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13episodes ago








 三月も半ばだというのに肌寒い日であった。
「寒の戻り」ともいうのであろう冷たい風の吹く中でメリディアナ高校の生物学教師ルーカス・アマトは悩んでいた。
(給料の3ヶ月分は痛いがなんとかなる、彼女に似合いそうなものも見つけた。だが俺は彼女のサイズを知らない…)
目の前には宝飾店のショーウィンドゥ。
ルーカス・アマト3×歳、人生最大の危機であった。


『ホワイトデーの憂鬱』


 ルーカス・アマトがサイバーシックスからチョコレートをもらったのが先月のバレンタインデー、彼がホワイトデーのお返しに給料の三ヶ月分を使うと決めたのはその直後。
 それから一ヶ月彼女に秘密で事を進め今日に至ったのだが肝心の彼女のサイズを知らなかったのだからお粗末である。
手っ取り早く本人に聞けばいいのだろうが、それはプロポーズをサプライズで決めたい彼の道に反している。
 これでもロマンを愛する純情な男である。
(適当なサイズのを買って後から直してもらおうか、いやそれはロマンではない。いっそのこと誰かに聞いて……いや、でも誰が知ってるんだ、知っている奴がいるのならそれは男なのかそうなのかどうなのかもしかしたら俺は間男になってしまうのか云々かんぬんその他諸々)
 もうかれこれ一時間近く悩んでいた。


ふと、

「どうしたんだいルーカス、そんな難しい顔をして」

いつの間にか彼の横に同僚のエイドリアン・シーデルマンが立っていた。

「あ、いや、ちょっと」

「宝石に興味があるのかい?意外だな」

珍しく口ごもるルーカスにエイドリアンは両手を軽くあげ大げさに驚いてみせた。
苦笑いで応えつつルーカスはふとエイドリアンの指に目を留める。
彼の指は男としてはひどく繊細でしなやかそうだった。
ルーカスはおもむろにエイドリアンの手をつかんで……

「お前の薬指のサイズを教えてくれ」




END?





→おまけ・あるオーナーの受難


 いらっしゃいませ、店のドアが開く気配にオーナーはにこやかに声をかけようとし、固まった。

 ここはメリディアナのとある宝飾店。
この町の中でも一番いい位置にあるこの店はセンスの良い品ぞろえと客にこびることも無い、かといって無愛想でもないオーナーが営んでいる。
今日はホワイトデー。愛する彼女へのプレゼントにと普段は縁がないであろうこの店を訪れる男性も珍しくないのだ、本当は。

 だが、今入ってきた客は男二人……。
ゴリラのような大男とその男の小脇に抱えられた眼鏡の華奢な男。

表のショーウィンドゥにある、そう右側の指輪。それをください。
サイズはこいつの左手の薬指にあうものを。

真っ赤な顔をして一気にオーダーする大男。
脇に抱えられた眼鏡の男は真っ青な顔をして固まっている。

一緒に固まりかけたオーナーだったがそこは職業。
ひくつく眉をここ数年で急速に定着しつつある”多様性”の三文字と営業スマイルで隠しつつ、ついでに無理やり連れてこられたであろう眼鏡の男に大丈夫?警察呼ぶ??と心の底だけで案じながら丁寧に仕事をこなす。
だってなんかこのゴリラ怖い。

「ラッピングはどのような感じになさいますか?」

 エレガントな感じにしてくれ、俺はこれでプロポーズするんだから。
これ以上ってない位の笑顔で大男、ますます青くなる眼鏡男。


そしてオーナーは

優雅な笑みを浮かべるはずの口元をあんぐりと開けたまま固まり、その後急病による三日間の営業中止を余儀なくされた。



今度こそEND この話を書いた頃にはLGBTなどという言葉はなかった。(弁明)





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