After 13 episodes
「Trick or treat」 コンコンと小さく窓を叩く音が二つした後で、ベランダから聞こえた柔らかいハスキーボイスに今夜も来てくれたのかと近付いた。 窓を開ければ黒ずくめの“友達”がにこりと笑い「いたずらとお菓子、どっちがいいかしら?」と笑う。 秘密を共有する同僚兼友達兼恋人の姿は通常業務のそれだが、黒一色で統一されたマントに帽子、タイツのその姿は本日限定で菓子 を求め、街を練り歩く子供達の姿に近い。 つまり仮装。 「いたずらされるのはごめんだな」ニヤリと笑って彼女を部屋に招き入れる。 彼女がするんだったらいたずらでも何でもいいというのが本音、それが大人な意味でのいたずらだったら大歓迎なのだが、仮にも教 育に携わる人間の言うことではないだろうからそのあたりの発言は自粛する。 「あのね、今日ホセとまたトラブルがあったの」 彼女の発言に俺の気分が曇る。そういえば、彼女は怪しい奴らに常日頃命を狙われているのだ。 怪我などしなかっただろうか、その心が傷つくことなどなかっただろうか。 顔色が変わった俺を気遣うように、ゆっくりと彼女は大丈夫と笑った。 「今日はハロウィンだったからお菓子をぶつけて追い払っちゃったわ」 こうやってね、と菓子を投げるポーズをした彼女の姿は鬼は外ー、福は内ーのそれであり、何か違うというか季節を先取りしすぎてい る。 でも、 今日も彼女が無事で、そして笑っていてくれて本当に良かった。 「熱いコーヒーを入れようか。お菓子はクッキーでいいかい?」 胸にこみ上げる何かを隠すように彼女を誘った。 明日も彼女が幸せであるようにと願いながら。 END |