Izumi
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「小さい頃ってさ、苦い食べ物って大抵嫌いでしょ?」
「ん?あー、そうかもな」
「で、私の場合ピーマンがすごい嫌いだったわけ」
学校の屋上といえば、逢引の場みたいな感じだけど俺らの学校ではふつうに解放されている。
まあ、ぐるりと高いフェンスで囲まれているからだろうけど。
そんな場所で二人並んで弁当を食べる。
ほかに誰もいないのはたぶんもうじき降ってくるであろう雨のことを気にしてのことだと思う。
そんなこと気にせず俺とnameはそのまま弁当を広げていた。
それでなくてもボーダー内で隊も違う俺たちの会う時間は限られてる。
久しぶりにそろって学校に来ることができたんだ。少しくらい二人の時間がほしい。
そんな時間、弁当を食べてる途中にふとnameが呟いたのだ。
確かに、小さい頃って結構苦いものが苦手だったよな。
珈琲しかり、ピーマンしかり…野菜とか特にだったと思う。
陽介がよく面倒見てる玉狛のお子様もそうなんだろう。
「お母さん、よくチンジャオロースとか作ってくれたんだけど」
「あー、あれな」
「ピーマン入ってるでしょ?それが何だか苦手で仕方がなかったんだよね」
「結構味するもんなぁ」
「でも、今では普通に食べれてる」
「俺もそういうのあったわ。昔は苦手で食べれなかったもの」
「今じゃ」
今じゃこんなにおいしく食べれるのに、私は美味しいって最後まで言ってあげれなかった。
nameの親は4年前の大規模侵攻の時に亡くなってる。
それがもとでnameは今ボーダーに所属してるし、強さも申し分ない。
ただnameだって俺と同じまだまだ学生の大人から言わせてみれば子供だ。
時々本部長が気にして声をかけてるのも見る。
三輪だって姉さん亡くなってるし、ボーダーにはそういうやつらがたくさんいる。
「もっともっと…たくさんなにか話しておけばよかったかなぁって思って」
「…命日もうすぐか」
「うん」
「…一緒に行くか」
「うん」
ぎゅっとつかんだ手はとても冷たく小さくて。
丸い目から流れ落ちる涙は次から次へととまることはなかった。
ああ、一歩ずつ俺たちも階段を上っていくんだろう。
ふとしたことで昔を感じて、ふとした瞬間当時のことを思って、寂しくなって泣きたくなる。
そんなとき、俺はこいつの隣にいれたらいいと、そう思う。