Kazama
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「人気者はつらいねぇ」
「ありがたくもらうことにする」
大学でいろいろな学生に声をかけられていた風間をみて諏訪は大きなため息をついた。
なんでこんなチビがモテるんだ、というと向かい側に座っていた風間に思い切り脛をけられる。
「いってーっ!!!!!!」
「それはそうと、お前今から講義じゃなかったか?」
「休講になったんだよ、だから暇でお前を祝ってやろうと来てやったのに…けっ」
「そうか、それはすまなかったな」
「逆に謝られるとむかつくな」
再び「けっ」と言いながら煙草をくわえる諏訪。
風間はというと、先ほど女子からもらったばかりのチョコレートの箱を開け、口へと運ぶ。
もぐもぐと咀嚼すると甘い味が口いっぱいに広がった。
これはうまい。
「そうだ、お前こそもう講義ねぇだろ。これから行くのか?」
「ああ、そのつもりだ」
「へーじゃあこれ渡しておいてくれよ、あいつ読みたがってたからよ」
「わかった、確かに受け取った」
諏訪から受け取った袋の中には数冊のハード本が入ったいた。
内容はわからないが、おそらくミステリーものなのだろう。
あいつも好きそうだ、と口元に笑みが浮かんだのが風間自身わかった。
そのまま諏訪と別れ大学を後にすると、途中の店の前でふと立ち止まる。
そういえば、さっき食べたお菓子はここの店のものだった、あいつも甘いものが好きだと思い出し何の躊躇もなく店の中へと入る。
* * *
「こんにちは」
「面会ですね、どうぞ」
受付を通る際、最初は何度も声をかけられたが今となっては顔パスだ。
白い壁の間を通り、一番奥の部屋へと足を向ける。
一つの扉の前で止まりノックをするより前に扉の向こう側から了承の声が聞こえる。
「まったく、俺じゃなかったらどうするんだ」
「蒼也君だってわかったから声をかけたんだよ」
白い髪の毛は最近玉狛に入った空閑を思い出した。
「ありがとう、おいしそう」
「大学でもらったんだ、nameが好きそうだから持ってきた」
「いいの?蒼也君がもらったんでしょ?」
「俺がもらったものだ、かまわん」
「ありがとう」
いただきます、と小さ目のチョコレートクッキーを口へと運ぶ。
白い髪の毛に細い腕、髪の毛と同じように白い肌は少し日差しの下に行っただけでも赤く腫れあがりそうだった。
「そういえば、歌川君や菊地原君は元気?歌歩ちゃんはよく来てくれるからわかるんだけど」
「元気だ、そろそろ顔を出すと思う。最近忙しかったからな」
「そっかー、ランク戦があったんだよねー。いいなぁ」
「お前だって、元気になればすぐに復帰できる」
「そうかな、そうだといいな」
少しあきらめ気味に話すnameの頬を風間は思い切り指で引っ張った。
よく伸びる頬だと思う。いたたといいながら目がうるんできたのをみてようやくその手を放す。
「ひどいよ蒼也君」
「お前が仕様もないことを言うからだ」
研究も進んでる、リハビリだって頑張ってる。
確かに筋力は落ちてきたかもしれない、でもそれでもお前はまだ立ち止まっちゃいない。
「お前があきらめたらそこで終わりだ、俺たちは全力でサポートすると決めた。あとはお前の頑張り次第だ」
「…そうだね」
nameは入院している、半年前訓練中に起きた事故のせいだ。
事故というよりも、何が起きたのかわからなかったのだが、急にnameの体に異変が起きた。
どんどん弱っていく体、最初こそ意識がなくなったが今となってはこうして自分で部屋の中くらいなら歩き回れるくらいに回復した。
「蒼也君、太刀川君にあった?」
「いや、今日はあっていない。どうせサボってるんだろ」
「ふふんそれはどうかなぁ?」
にやりと笑うname、まるで猫のようだと思ったが…。
太刀川がサボっていないというような物言いだ、首をかしげるととても満足気にするname。
「なにか隠してるな?」
「どうかなぁ?」
「迅に似てきてるぞ、お前」
「そうそう、迅君も関わってるよ」
さぁ、なにがおきるかなぁ、ともう一つクッキーをほおばる。
nameが考えつきそうなものを考えては見るが…思いつかないのが本当のところだ。
降参だ、なるようになってしまえと思っていると扉がノックされる。
「誰だろう、今日はもう誰も来ないと思ってたんだけど…」
「…」
無言で立ち上がり、nameの代わりに扉に手をかけ横に引く。
両脇で聞こえた小さな爆発音
* * *
「いえーい」
「いえーい」
ハイタッチをしている太刀川とnameを目にむすっとした顔をしていたんだろうか。
迅が苦笑いしているのがわかった。
「あれはnameの作戦じゃないな、お前だな」
「いやぁ、まさかこんなに簡単に引っかかるとは思ってなくてさぁ」
俺が来る一時間前ほどに来た迅はそのあと太刀川がくる未来が見えたのだという。
あとは思っていた通りだ。
太刀川とname、迅がそろって悪だくみすればろくなことを考えつかない。
案の定、俺は二人に両脇からクラッカーを鳴らされたのだが…。
「私はちゃーんと二人が関わってるっていったもん」
「お前な…」
「まあまあ、ちょっとくらいのいたずらいいじゃん、風間さん」
「太刀川…後で覚えておけ」
ふと、太刀川が持っていた紙袋に目が行くと「あぁ、忘れてた」と言いながら俺へとそれを渡してくる。
「はい、これ。nameちゃんに頼まれてたもの」
「なんだ?」
「私は外に買いに行けないから、太刀川君に頼んだの。
テレビ電話しながら買ったから大丈夫だよ!!」
「何がどう大丈夫なんだ?俺はもっと派手なのがいいって言ったんだけどな」
「太刀川君は派手すぎるんだよ」
「まあまあ二人とも」
言い合いを始める二人の間に入る迅、そんな三人をそっちのけに紙袋を開いていくと、どうやらそれはコートらしかった。
モスグリーンのそれは確かに大人っぽく暖かそうだ。
「…諏訪隊を思い出す」
「えー!!全然違うよ」
「俺は真っ赤な奴がいいって言ったんだよ」
「でかしたname、気に入った」
「なんだよ風間さん!!!」
なるほど、nameらしい趣味だ。俺も嫌いじゃない。
タグはまだついたままだったがそのまま腕を通すと、迅も太刀川も「おぉ」と小さく声を上げた。
「すげー、めちゃくちゃぴったりじゃん、サイズも雰囲気も」
「ね、だから言ったでしょ?」
「さすがname様だ」
「蒼也君」
お誕生日、おめでとう。
nameがそういうと、二人も口々におめでとうございます、と言ってくる。
そうか、誕生日だったからなにかしたかったのか…。
ようやくnameの思惑がわかってなんだかうれしく感じた。
「似合うか」「うん、想像通り」
くしゃりと撫でると、うれしそうにnameが笑う。
彼女の誕生日にはなにをしてやろうか。
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