Tatikawa
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「なんというか…緊張するな」
「面と向かってそう素直に言える太刀川君がすごいと思うよ…」
緊張する、そういいながらも「ははは」と笑い、目の前にあるランチを食べる太刀川君は緊張しているようには見えなかった。
太刀川君と付き合い初めて1か月ほどになるけど、太刀川君は出かけるたびによく緊張するという言葉を使う。
でも、そんな雰囲気にはまるで見えなくて顔を赤くするのはいつも私だけ。
本当に緊張してる?と思うのは私だけではないはずだ。
現に友達にそう相談してみたら「それって外だけじゃないの?」といわれる始末。
太刀川君が悪いわけじゃないし、別にいいんだけど…。
「どうしたfamily、食べないのか?うまいぞ、ここの飯」
「ありがとう太刀川君、私もいただきます」
付き合い始めたころこそ、こうやってごはんに行くことなんてほとんどなくて、休憩時間によく話をするだけだった。
でも、周囲の人から聞いてみると
『太刀川が大学に来てる?珍しいこともあるんだな』
『そうなんですか?』
『基本サボリか本部に待機してることが多い、つまりは単位が危ないということだ』
『太刀川君ってそんな感じなんですね』
『familyからも言ってやってくれ、まあ、family目当てで来てるなら次いでに勉強もしっかりしてほしいものだが』
一つ上の先輩から言われた言葉は信じがたいものだった。
確かに太刀川君、あんまり授業にでないなぁって思ってたけど…。
任務で来てないのかと思ったら、まさかただのサボリだったとは…。
「familyって本当物静かだよなぁ、もっと俺にはわがまま言っていいんだぜ?」
「十分わがまま言ってるよ、ほら、こうして今日だってお昼ご飯一緒に食べてるし」
「ちょっと飯一緒に食ってるだけだろ?」
不満げな太刀川君ににこりと笑うと「うっ」と言葉をなくしてそのまま机に額を押し当てた。
「太刀川君?」
「本当なんていうか…familyだなっていうか…うん、まあいいんだけどな」
防衛機関内部の言葉機密事項、それはわかってた。
さすがの彼もそこはしっかり線引きできてるみたいで、話す内容は自分の部下の面白い話ばかり。
後は一つ上の先輩の話、私も時々声がかかるからその先輩の存在は知ってる。
太刀川君と知り合ったきっかけだって先輩からの紹介だし。
「そういや、風間さんとよく会うんだろ?大学で」
「うん、レポートのこととかよく聞いてる、一緒の学科だし。学年が違うだけで大体授業は同じだから」
「へー…そうなんだ」
太刀川君は素直だ、だから逆に言うととてもわかりやすい。
今すごく機嫌がいいとか、逆に不機嫌だとか…。
「太刀川君?」
「あ、なんだっけ、ごめん聞いてなかった」
* * *
「でさー、出水がこうやって」
「出水君って本当面白いね」
いろいろ話こんで、買い物してたらすでにあたりは暗くなっていた。
「送ってく」という太刀川君の一言で私は一人暮らしのアパートまで太刀川君と暗い夜道を二人で歩く。
そんな中、太刀川君がそわそわしてるのに気づいて首を傾げた。
「太刀川君、なんだかおかしいよ?」
「…name!!!」
「なに?」
立ち止まり、無言のままバッと出された左手、大きなそれにはまめがある。
なんだろう?握手?と思ってそのまま左手で握り返すとやっぱり男の人の手だと思った。
でも、太刀川君は握手したかと思うとその手を離して「あー」だの「うー」だといっている。
太刀川君にしては珍しい、なんだか歯切れの悪い感じがあった。
「…」
「?」
左手で取られたのは私の右手。
そのままそっと指の間に指をさしこんできたかと思うと、自分の手のひらをピタリと引っ付けた。
…これはいわゆる「恋人つなぎ」というやつでは。
「太刀川君…?」
「…」
さっきまで向き合っていたはずなのに、いつの間にか太刀川君は前を向いて無言のまま歩き始めた。
手をつないだ私も自然と足が動くわけで。
後ろから太刀川君を見てみると、街頭に照らされた耳が少し赤くなっているのに気づいた。
なんだ、太刀川君さっき左手を出してきたのは手をつなぎたかったからなのか。
そう思うとなんだか私も恥ずかしくなってきてしまう。
手汗すごくないかな、私の手、ざらざらしてないかな、なんてどうでもいいことまで考える。
「緊張、するな…悪い、name」
「…ううん、私も緊張してる」
「そんな顔してねぇぞ?」
「そんなことないよ」
きっと私の顔は太刀川君の言うように緊張しているようには見えないだろう。
にやけているのが自分でもわかった。
太刀川君はそのまま顔を赤くしながらゆっくりと足を進める。
いつの間にか太刀川君の隣を歩く私、さっきよりも距離が縮んだような気がした。
「あれ?今名前」
「っ!!!!!!!!」
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