Jin
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「好きです!!付き合ってください!!!」
「…ありがとう、でも君にはもっといい男の人が見つかるよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
サイドエフェクト、それが何なのか私にはわからなかったけど。
一目ぼれした先輩が卒業することになって、私は一世一代の告白をした。
そして玉砕されたわけだ。
私も中学生で、彼は高校生に上がってしまう。
周囲の雰囲気というものもあったんだろう。
玉砕されてからというもの、魂が抜けたかのように私はやる気をなくしてしまったが、ようやく立て直してすでに高校1年。
「nameって告白とかしたことないんじゃない?」
「そうそう、いつもされる側って感じ。絶対告白したら断られないでしょ?」
「そんなことないよ」
私は一世一代の告白をした、それは物の数秒で終わってしまったけれど
今となってはいい思い出だ。
ただ、あれから数年たっているというのに私の中にまだくすぶっている彼は今どこにいるんだろう。
時々テレビでみるボーダーの嵐山さんって人がとてもよく似てると誰かが言っていたけれど…。
「そろそろ帰るね」
「え?もう帰るの?」
「ちょっと買いたい本があるの、じゃあね」
そう言って鞄を手に取り教室を後にした。
数人はまだ教室に残って女子トークとやらをしている様子だが、先輩を忘れられない私からしたらつまらないことこの上ない。
少し考え事をしながら歩いていると、すっと両脇に誰かが来たのがわかった。
「なんですか、先輩がた」
「よぉname、つまんなさそうな顔してんな」
「いやいや、かわいい後輩の姿が見えたからつい」
出水先輩と米屋先輩はボーダーでも有名な隊員らしく、時々絡まれるといつも女子たちの注目の的になる。
というのもこの二人に絡まれるようになった理由もわからないのだが…。
おそらく同じクラスの佐藤君がらみだろうか。
「なあなあ、折り入って相談があるんだよ」
「…」
「頭のいいnameちゃんなら俺らの学年の宿題もわかると思ってさー」
「何考えてるんですか、やめてくださいよ後輩にそういうのを頼むの。かっこ悪いですよ」
「あまり余るかっこよさだから大丈夫なんだよ」
「どういうことですか?」
「あ」
米屋先輩が小さく声を漏らした。
前を向くとそこには青い羽織を着た
間違えようもない後ろ姿。
「珍しい人がいるな」
「お、迅さんじゃん」
「ん?米屋に、出水か?それに…」
「先輩?」
「は?」
「え?」
「おぉ、久しぶりだなname」
* * *
久しぶりにあった先輩は前にもましてかっこよくなっていた。
私と先輩を見て米屋先輩と出水先輩はにやりと笑うとそのまま早口で物をいい私と先輩を残してその場から早々に立ち去る。
二人がなにかを勘違いしているのは眼に見えていたが、訂正する間もなく去ってしまったので明日はおそらく質問攻めになるだろう。
「お久しぶりです迅先輩」
「なんかnameにそう呼ばれるの久しぶりだな」
「ではさようなら」
「ちょちょ!!!待て、待てって!!!」
くるりと180度回転。
すると先輩は焦ったような声を出しながら私の腕をがしりとつかんだ。
男の人の手。
どきりとしないわけがない。足を止め、ちょっと肩越しに目をやるといつもの明るい笑顔がそこにあった。
「ちょっと付き合ってよ」
「結構です」
「えぇ…どうしよう…」
でも、ここで俺がいないといけないし…そうするとほかの人が…など、大きな独り言を言っている間に鞄を肩にかけ直しその場から歩き出す。
「name、ちょっと!!待ってって!!!」
「何か用でもあるんですか?」
「うん、すっごい大事な用事」
「1分でご用件をどうぞ」
「1分!?それじゃぁ、足りないかなぁ…」
うわぁ、思ってた以上に冷たい…とこぼす先輩。冷たい…か、そうだろうな。迅先輩とさよならした日が最後の日だったんだから。
というよりも、あれが異常だったと後から思い返した。
そりゃ先輩もしんどいだろうなぁ、なんてしみじみ…。
