始まりとその先
「「「きゃー!!!」」」
突然あたりから黄色い女子たちの声が聞こえてきた。
「あれ、ジェボム先生。今年も人気みたいですね?」
近づいて来たのはマーク先生だ。
マーク先生は天然で鈍くて、イケメンなのに自分でそれをわかってるんだかわかってないんだか…
「いやいや、モテてるのはあなたですからねマーク先生」
女子たちはここの高校で有名なイケメン先生2人が話している光景に目が離せなく、
少しのギャラリーまでもができていた。
写真や動画を撮りながら、きゃーと言って騒ぎ立てている。
「あれ、ヨンジェじゃん。担任の俺じゃなくてジェボムと回るんだー。この野郎〜」
ヨンジェは笑いながら、すみませーんと言って俺の腕を掴んだ。
あぁ、ほんとに可愛すぎて失神しそうだ。
「えーっと…君はうちの生徒じゃないよね?だれかな?」
マークがユギョム に目を向けた。
「ヨンジェヒョンの弟のユギョムです。はじめまして!」
「ユギョムくんか。名前といい顔といい、なんだか昔会ったことがある気がするけど気のせいかな。
こちらこそよろしくね」
ジェボムとマークの一連の流れの間にいたヨンジェとユギョムは、他校の女子たちからあの人たちだけずるいーとブーイングを受けていた。
マークはユギョムがなぜか気に入ったらしく、初対面のくせに2人で文化祭を回るらしかった。
俺は心の中でやったー!と叫び、ヨンジェの頭をわしわしと撫でてその気にさせた。
ヨンジェはふふふっといつものように笑い、俺の腕を掴んであそこ見ましょう!と言った。
あまりの幸せさに、何かを失ってしまう焦燥感さえ感じた。
後夜祭になると、あたりも暗くなり他校の生徒たちは帰っていった。
校庭に盛大に焚かれたキャンプファイヤーの明るさによって、幸せな時間も段々と現実に引き戻されていった。
「先生。」
隣のヨンジェが静かに口を開いた。
「ほんとは卒業まで言いたくなかったんですが…なんか幸せすぎて。今考えてること、言っちゃいますね」
俯き気味にそう言うヨンジェ に、
なぜだか俺まで緊張した。
「…実は、先生のこと好きになっちゃったんです。…返事が欲しいとかじゃなくて、ただこれを伝えたくて」
あまりの急展開に、驚きがまるっきり顔に出ていたと思う。
「…え、でもあの、「お前の好きなやつ」は?お前のこと覚えてはないけど、いるんだろ?」
ヨンジェは悔しそうに笑った。
「でもやっぱり…これ以上待ってても無駄かなと思ったんです、先生の言ったとおり。
それに、僕を忘れた人よりも、僕の近くにいる『先生』をなんだかとっても好きになっちゃって」
なんて言ったらいいのかわからないけど、とりあえず頭を撫でてみた。
なにしてるんですか、とヨンジェは笑った。
「俺も…ヨンジェのこと好き。ここ1ヶ月お前と放課後話せなくて、正直限界だった。
それくらい、ヨンジェのことが好きだから」
ヨンジェは一瞬びっくりした顔をすると、今度は照れくさそうにした。
「えー!それで、付き合っちゃったの?!」
あまりのことに驚くユギョムに、ヨンジェは恥ずかしがりながらうん、と言った。
「ほんとにヒョンはジェボムに依存しすぎ…
いい?ヒョン。なんで僕らが前世を覚えてるかはわからないけど、また同じ結末になるかもしれないんだよ?」
ヨンジェはそんなのわかってるよ、と拗ねた。
「だからその…またジェボムに捨てられるかもしれないんだよ。それでもあいつがいいの?」
ヨンジェは真剣に話すユギョムから目を逸らした。
まるで、結末を知りながら告白したかのように。
はぁ、とため息をつくと、ヨンジェの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「それでもあいつがいいなら、僕はヒョンを応援するよ、だから何かあったら言ってね?」
「うん。ありがとうユギョマ」