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すれ違いと不信と執着

数週間後〜







ガチャンッ


「くそっ!!!!」


その声を発した人は、自分の持っていたペンを投げた。

さらに自分の拳で太ももを叩いている。



「おいおい、なんの音だよ…」

その音を聞きつけたジェボムが部屋に入ってきた。


「ジニョン?!どうしたんだよ!」

部屋の真ん中でひざを抱えてうずくまるジニョンに素早く駆け寄る。


「ヒョン、俺…アルファじゃなかった…」


「ヒートが無いんだからよかっただろ、なにが不満なんだよ」


ジニョンの手には『検査結果:β』と書かれた紙がくしゃくしゃになって握られていた。

「マクヒョンの…番になれない…」




「お前……なんでマークがオメガなの知って…」


ジニョンはそれには答えなかった。ただ、俯いていた。













「なんか最近マクヒョン、甘い匂いしない?」


そう口を開いたのはユギョムだった。


「さっき俺とケーキ食べてたからな!」

ケラケラと笑いながらジャクソンがそう言った。

マークは怯えたように下を向いた。

「えー!僕に内緒でケーキ食べてたの?ずるいー!」



ジャクソンの一言で難を逃れたが、ユギョムに気づかれるならよほどなのだろうと思い、その夜マネヒョンは全員を集めた。








「今からみんなに言わなければいけないことがある。ヨンジェ、ベンベン、ユギョムにはまだ言っていなかったが、これから必要になってくる。」


マネヒョンの真剣なまなざしに、3人は目が離せなかった。


「最近…マークから甘い香りがすると思うが、あれはフェロモンだ。マークはそろそろ発情期がくるから、一層それが強くなってる」


3人はマネヒョンの言葉に、ぽかーんとしている。


「それってあの、アルファとかベータとか?あれって、僕たちももう少し成長したらそうなるってこと?」

「その通りだヨンジェ。マークはしばらく休暇を取らせ、薬も処方する予定だが、お前ら3人もそろそろ検査のはずだから覚悟しておくように。」


ベンベンは未だ理解していないという表情だが、マネヒョンはため息をひとつすると、部屋から出て行った。






「…ごめん、みんな。俺のせいで…つらいよね」

「なに言ってんだよマクヒョン!そんなわけねーだろ!」

「…ジャクソン。そんなわけないんだったら『それ』どうにかしろ」

ジェボムが呆れて指を指した。


ヨンジェ、ベンベン、ユギョムがジェボムの指した方向に目をやった。


そこにはジャクソンが興奮している証拠がバッチリあった。


ジャクソンはあたふたしながら隠したが、マンネライン3人は「うわぁ…」と言って引いた目でジャクソンを見た。


「いやいや、これは生理現象だから!ベータの俺ですらこうだからほんとマクヒョンはやばいんだって!」

慌てて弁明するが冷やかな視線は変わらなかった。


「俺は明日から1週間休み取るね、3人はその間に検査あるもんね、がんばれ」

今はマークがなにを言っても弱々しく聞こえる。

メンバー全員が下を向く。






「僕はベータかな!なんか取り柄とかないしㅋㅋ」

ヨンジェが突然そう言うと、


「僕はアルファだな!だってなんでもできるもん!ㅋㅋㅋ」

ベンベンまだそう言ってけらけら笑った。


「こいつらの明るさには脱帽だよ、ほんと」

いつのまにかマークにも笑顔が戻っていた。










4日後、ヨンジェ、ベンベン、ユギョムの3人が検査室から出てくるのをメンバー達は見逃さなかった。




3人の中で、特にヨンジェとベンベンは検査結果に絶望している様子だった。


その2人に感化されてか、ユギョムの顔も少し曇っていた。




駆け寄ったのはジャクソンだった。



「お前らその顔は…どうだったんだ?結果は」


ヨンジェがベンベンの手を握る。ベンベンは少しほっとしたような素振りを見せた。

「僕とベムは…、オメガだった」



その場にあった空気の質量が増した。


「でね、ユギョムはアルファだったよ」


絶望に少し嬉しさの感情を混ぜた表情でヨンジェがそう言った。



ジャクソンが3人同時に抱きしめようとした。

それに気づいたジニョンも3人に近づいてそっと抱きしめた。









「お前、これから大変だな」

その夜、寝ようと部屋に入ったヨンジェにそんな言葉が浴びせられた。


「そうですね、アルファのジェボミヒョンにはわからないでしょうけど」


ジェボムは心配で言ったのかもしれないが、ヨンジェの今の状態で優しく返すことは出来なかった。


「…なんかあったら言えよ。なんでも手伝ってやるから」

ヨンジェの顔を見ずに酒を飲みながらジェボムがそう言った。

「…ありがとうございます、ヒョン」



検査で疲れたヨンジェは、いつものようにジェボムと同じ布団の中に入っていった。


壁際にもたれかかって、不運の身を少し恨んだ。


「あぁ、そうだヨンジェ、言い忘れてたんだけど」


寝かせてくれ…と思いつつ体を起こしてジェボムを見る。

ジェボムはいまだ酒を飲んでいて、そして目を合わせてこない。


「俺アルファだから、お前が発情期近づいてきたり俺のヒートきそうな時はジャクソンの部屋行くから。そん時はマークと寝ろよな。」


そんなことで呼び止めたのか…と思いながらはい、と返事をするとヨンジェはジェボムに背を向けて布団を頭の上までかぶった。


ヨンジェの規則的な寝息が聞こえてくると、ジェボムはふぅと深呼吸をした。




ヨンジェを起こさないように静かに布団に入ると、ヨンジェの腰を軽く抱きしめた。


「ほんとはいつも…お前の匂いにあてられてやばいんだけどな」

少し眉をひそめて言ったその声は、ヨンジェには聞こえなかった。









マークがマネージャーと一緒の部屋に移動されたため、マークと同部屋だったジャクソンは、自然の流れで1人部屋のジニョンを部屋に来るよう要求した。



「…俺らはベータ同士だから、なんの心配もないよな」


仰向けになりながら、ジャクソンがぽつりと言った。



そんなジャクソンを横目で見て、ジニョンはにこっと笑った。


「あー、俺アルファがよかったなぁ!こんなにハイスペックなのに、なんで俺はベータでジェボムヒョンはアルファなんだよ…それにユギョム も!」

絵に描いたようにぷんぷん怒るジャクソンを見て、ジニョンは手で口を覆いながらはははと笑った。


「僕もアルファがよかったな、そうすればマクヒョンを助けられたのに」

そう言ったジニョンの目は笑っていたが、ジャクソンは眉を八の字にしてジニョンの背中をぽんぽんと叩いた。
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