「どうしたらいいんだ…」
「というよりも、先輩はなにをしにここまで?」
「nameに会いに、あの日をやり直しに」
「は?」
あまりにも冷たい声が出たことに、先輩だけではなく私自身驚いた。
いけないいけない、先輩の前ではいつも猫をかぶっていたというのに…。
「んー、なんていうか…そうだなぁ…このまま帰るとちょっと良くないことが起きそうな気がするから」
「私にとって?」
「あー、まぁそうかも」
「では寄り道して帰ります。ではこれで」
「待って待って!!お願いだから一緒にかえって!!」
ここでは目立つ。大きなため息をつき、先輩の腕を引いて歩き始めた。
先輩もほっとしたのか、私の横を軽い足取りで歩き始める。
それからは簡単だった、卒業してから何をしてた?元気だったか?勉強はどうだ、とかあたりさわりのない話。
でも、私はなぜか、それが遠まわしで…というよりも的外れな気がしてならなかった。
「先輩」
「なに?」
「聞きたいこと、違うんじゃないですか?」
「…あー、わかる?」
「わかります」
「なんで?」
「何となくわかるんです」
「…そっか」
一世一代の告白のように、大きくためにためてから
「俺、nameが好きだったんだよ」
告白だった。
「は?」
「うわぁ、冷たい」
「いや、え?なにそれ」
「んー、ちょっと言いづらいんだけど、俺と一緒にいたら、name泣いちゃうから…いや、そんな気がして…つい」
「つい?」
つい、で私は振られたのか。というよりも、いまになって今更、なんで、今更っていう思いが勝っていた。
私の困惑している顔にもっともだ、というとそっと手を取り、もう一度口をゆっくりと開く。
「たまたまこの間、米屋たちと一緒にいるのを見た」
「そういえば、前レストランで勉強会してました」
「俺さ、その時思ったんだ。やっぱり自分でnameを幸せにしたいって」
「そりゃどうも」
「ごめん、name。自分勝手なの、よくわかってる。でもこれは見逃せないから、お願い」
俺のものになって。
本当に必死で、なんでこんなに、今更になって私の目の前に現れて、こんな告白をされているのかちんぷんかんぷんだけど。
「…考えてあげてもいいです」
「最初はそれでいい!!それでいいから」
一緒にいて。と懇願する先輩を見捨てることなんてできなかった。
* * *
「迅さん、なんでnameに絡んでたんですか?」
ランク戦のロビーに通りがかると、米屋と出水がいた。
そりゃnameのことなんとなく聞かれるだろな、と思ってたけど…。
まあ、あの場所にいたから仕方がないか。
「nameさ、サイドエフェクトがあるんだ」
「へー!!じゃあボーダーに入ればいいのに!!」
「いや、nameは入らせない」
「入らせない、ですか?」
「今いるほうが、nameが幸せだからな」
nameのサイドエフェクトはたぶん超直感だ。俺に告白してきたのだって、きっと何か直感があってそうしたんだろう。
俺だって、nameのことは前から知ってたし、ぶっちゃけ好意を持っていた。
でも、その先に見えたのは、ボーダーに入ったnameで、ボーダーで泣いてるnameだった。
「俺から遠ざけたら、nameの泣く未来は簡単に消えた。だから、nameの好意に答えるわけにはいかなかった。だって、好きな子の泣いてる顔なんて見たくないだろ?」
「でも、今になってなんで?」
「ああ、それは」
本当にたまたまだった。たまたま歩いていた場所で、たまたま知らない男を視て、そいつがnameと関わりをもって、nameに乱暴する。そんな未来だった。
簡単だった、nameと会わせなければいい、nameから遠ざけてしまえばいい。
でも、ここでふと考えた。
今日はたまたま間接的にnameの未来が見えた。でも今後はどうだろう。
nameは俺の知らない場所で泣くんじゃないだろうか、そう思うといてもたってもいられなかった。
「迅さん?」
「あー、秘密」
「なんでー?」
自分勝手だっていうことはよくわかってる。
でも、それでもやっぱり。
「nameの泣く顔は、見たくなかったんだよなぁ」
でも、しばらく返事を保留にされて、泣くのは俺のほうだと気づくのはもう少し未来の話。