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すれ違いと不信と執着


「俺オメガかー。まぁなっちゃったからには仕方ないな」

一方、マンネラインの2人組は意外と素直に受け入れていた。


「えーい、検査室から出てきた時泣きそうだったくせにㅋㅋㅋ」



ユギョムがベンベンの肩をばしばし叩いた。お互い馬鹿みたいに笑い合った。

「ユギョムはアルファかー、ダンスも上手くてアルファなんて羨ましいや。」

ユギョムはベンベンを見て、いつもとは考えられない控えめな笑みをその顔を浮かべた。


「僕は…『ある人』を助けるためにアルファって姓を使うことにするって、前から決めてるから」

ベンベンはけらけら笑った。

「助けるー?ユギョム、そんなに好きな人なのその人?クリスブラックさんとか?ㅋㅋㅋ」

違うよー!と言って笑ったユギョムのその目の奥に欲望が隠されているなんて、知りもしないままベンベンは笑った。






マークがまたメンバーと合流して1週間が経った。

デビューに向けての準備はほとんど出来上がった。

しかし、ひとつ問題があった。


メンバー全員が夜にマネヒョンに呼び出された。


「デビューはほとんど心配していないんだけどなぁ…。ヨンジェとベンベンのヒートが終わってからデビューしたいと思ってる。体の負担を考えてだ。ただ、2人ともまだ来ていないからなぁ…」

マネヒョンの言葉に、もう空気が悪くなるようなことはなかった。

その場にいるほとんど全員が、もう既に自分の性を受け入れていた。


「マネヒョン、おもちゃと番にはなれないんですか?ㅋㅋㅋ」

ベンベンが笑いながらそう聞いた。

「はぁ?!お前おもちゃとか使ってんのかよ!俺にも使わせろよ!」

「いやジェクスンヒョン、俺が使ったおもちゃなんか貰ってもいやでしょㅋㅋㅋ」

「ねぇベム、俺おもちゃとか知らないんだけど?俺の方がオメガ歴長いのに。教えてくれてもいいだろ…」



あまりの騒ぎようにマネヒョンは呆れながら次の言葉を紡いだ。


「事務所としては、番を作ることは禁止していない。ただ、相手のことが世間にバレたときに都合の悪いような人とは番になるなよ、それだけだ。」











「はぁ…ここ数日ずっと疲れる…」

マネヒョンとの話が終わって解散した後、あまりの疲れようにヨンジェはリビングで一時まで寝てしまった。

そのため、今頃になってシャワーを浴びている状況だ。


「あれ?このボディーソープ、こんな匂いしたっけ?」

違和感を覚えていると、シャワー室のドアを叩く音が聞こえた。


「おい!今入ってるの誰だ!返事しろ!」

ジャクソンがそう小声で叫びながら言った。



ガチャ。


「小声で聞こえないですよヒョン…」

ドアを開けてそう返事したところ、ジャクソンはなんで開けるんだよ!と焦っている。


「お前もマークヒョンと同じか?匂いやばすぎだろ…。ヒートに入ったみたいだから、マネヒョンに連絡してくるわ…。あー!トイレがしたくて来たのに!」


そう言ってマネヒョンのところに行こうとしたジャクソンを、無意識にヨンジェは引き止めていた。


「…朝になったら、僕から言うから。ジェクスンヒョンは何もしなくて大丈夫」


いつになく真剣なヨンジェの眼差しに、ジャクソンもうなずくことしかできなかった。





ヨンジェが部屋に入ると、当然ながらジェボムは既に寝ていた。



「…っ!!ほんとだ…ジェボムヒョンからすごい匂いする…。僕の体からも…」

じきにその場に立っていられなくなり、呼吸が荒くなる。


「僕の好きな人に近づいたら匂いがどうなるのか確かめたかったなんて…ジェクスンヒョンに言ったら怒られそう」


ペットボトルの水を喉に流し込む。


「甘っ…っ」

五感で感じる全てが自分の匂いとジェボムの匂いに染まる。



(どうせ…このヒョンは僕のことをどうにかしようなんて考えてないんだ)


足に力は既に入らないのに、ヨンジェはどこか他人事でヒートの状況を楽しんでいるかのように思えた。


部屋着のボタンを2つほど開けると、ジェボムの左手を持ち上げてその中に滑らせた。


「うわ、っ、すごい…匂いがもっとすごくなった…っ」

ヨンジェは汗をかいて、呼吸することすらつらい体を持ち上げてジェボムの横に座る。








『ヨンジェヒョン?」



ヨンジェは「はぁ、」と熱い吐息をこぼしながら声の元へ体を向けた。

「ユギョマ…」


ユギョムは目を丸くしている。


「だめだよ、そんな匂い出したままいたら…隣の部屋まで匂い来てるよ、?しっかりしてよ!」




「おい、っ」

ユギョムの大声で起きたジェボムがヨンジェの肩を持ってユギョムに向き直す。

「部屋、から、っ出て行けよ、ユギョム、っ…」


呼吸もままならないジェボムの声に、ユギョムは心配そうにしながらうんと頷いて出ていった。


「な、にしてんだよ…はやく、マークの部屋に、っ行けヨン、ジェ」

ヨンジェはふるふると首を振る。

そしてジェボムの唇に軽くキスした。



ジェボムはヨンジェの頭をしっかり抱え、逃すまいとした。

「は、いいのか、っ?喰うぞ、お前のこと」


拒まれると思っていたヨンジェは内心驚きながらいいよ、とかすれた声で言うと、

噛み付くようにキスをした。










何時間か後、ジニョンによって、部屋の中で倒れているヨンジェが見つかった。

ジェボムは出かけたようで、姿はなかった。


倒れているヨンジェの体からは、






オメガ特有の甘い香りがした。
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