Jin
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「いや!!!」
「もー…だから言ったのに…。誰!?nameにお酒飲ませたの!!!」
赤い顔をしながら、ぷいっと顔をそむけるnameはかわいい。それ以上にめんどくさいこの状況。
だからあれだけ言ったのに…。横に座ってる東さんが苦笑いしていたのがわかった。
数十分前、おれの携帯にかかってきた一本の電話。
なんとなーくそんな気はしてたけど、まさかこんなひどい未来になっているとは思いもしなかった。
最近nameの態度がよそよそしくなっていたのはわかってた。今日の飲み会だって、たぶんそのストレス発散だったんだろう。
「悪い迅、俺が飲ませた」
「東さんー…もー」
「nameが飲むって言ってな、つい」
「東さんはnameに甘いんだから」
「おまえが言うなよ」
そうこぼしたのは太刀川さんで、その隣で風間さんが口をもごもごさせていた。本当によく食べる人だな…。
成人組の飲み会、おれが呼ばれたのは、さすがに一人ぐらしの、しかも彼氏がいる女性をひとりで帰すわけにはいかなかったからだろう。でも、でも!!おれは何度も言ったのに!!
「nameにお酒飲ませないでって…あれほど…」
「忘れてた忘れてた」
「絶対覚えてたでしょその言い方!!太刀川さん!!!」
「それにしても、familyいい飲みっぷりだったな」
にやにやと太刀川さんと同じように冬島さんも口をはさんでくる。
どうにかしてここから離れないと、さらにnameがお酒をのむ未来が見え始めて焦った。これ以上飲んだらシャレにならないって、まぁさすがにそこまでいったら東さんが止めに入るんだろうけど。
そうおれが言い合いしている間にも、nameはメニュー表を広げ始めていたので、早急にそれを取り上げた。
「なによ」
「こっちのセリフだって、ほら帰るよname」
「一人で帰ればいいじゃない」
「お、言うなぁname。どしたどした」
「今日はやけに不機嫌じゃん、おれなにかしたっけ?」
キッ!と鋭い目つきになって俺をにらんでくるけど、酔っぱらってるせいでその目はうるんでるし、かわいいだけしかない。
あー、こんなかわいい顔ほかの男に見せないでよね。
「迅はうそつきだ!」
「あれー、なにそれ全然覚えがないんだけど」
「そうかそうか、んで、name。迅に何を嘘つかれたんだ?」
東さんはnameに甘い。頭をなでながらnameをなだめようとしてる。
nameがスナイパーとして初めての弟子だったからか、ずいぶん本当に一番!甘やかされてる気がする!!
そんな甘やかしてくる東さんに全幅の信頼をおいてるname、くるりとしっかりと向き直ったあと
「迅はわたしのこと、どーでもいい!!って思ってる!!」
「…」
「ちょっとちょっと!!なんでそんなことになるの!?」
なんか盛大に勘違いされてる気がする。ほら!!東さんだって微妙な顔してるじゃんか!!
最近、nameの行動がおかしかったのって、もしかしてこれが原因!?
これは根掘り葉掘り聞かないといけないと思うけど、さすがにこの居酒屋で聞けるような内容ではない。
「どうしてそう思ったんだ?」
「東さん!?」
「まあまあ、nameだってこの勢いで全部嫌だったこと吐き出すかもしれないだろ?」
ほかのものも吐き出すかもしれないけどね。
確かにnameはため込みすぎだと思う、それは俺だって知ってる。
さすがにちゃんとゆっくり話が聞きたかった俺としては、このままの勢いで話をされるとまずい。
だって、nameセコム、意外と多いんだって…本当…。
「迅は、女の子が好きだから」
「そうだな、おれノーマルだから」
「だからよく、ほかの女の子にちょっかいだしにいく」
「んー…」
「でも、わたしにはぜんぜん、なにもしてくれない」
「name、ちょっとまって、さすがにそれ以上は」
「キスしかしてくれない!それも東さんとするようなやつ!!」
「ちょっと待って!!!それは聞き捨てならない!!!!」
「まあまあ落ち着けって」
「東さんどういうこと!?」
「ってかお前まだ手ェ出してなかったのか、意外だ」
「太刀川さんみたいに欲望に忠実じゃないからね!」
東さんとって、え!?なに?name浮気してたの?俺そっちにびっくりなんだけど…。
こちらを振り返ったかと思ったら、次の瞬間くしゃりと歪む顔。
あ、まずい。
「私は迅にすてられちゃうんだー!!!」
「だから嫌だったんだ…お酒飲ますの」
「一回吐き出させたほうがいいって」
「東さん、さっきの言葉ちゃんと覚えてるからね」
「鳥がつついてくるようなかわいいもんだよ」
「それでも!!」
「お前も放っておくから悪いんじゃないか?」
「風間さんまでnameの肩もつの!?」
おれの味方なんて一人もいないじゃないか、そりゃそうか、ここにいるみんなnameのセコムだもんな。よくわかってるよおれは。
「name、とりあえず帰ろう。おれとゆっくり話をしよう」
「別れ話でもするんでしょ!!」
「しないよ、絶対。おれはnameにベタ惚れなんだから、そこは安心していい」
今のところ、nameからもおれからも別れを切り出す未来は全く見えない。というよりもそんな未来おれがつぶす。
ここまでおれが言ってるのに、聞かないのは今までのおれの行いか…。
だってそうでしょ?こんなにかわいいnameに、痛い思いさせてまでもおれは気持ちよくなりたくはない。いや、なりたいのはやまやまなんだけど…。
それでもnameの準備ができるまではゆっくり待つつもりでいたし、東さんのいう「鳥がつついてくるような」キスでもおれは満足だったの!!
っていうのをゆっくり説明するためにも、ここから出ないといけない。
「ぜったい?」
「絶対」
「ぜったいのぜったい?」
「絶対のぜーったい!!!」
ほら、にっこり笑うnameのかわいい顔、これをみるだけでおれは癒されるんだって。
「よかった」と言いながらぽてんと机に頬をつけるname、あーあ
「寝ちゃった…」
「あとは頼んだぞ、迅。今日は俺のおごりだ」
「東さんもう一度言うけど、さっきのことちゃんと覚えてるからね」
「かわいい妹が甘えてきてるだけだ、気にするな」
「おれの天敵はもしかしたら東さんじゃないのかなー」
「それよりも、風邪ひくから早く連れて帰れ、そして明日模擬戦しろ」
「どうしてそこで太刀川さんの欲求がでてくるのかおれには理解できない」
「まあ、太刀川のいうことも一理あるな。連れて帰ってやれ、迅」
タクシー代まで出そうとした風間さんは本当に男だ。かっこいい。
nameに上着を着せた後、よっこらせと背負いその場を後にした。
もうすぐで春だというのに、外はすこしひんやりする。
なぁname、今日はたぶん無理そうだから、明日はゆっくり話そう。
きっと東さんはここまで読んでおれを呼び出すきっかけを作ってくれたんだろうなぁ。
nameのため込む性格と、そんなゆっくりなnameをじっと待つおれ。
もしかしてもっとぐいぐいいっていいの?
でもまぁ、今のところどんな未来も悪いことは起きていない。
おれとnameはずっと一緒にいるんだろうなぁ。
どんなにわがままや、妄想を膨らませるnameでも、おれはかわいいと思うし、なんの不安も抱くことないんだけどなぁ。
むにゃむにゃと背中で言っているnameがとても愛おしかった。
…取りあえず明日は東さんにしっかり話を聞きに行く。