13episodes ago








『これから始まる5の恋』


PCサイト、爆音クライさんからお題をお借りしました。
(閉鎖されたようです。ありがとうございました)



***



01. 

 彼女は何かのトラブルに巻き込まれている。

最初に遭った時直感として認識したそれはまぎれもない事実であり、かかわるなと言った同僚の言葉は正しいかった。

 現に俺のアパートは空き巣と不審者に荒された上に窓枠を壊され、その上乗っていた車は対向車を避けようとして倉庫の壁にぶつかり壊れた。

いや、これは彼女じゃなく俺のトラブルなんだが。
というより車の方は俺が好き好んで積極的に巻き込まれた結果だったんだが。

アパートの敷金は戻らないだろう。

車は……これは廃車だな。

 人間の方がスクラップにならなくて良かった、などと洒落にならないことを考え出した頭をクリアにしようと俺は首を振った。


「大丈夫?」

 気遣うような彼女の声が聞こえたのと同時に壊れて半分開いた車のドアの隙間から手が出てきた。

 黒い手袋に包まれたしなやかな手を掴むとわずかに驚愕する気配。

「君の名前は?」

 それに応える彼女の返事は無く、あいまいな笑みと共に掴んだ手はするりと抜けた。

俺の手と彼女の手が離れる一瞬触れた互いの指先。

触れる指先は、冷たくて少し暖かかった。


ルーカス視点
*TVシリーズ第一話ラスト妄想




***



02. 

君しか見えなくなったのはきっと         友達だから、だと思う。

 恋は人を変えるという先人達の言葉は正しい。  

友人である自分への態度
毛深さを増した腕の剛毛
一晩でセミロングな頭髪
            
……いくら何でも変わりすぎだろそれは。   

 メリディアナ高校に新しく赴任されてきた教師は魅力的で素敵な女性、名前はイレーン。

ルーカスはあっという間に彼女に熱を上げている。
それはもう滑稽なくらいあからさまな好意を彼女に向けて!

 彼はイレーンの事が本当に大好きで、そして彼女の傍にいる今がとても楽しいのだろう。

たとえその姿が挙動不審者にしか見えなくても、ルーカスが幸せならそれでいいと思った。

そうだろ?友達なんだし。

ルーカスが幸せならその友達の僕も、……そして私も幸せ。

 なのに二人が仲良く歩いているのを見る度、心の底で澱んだ何かがぐるぐると渦巻きだし、胸が押しつぶされるように痛んでいる。

僕も私も幸せなはずなのにどうして苦しいの?

こんな気持ちは知らない。

どうしてこんな感情が私にあるの?

これじゃ嫉妬しているみたいじゃないの。
私は人間じゃないのに!

あなたしか見えない。
あなたの幸せすら見えない


   ……私は人間なの?


エイドリアン(サイバーシックス)視点
*TVシリーズ第九話途中妄想




***



03.

 隣に好きな人がいる。なんて素敵な事なんだろう!

 彼女は俺の横で穏やかに笑っていた。
その場所にいることが自身の幸せでもあるかのように


 いつもの学校で名を呼ばれドアを開けた。切羽詰ったエイドリアンの声に何事かと体を向けふとみた窓の外に大きな目玉。
 それから先はよく覚えていない。
悲鳴のような声を上げたエイドリアンが自分の体ごと俺を教室に押し込んだような気もするけどそれもあいまいだ。

目を開けると日が落ち暗くなった学校の中のどこか。ソファで横になっている自分。
傍らにいるのは愛しい彼女の姿。

俺はまた夢を見ているのだと思った。

いつもの、そういつもの

 今まで夢の中でそうしていたようにサイバーシックスの頬に触れ顔を寄せた。

彼女もはにかみながらそれに応えてくれる……はずだったのだが、肩を小さく押され、彼女は俺から少し離れ、体と顔を横に向けた。

ここまで来てようやくこれが現実だと気がついた。夢じゃなかったやらかした。
嫌われてしまったか?
彼女の顔は見えない。

 何があったんだ、よく判らないと言い訳じみたみっともない言葉を並べたが、上手くごまかせただろうか。
 この胸の高鳴りを彼女に聞かれたりしなかっただろうか。

「なんでもないわ」
 ほんのりと笑って告げた彼女の声音と態度にに、『嫌われた』という最悪の事態を免れた事を実感し胸をなでおろした。

だがその後に続いた言葉

「ちょっとしたトラブル」


なぁ、それって

 ……どこからどこまで?


