Kazama
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「どうして気づいてくれないのよ…」
初めてみたそいつの泣き顔は、想像していたよりもとても女らしかった。
男勝りで、A級に上がったのも入隊してからすぐのことだったし、いまだにソロで活動している女。
そんな女が、こんな風に泣くのだと他人事のように感じていたのも確かだった。
俺の身長よりも高い身長のそいつは、俺の胸倉をつかんだままうなだれている。
「…」
「あんた、わかってしてるならそれはそれで最低だからね」
キッとにらみつけてくる目、背筋に何かが走ったような気がしたが
それに気づくより先にnameのほうが乱暴に胸倉を離してその場から去って行った。
隣に立っていた諏訪も、さすがにnameの行動を見てタバコをポトリと口から落とす。
「あいつもあんな風に声荒げて怒ることってあるんだな。知ってたか?」
「いや、知らなかった」
いいや…俺は何一つ、あいつのことを知らないのかもしれない。
ただ、なぜあんな風になったのか俺でもわからないのだ。
諏訪と話をしながら廊下を歩いていて、ちょうどnameが通りかかった。
諏訪から聞いた話では、彼氏ができそうであるとかないとか…。
俺も別に付き合いが短いわけでもなかったから、もし彼氏ができて結婚するとなったときは祝福の言葉の一つや二つかけてやりたい。
そう思って聞いたのだが、逆にnameの機嫌を損ねたようだった。
「機嫌が悪かったのか」
「いや、俺はなんでああなったのかもうわかった」
「どういうことだ?」
「これは俺が言っても意味ねぇから、お前が気づかねぇとな。
あ、あとさっきの話はもうnameの前でしねぇほうがいいからな」
「じゃあな」と防衛任務を終えた諏訪が本部を後にする。
nameとの付き合いは大学に上がってからだった。
木崎と一緒にいたところを見つけたのが始まりだ。
見た目に反してずばずばした物言いはとても好感が持てたし、付き合いやすかった。
「…」
諏訪の言っている意味が、いまだに少し理解できない。
* * *
「nameさーん、そろそろ出てきなよ。ごはん冷めちゃうよー。
せっかく玉狛まできたんだからさー」
本来、本部に所属しているものが支部のほうに顔を出すのは珍しい。
だがnameは本部所属であるも、木崎と大学が一緒という点で玉狛と接点がある。
玉狛に遊びにくることは少なくなかった。
迅もそこでnameと知り合った。
「…ねぇnameさん」
泣くなら一人で泣かないほうがいいんじゃない?
そういいながら、鍵のかかってなかった部屋へと足を入れた。
案の定、床に座り込みベッドへと顔を押し当てていたnameさん。
ベッドから顔を上げたnameさんはやっぱり涙でぬれていて、本来の年よりも幾分わかく見える。
nameさんのこんな姿をみるのは初めてじゃない。
「またなにか言われたの?風間さんに」
「…なんでわかるのよ」
「nameさんが泣くのは大体風間さん関係だからね」
サイドエフェクト使わなくてもわかるよ、と言いながらそっとそばで膝をつくと、そのまま胸へと飛び込んでくる。
「未来はどうなってるの?」
「ん?そうだなぁ、いろんな未来が見えるよ」
「…そう」
「大丈夫、nameさん。何があっても俺はnameさんの味方だから」
「…ありがとう、迅」
「実力派エリートですから」
nameさんには未来はたくさん見えてると伝えた。
だけど、本当は未来は二つしか見えていない。
1つはnameさんと風間さんが付き合う未来。
もう1つは俺とnameさんが付き合う未来。
nameさんには言わない、もうあらかたその未来が決まってることを。
俺だって最後の最後まで足掻く。
ほら、もうすぐインターフォンがなる。
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