13episodes ago
二月も半ばだというのに今日は暖かい日であった。 そんな一足早い春の日差しの中でメリディアナ高校の文学教師エイドリアン・シーデルマンは困っていた。 「どうしよう、女生徒達からチョコレートをもらってしまった」 彼の両手にはいっぱいのチョコレートの山。 今日はStバレンタインデーであった。 『バレンタインデーの幸福』 教師に渡すチョコなのだから半分は単位欲しさの義理もあるのだろうが、これを差し引いてもこの量はただごとではない。 これだけの愛の告白にいちいち応えていたら体が幾つあっても足りないだろう。 「ワォ、随分とたくさんもらったな、色男」 横から同僚のルーカス・アマトが茶々を入れてきた。 笑い事じゃない、とばかりに睨み付けるエイドリアンを無視して楽しそうに続ける。やっかみ半分同情半分、まぁ所詮は他人事だ。軽いものである。おまけに 「知ってるか、エイドリアン。バレンタインデーにチョコレートもらったらホワイトデーに3倍にして返さなくちゃいけないんだぜ」 「それは大変だ、僕は3月に破産する」 「給料安いからな」 エイドリアンには知らないことがたくさんある。 真顔でかえせばしてやったりとばかりにルーカスはにかっと笑った。 そんな親友をちらりと眺め、小さくため息をついた。 -その夜- 「はい、これ」 いつものように窓からやってきたサイバーシックスはきれいにラッピングされた小さな包みをルーカスに渡した。 「俺に?」 「今日バレンタインデーでしょ?だから」 他愛のないいたずらが成功した子供のようにサイバーシックスは笑う。 「こりゃ、お返しが必要だな」 「3倍返し?」 「いや、君へのお返しは給料三ヶ月分だな」 覚えたばかりの知識でこてりと首をかしげると、ルーカスはまじめな顔でつぶやく。 「……何それ?」 サイバーシックスには知らないことがたくさんある。 春はもうそこまで来ています。 ホワイトデーに続く |