After 13 episodes
草は枯れ寒気に凍てつき、小さな動物達は春を待ち眠りについている。 未だ暗い冬の朝、音すら凍ってしまうような冷たく張り詰めた空気を縫うように男と女が歩く。 男は分厚いコートにマフラーを口元まで巻き完全防御を決め込んでいるが眉間に小さくしわがよっているのはやはり寒いのか、それでも女をエスコートするように先立って歩く。 対する女もコートを羽織っているが、その素材は男の着込んでいるものに比べ頼りなくあるのにその表情が平然としているのは、普段から黒い密着したスーツとマントで365日雨晴れ雪お構いなくメリディアナの街を跳びまわっているからだろう。要は慣れているのだ。それは女が人間でない所為もあるのかもしれないが。 女にとっては暑いくらいだろうその薄手のコートは出かける直前に『見ているほうが寒いから』とでも男に言いくるめられしぶしぶ羽織ったからであろうか。 それでも女に不機嫌なそぶりは見当たらない。 足の下で霜の折れる音がさくさくと小さく響く。二人の間に会話は無い。 彼らが目指しているのは小高い丘の上、つまり彼らの勤務先であるメリディアナ高校に向かって静かに歩いている。 儀式に向かう僧侶のように静かに厳かに穏やかに。 やがて学校に到着した二人は校舎に背を向け、メリディアナの街を一望する。 ほら、と言うようにルーカスはサイバーシックスのコートの袖を軽く引っ張り少し赤らんだ東の海を指差す。二人の視線の先に見えるのはオレンジ色の朝日。 生まれ出ようとする赤子のような美しさに言葉を出すことを忘れたまま見入った。 やがて太陽は完全に姿を現しメリディアナ中が太陽の光に包まれた頃、二人は今年初めて言葉を交わす。 「「あけまして おめでとう」」 END |