Aizawa
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職員室へと戻ると、人気の少ない廊下でポツンと窓のそばに立っているnameを見つけた。
nameも俺が歩いてきたことに気付いたのか、「お疲れ様です」と声をかけてくる。
「珍しいですね、除籍ゼロですか」
「なんだ、お前も見てたのか」
「はい、これでも副担任ですから」
nameはニコリと笑い、グラウンドではしゃぐ今年の一年を見ていた。
あいつら…さっさと戻ってカリキュラムの書類に目ェ通せって言っただろうが…。
小さく舌打ちすると横でくすくすと笑う。
「やけに機嫌がいいな」
「いえ、今年は忙しくなりそうだと思いまして」
「去年は楽だったなぁ。一クラス丸々なくなったからな」
「全員除籍処分にしましたからね」
「半端に夢を追わせてどうすんだって話だからな」
「私の時もおっしゃってましたね」
nameは俺の最初の生徒。
こいつのクラスも全員除籍処分を一度言い渡したクラスだった。
そう、「一度」は。
「お前くらいだろう、俺に殴りかかってきたの」
「ああでもしないと先生私のこと覚えてくださらなかったでしょう?合理的作戦です」
「言うじゃねぇか」
くしゃりと頭をなで職員室へと入ると、後ろからひょこひょことnameもついてきた。
おそらく廊下でA組を見下ろしていたのは明日挨拶できるかどうかを見ていたんだろう。
今思えばこいつは初めから見込みがあったんだろうなぁ、と思う。
『相澤先生』
『なんだ、さっさと荷物まとめて帰れよ。お前ももれなく除籍処分だからな』
こいつもA組だった、そうそう。
除籍処分後、荷物をまとめてすぐさま出ていくように言い渡したら、あいつだけ廊下で俺を待っていて
目も留まらない速さで距離を詰めたかと思うと俺の首へとがった爪を突き付けてきた。
さすがの俺も捕縛武器へ手をやるだけで全く動けなかった。
こいつ…猫かぶってやがったのか…。
『先生、覚えましたね?』
『は?』
『私のこと、覚えましたね?』
除籍処分を言い渡した直前だというのに、こいつの顔からは笑顔が消えない。
『私、違う場所でヒーローになって、先生にもう一度会いに来ます。
だから先生、私のこと忘れないでくださいね』
私イレイザーヘッドのファンなんです、だからさっき緊張してしまって…と続ける彼女。
まだ制服姿の小娘だ。
なのに俺は…まだ何か話を続けているがそんなものもお構いなしに彼女の手をそっとつかんだ。
『…?先生?』
『お前の除籍処分、取り消す』
『え?』
『ここでヒーローになれよ。俺が手伝ってやる』
たぶん、俺のファンって言うのもすこし心が動いた要因だったのか…。
俺もまだまだ甘いなと思った瞬間だった。
「お前が猫かぶってたのには驚いたな。文字通り猫かぶってた」
「どうして2回言うんですか、もう」
こいつの個性は「猫」。
猫に変身することができる。部分的なものでも可。
猫に変身しているときは人間の言葉が話せないのが難点。
「とりあえず、明日はお前も来いよ。自己紹介しろ」
「はい、わかりました」
「…」
「なんですか?」
「いや」
なんでもない、と額を小突くと眉間にしわを寄せた。
子供っぽさがまだまだ消えないが、かわいい俺の後輩だ。
さて、明日はどうこき使ってやろうか。