Jin
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強さがほしかった。だから、がむしゃらになって、訓練していた。
ゲームでも、レベル上げをしていって、最終的に最強武器を手に入れてボスに挑むあれ。
ゲームに例えるのも悪いかもしれないけど、私にとってまだまだゲームは序盤で、レベル上げの真っ最中だったのに。
いざ最強武器を与えられても、それが私にとって良いものかどうかなんて、そんなもの。
撃ってみても、的に掠る程度。
もうずいぶんと長い時間こうして撃ち続けているけれど、なんせ「これ」はボーダーが開発したトリガーじゃない。
練習すれば、自然と当るようにはできちゃいない。
さすがにイラつきを隠せず、舌打ちすると、一人きりの訓練場に響き渡った。
「イラついてるなぁ、name」
「…迅さん」
「どうだ?調子は」
「見て分かるでしょ」
絶不調。そのくらい、もともと狙撃手でない私でもわかる。
そもそも射撃用トリガーは今まで使ったことがなかったのだから、仕方がないといえばそうなのだが…。
でも、使いこなせなければ意味がないのだ。
「俺も同じタイプのトリガーなら、もう少しアドバイスもできたんだろうけど…」
「おれはこれだから」と言いながら撫でる「黒いそれ」は、迅さんの足についてあった。
私は会ったことがないけれど、「それ」は迅さんの師匠で、大事な人だったというのは人づてに聞いたことがある。
私が適応した「これ」は、ただ偶然、私が使えただけのこと。
攻撃手である私は、スコーピオンを使ってここまで上がってきたのであって、狙撃手の経験なんてゼロだ。
荒船先輩は、自分が攻撃手だったこともあって色々と教えてくれるし、東さんだって優しく教えてくれているというのに、私はまるで成果が出せていないまま…。
「…」
「name、ほら」
「っ!」
投げ渡してきたのはあたたかーいカフェオレ。
それを受け取ると、ちょいちょいと呼ばれ、訓練場の外へでる。
しばらく歩くと、ちょうどいい休憩スペースが見えてきてそこに迅さんが座ったのを見て、しばらく突っ立ってたけど、またもやちょいちょいと手招きされて、そのまま迅さんの隣に座った。
「むずかしいよなー、いきなり渡されてもわかんないもんな。
使った人もいないし、自分で探すしかないよな」
「…」
「なぁ、name」
ちょっとくらい、弱音はいてもいいんじゃない?という迅さんに私はついに口を開いてしまった。
「重いんです」
「うん」
「人ひとりの、命がこれに詰まってるって考えたら…。
使う私の責任ってすごい大きくて」
「そっか」
「うまく使わないと、申し訳ないというか…私以外に、これをうまく使ってくれる人がいるんじゃないかとか、色々考えて」
「うんうん」
「もともとソロだったし、別にチームメイトとかいなかったから、自分のペースでできるって思ってても、それでも、早く…早くこれに慣れて、戦わないとって考えると」
カタカタ震えてきた手。その中にあるカフェオレの蓋はまだ開けていない。
震える手で開けられるわけもなく、それをただじっと握っているだけで、なにもすることができない。
「私、はやく、もっと」
「name」
いつのまに迅さんは私の目の前に膝をついていたんだろうか、気付いたときには目の前に迅さんがいて、膝をついて、片手で私の両目をふさいでいた。
真っ暗になった目の前、耳に届く迅さんの声。
「落ち着け。誰だって初めてはある。俺だってそうだった。
nameは今までの積み重ねがある分、初めてって感覚がないから余計に焦るんだ」
「迅さん…」
「大丈夫だよ、name。大丈夫、お前はこれからどんどん強くなっていく。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
その言葉は、誰の言葉よりもすとんと私の胸に落ちてきた。
未来が視える迅さん、その言葉の意味。
もしかしたら、ただ単に励ますだけでそう言っているのかもしれない。それでも、今の私にとってその言葉はとても強い味方になった。
「このトリガーはnameがいいって言ってくれたんだ。一緒に強くなっていけばいい」
「…うん」
「俺もこうして、息抜きに付き合ってやるから。そんなに思いつめた顔しなくていいんだ」
nameは笑ってる顔のほうがいいよ、といい手を放す。
そこには、迅さんのニコッとした明るい笑顔があった。
「迅さん」
「ん?」
「ありがとう」
「nameのためなら、これくらいどーってことないって」
さぁ、今日は帰ろうと言いながら手を差し出してくれた迅さん。その手をとって、ゆっくりと立ち上がるころには、私の手の震えは止まっていた。
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