」
「そういうわけにもいくか。相手はオールマイトをつぶしにかかってきてる。しかも生徒たちにも危害を加えるような奴らだ。今後何があってもおかしくない」
「そうですね、でも自分の身を守ることも大事だということをあなたは理解すべきです」
ああ、こいつに叱られるのはいつ振りだろうか。もうずいぶん前な気がするな…。
結婚して、なんの喧嘩もなくやっていけたのはこいつがすべて受け止めてくれているからだろう。
普通の女性ならば俺みたいな男とやっていけるはずがない。
「…すまなかった」
「ええ、怒ってるんです。私」
「そうか」
「怒ってるんです」
「そんな泣きそうな顔して、怒ってるはないだろう」
目にいっぱいの涙をためて、こぼさないように眉間にしわを寄せてる姿はなんとも健気なんだろうか。
彼女はヒーローだ、俺と同じ。
ただ、俺が教師へなったと同時期に彼女は引退した。
「わるかったな、心配かけて」
「本当ですよ、包帯ぐるぐる巻きの状態で…本当に、死んじゃうかと…」
「お前に泣かれるのは弱いんだ、勘弁してくれ」
「せいぜい困ればいいんです、私以上に困ればいい」
そっと握った手はとても震えていた。
ああ、俺はこんなにもこいつを不安にさせたんだ。
いくら生徒を守るとはいえ、やっぱり合理的じゃなかったな。
なあ、name。
きっと俺は何度あの場面に立っても同じことをしたと思う。
お前はどうだ?
あのとき、俺はお前が傍にいてくれたらと一瞬考えた。
昔俺のサイドキックとして働いていたお前なら、俺が言う前に俺の思う通りに動いてくれるだろうとそう思ったんだ。
ヒーローとしての俺の考えはそれで正解かもしれないが、夫としての俺は不正解だ。
愛する妻をそんな危険なところに連れてくるなんて俺にはできん。
「name、もう泣くな」
「泣いていません…」
「嘘つくな」
「うそじゃありません…」
ああ、強くならねぇとな。こいつを泣かせないためにも、俺は。
カタカタ体を震わせながら泣く妻の姿をみて、抱きしめることができない俺はなんとも小さな男なんだろうか。