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 今年は例年に比べて暖かく、この二月に雪でなく雨が降っているのはきっと今日がバレンタインだからだろう……な訳はない。
 地球温暖化だかなんだか難しいことはよく判らないけどとにかく雨。
 湿っぽい今の気持ちそのままだとメリディアナ高校教師は自室で軽くため息をついた。

 本来なら愛を誓いあう日とされているが、日本ではこの日に女性が思いを寄せる男性にチョコレートを贈り自分の気持ちを伝えるのだとか。
奥ゆかしい話だが、それも現在におけるやりとりは中元歳暮等物品の贈与を伴う季節のあいさつになってしまっているとエイドリアン・シーデルマンは既に学習済みだ。
 なぜメリディアナのバレンタインデーが日本流なのかと読者諸兄姉にも疑問もごもっともと思うが、どこかの私立探偵が暗躍している説が濃厚だが詳細は不明であるということになっている……それはさておき、だ。


 バレンタインって女性が男性に贈る行事だったんだよね?
自分の常識間違ってる?
ねぇ?

 濡れないようにと大事に持ち帰った紙袋には色とりどりの包装紙にくるまれたチョコレート、一番上にはロリからの贈り物があった。


『バレンタインに跳ぶ』



 フォン・リヒターと対決する少し前、サイバーシックスはロリにエイドリアンの眼鏡を託した。その時彼女は自分とエイドリアンの関係を正しく知ったはずなのだ。
 復職した自分を未だ男性教師と信じている他の生徒達とは違う。

だから。

チョコレートを贈るってのはないでしょう?
しかも手作りで大好きvのメッセージ付き。

こういうことは好きな“男の人”にしてあげて。と
こっそりロリを呼び出して軽く忠告するつもりだったのだ。

『先生、これあげる』

 自分の目の前にチョコレートを出した時のロリの顔を思い浮かべた。

 恋する少女らしく少し頬を染めて邪気無く笑う姿は大変好ましく思う。
普段の小悪魔のような態度より全然良い。恋情は湧かないが。


忠告するのはまた今度にすることにしてロリからの贈り物を一つつまんで口に入れる。
いびつな形のそれは甘くおいしかった。

 自分はロリのようにチョコレートに思いを乗せることが出来るだろうか。

 いつの間にかやんだ雨に気がつくとサイバーシックスはいつもの黒い服とマントに着替える。

 自分のバレンタインは未だ終わっていない。
 エイドリアンと自分の関係を知っているもう一人の男。 昼間、学校で終始感じていた視線を思い出す。
彼は一日中自分からの贈り物を待っていたのかもしれない、待てを言い渡された大型犬のように大人しく。

彼に渡すのは市販のチョコレートだけど。
日付が変わる前に彼に会いたい。


「今度ロリに作り方教えてもらおうかしら」

来年のこの日のために。
手作りのチョコレートを。
彼女はアパートの窓から空へ飛び出した。

まっすぐ目指せ、
行き先はルーカスの部屋




END 



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