ルーカス視点
*TVシリーズ第拾話ラスト空想




***



04.

 楽しい(?)ショーは終わりを告げ、車輪をつけた小蟹に追われた団長ホセはフィクスト・ザ・クラウンと一緒に夜の街を逃げ出した。

 大量の水を浴び壊れていく機械仕掛けの動物達、火花を上げながら暴走する大蛸。崩れ落ちるサーカスの看板。

 避難した私達が立っているのはメリディアナの象徴、天使像の頭の上。

 未だ勢い良く燃えているテントを見下ろし、ルーカスはエイドリアンに関するいくつかの話で笑った。

 私の前で彼がエイドリアンの事を楽しそうに話すのがくすぐったくて。
……うれしくって。

 隣にいたデータセブンに頬ずりしながら返す私もつられて笑う。


 数分前、あの騒ぎの中で気絶したルーカスを起こそうと、息がかかるほど近くへ顔を寄せ名を呼ぶと、彼のぼんやりとした呟きは。

『今日こそ言えるかな』

あなたの言いたかったことは聞けなかったけど。

 あなたはもう一人の私の事も好きでいてくれる。

それだけでいいと思った。


サイバーシックス視点
*TVシリーズ第拾壱話ラスト空想




***



05.

「くそっ」

 いきなり海に現れた巨大生物は海沿いにあるメリディアナへ上陸し、少しずつ街を破壊していく。

 夕べ、アパートに現れたサイバーシックスの様子がおかしかったのは、アレをどうにかするためだろう。

あの時、彼女は何かを伝えようとしていた。
多分『ありがとう』とは違う言葉を。

 聞いてしまったらそれが最期だと思った。

もう会えないかもしれないと思った。

 だから

『私は人間じゃないの』
悲鳴を上げるように呟いた彼女を抱きしめ、自らの口唇で言葉を奪った。

 俺を押しのけ、部屋を飛び出した彼女の顔を見ることも、体張った告白の返事を聞くことも叶わなかったが、


 俺は街から避難する車で溢れかえる道路の隙間をスクーターで走った。
渋滞を逆走し、あの怪物の元へ。

 止まっていた一台の車からロリが飛び出し、駆け寄ってきた。

 叫ぶように早口でまくし立てたロリの言葉と彼女が差し出したあるものに俺の思考が一瞬止まる。

“CYBER SIX”と名乗った彼女にはどこか理解できない闇があった。

どれだけ親しくなっても、大事な“友達”なのだと言ってくれていても明かせない彼女自身の影は、俺が最初に感じた“トラブル”の所為だけだろうと思っていた。

 彼女に近づけば、親しくなれば、いつか彼女自身の闇は晴れると思っていた。


 こんな大事なことに何故気づかなかった。


“ADRIAN”という名の同僚に感じていた違和感。

 一緒に食事とするのが日常になるほど親しくなった今でも、ぎこちなく話す同僚は人付き合いが下手糞な元文学少年のそれだろうと単純に考えていた。


 CYBER SIXとADRIAN。

 元々一つのものだった、不完全な二つのパズルは最後のピースを嵌めて完成した。

 最後のピースはサイバーシックスから託された、とロリが差し出したエイドリアンの眼鏡。


今まで気がつかなかった。

気づけば隣に君がいた。
ずっと隣にお前がいた。

過去形になんかするものか


 俺は眼鏡をシャツの胸ポケットにしまった。

「あたしも行く」

 ロリにヘルメットを渡しスクーターの後に乗せ走り出した。

彼女の、彼の元へ。


ルーカス視点
*TVシリーズ第拾参話適当






    

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