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13episodes ago








 よく言うでしょ。
“木は森に隠せ”って

だからね、
私そうしていたのよ。

……そのつもりだったの。



『森へいきましょう』



「絶対に嫌だ」

ずきりと痛む左肩を庇い後ろの大木に凭れ掛かった。

目の前でルーカスが険しい顔をしている。

 肩の怪我は先程遭遇した敵、グリセルダに先日つけられたもの。

目の前の同僚達は今崖から落ちたときのだと思い込んでいたけど。

 それよりも敵に私の正体が知られてしまった。

逃げる?戦う? 何とかしなくちゃ。

痛みに顔を引きつらせながら内心焦る。

エイドリアンの姿をしている今の自分ではサイバーシックスとして、目の前にいる彼に協力を求めることも出来ない。

ルーカスは何も知らない。


 病院になんて行ってる暇なんて無い。それに診察なんて受けたら私が人間じゃないって知られてしまう。

エイドリアンとして病院へ行くことを拒否する。


「ワガママを言うな!」

ルーカスの一喝ではっとした。我に返り、周りを見回すと自分を心配げに見ている生徒達がいた。

どうしてみんなそんな顔をしているの。
エイドリアン・シーデルマンは本当はもういない、今の彼はサイバーシックスの隠れ蓑だったはず。
目立たないよう、なるべく誰の心にも残らないように振舞っていたのに。


なのに“彼”の存在はルーカス達にとって、少なくとも怪我の心配をされる程度には大事に思われているのだと気がついて愕然とする。

「……わかった」

そう返事するしかなかった。


そんなつもりじゃなかった。

 課外授業を急遽変更し、行き先を病院へと向けたマイクロバスの中で頭を抱えた。

 このままではルーカス達に正体が知られてしまう。
いいえ、それどころか彼を、生徒たちまで危険な目に遭わせてしまう。

私は彼らと違う存在なのに森の中に隠れ、そして木に近付きすぎたのだ。

 違うと知っていたのに。


「先生、大丈夫?」

 不安げな顔で覗き込んでくるロリにすらあいまいな言葉を返すことしか出来ない。


 それから病院まで付けてきたグリセルダの襲撃を受け、戻ってきたデータセブンと共に何とか切り抜けた。





 ……だけど、どうしてあの時、敵である彼女を助けようとしたのか判らない。

彼女の心に何があったのかそれも判らない。

だけど、グリセルダは生きろといって私の手を離し、滝壺へ消えていった。

『お前が生きるんだ』

 彼女の最期の言葉が耳の底に張り付いて消えない。

 お互いが生きていける方法はどこかにあったのかもしれない。なのにそれを考える時間すら与えられず、
彼女は消えた。


 労わるように擦り寄ってきたかっての兄弟に話しかけた。

「ずっと私の傍にいてね」

約束して、データセブン。

私を生かすために自分を犠牲にしないで。

そんなもの望んでいないのだから



だから……とりあえず、

病院へ戻ろうかな。


 怪我人(私のことだけど)は行方知らず、姿が見えない何かに病院中荒されまくって、今頃あそこは
大変なことになっているんじゃないかしら。

「……僕はまたルーカスに怒られるだろうか?」

戦いで乱れた服を丁寧に直して笑う。


 木にすらなれなかった自分だけど、まだ……もうちょっとだけ森の中で。




END TVシリーズ第拾弐話ネタ


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