Izumi
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「…」
「話しかけに行けよ」
「行けるかよ、槍バカ」
「なんだよ弾バカ」
米屋が呆れるのも無理はない。
椅子に座り、うじうじとしているその姿はA級1位射手とは思えないほどの普通の高校生そのものだった。
前の席に座った米屋はちらりと肩越しに目をやる。
そこにはいつものように女子に囲まれながら少し控えめに笑う一人の女子生徒の姿があった。
少しくせの強い髪の毛は防衛機関の顔、嵐山を思い出す。
「なんともねぇ奴には言える癖になー」
「言えたら苦労しねーよ」
「そりゃそうだ」
「…」
「…」
「なんだよ」
「いやいや、なんでもー」
にやりと笑う米屋に小さく舌打ちすると、購買に行ってくる、と言い残し教室を出て行った。
頃合いを見計らってか、とたとたと静かに米屋に近づく女子生徒。
「米屋君」
「おぉ、family。なんだー俺になんかようか?」
「わかってるくせに」
「弾バカのことだろー?お前ら二人そろってめんどくせぇ」
「…?」
* * *
「はあー」
ここ一番で大きなため息をついた。
それもそうだろう、familynameと話をしたのは一緒のクラスになってから。
今年の4月からのことだ、そんなfamilyに俺今日誕生日だから、なんておこがましいこと言えるか。
それでなくとも世間話なんてものそんなにしたことないのに…。
連絡事項とか、日直のこととか…俺がfamilyと話した内容ってそんなもんじゃねぇのか?
購買に行くとすでに人は少なくなっていった。
さすがにお昼時はすごい人だったか、それも一瞬。
少し時間があけばこんなものだろうと、出水はそのまま購買の中をひょいと覗き込んだ。
いつものオレンジジュースと、パン数個。
今日は防衛任務が夕方からあるから、少し多めに購入しようとポケットの中に手を入れる。
「…やば、財布」
「はい」
「…?」
「財布、忘れてたでしょ?」
目の前に出された見慣れた財布と聞き覚えのある声。
横を向くとそこにはさっきまで穴が開くんじゃないかと思うくらいに見つめていた相手がにこりと自分の横で笑っていた。
あまりの驚きに声がでなく、一瞬体が停止する。
「あ、おばさんこれとこれください」
「ちょ、お前!!!」
「いいからいいから」
あっという間にことは進んでいき、俺の手の中にあった数個のパンとオレンジジュースはビニールの袋に入れられfamilyの手の中へ。
促されるままに屋上まできてちょこんと座ったfamilyの隣に俺もなんとなく腰かけた。
秋が近づいてきているせいか、少し風が冷たく感じる。
なのに体がほてってるのは気のせいではないはずだ。
「…」
「はいこれ」
「いや、財布持ってきてもらったし」
「だって今日誕生日でしょ?なにも準備してなかったからこんなもので悪いけど」
「…知ってたのか?」
「実は知ってた」
少しいたずらっぽく笑うfamily。
あー、そうだ。この顔に俺はやられたんだよなー、としみじみ思いながらお礼を言いつつそれを受け取る。
どんな経緯であれ、俺の誕生日を知って祝ってくれようとしてくれたんだ。
うれしいに決まってる。
「サンキューな!!」
一緒にこうしてご飯が食べれるなら、それはそれでオッケーだ。
* * *
三日前
「はあ…」
「…話しかけりゃいいじゃねぇか」
「それができたら苦労しないよ」
「なんともねぇ奴には言える癖になー」
「それはそれ、これはこれ!!!」
目の前でうなっているnameを見て米屋は頬杖をついた。
nameが出水に好意を寄せているのを知ったのは出水とnameが同じクラスになってからだ。
出水を尋ねによく教室に来ていた際に知ったこと。
まあ、偶然だったのだがそれ以来米屋はnameに絡むようになり、nameも米屋に相談するようになった。
もちろん、出水がいない場所で、だ。
「あと三日だよ!!どうしよう」
「プレゼントでも渡したらいいんじゃね?」
「あんまり仲良くない友達から渡されたら絶対引くよ、私だったら引く!!!」
と、思うじゃん?といういつものセリフは言えない。
両思いだと知らないのは当の本人たちで、米屋自身はそれに板挟みになっているのだからいい迷惑だ。
さっさとくっつけば楽になるのに、と思いつつもこの状況を楽しんでいるため変につついたりはしない。
「じゃあ昼飯おごるとかでもいいじゃねぇか」
「男の子ってそんなものなの?」
「そんなもんだなー、少なくとも俺は」
「米屋君の話じゃなんだよ!!!」
「大体俺もあいつも同じだって」
この三日後、ほぼ同じ内容の話を出水から聞くことになって、そろそろ引っ付けに動こうかと思い始める米屋。
でないと今後、何らかの支障がでそうだ、いろいろと。
つまりはリア充爆発しろ、だ。
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