13episodes ago
『2行の5の長文』 PCサイト、爆音クライさんからお題をお借りしました。 (閉鎖されたようです。ありがとうございました) *** 01.飛ぶ? 跳ぶことは出来ても飛ぶのは無理だよ 「おい、お前文学担当だろ なんかこう、そこはもう少し……こう、らしい感じの『返し』をしてくれよ」 らしい感じとは一体なんだと目の前で肩をすくませているのは華奢な同僚の男。 名はエイドリアン・シーデルマン。メリディアナ高校文学教師だ。 間違ってもカラテ担当ではない。 こいつが赴任直後タチの悪い生徒達に絡まれていたのを助けたのがきっかけで頻繁につるむ様になった。 まぁ、友人といってもいいんだろう……な。 今だって二組のサンドウィッチとコーヒーを間に挟んで昼休みを一緒に過ごしている。 今日は仕事でチャイムが鳴れば夕方までまた仕事な憂鬱な一日になる予定で。 せめて目の前にいるのが同性の友人じゃなく、振るい付きたくなるような美女であれば、この暗い気持ちも 少しは晴れるだろうに。 例えばこの間会った、黒いスーツの彼女とか。 スーツと同じ夜の色をしたマントをなびかせて街を跳び歩いていた彼女はとても美しかった。 まるで天使か妖精かと。俺の女神かもしれない。 だが俺は彼女の名前をまだ知らないし、また会おうと約束したわけでもない。 でも…… もし、また会えたのなら ちゃんと彼女に話してみよう。 『君の傍にいたい』と。 俺は正直言って女性を口説くのは上手ではない。 いくら普段大勢の生徒相手に授業をしていてもそれとこれは明らかに別物で。 それが一対一で、しかも恋情を交えたモノとなると……ああ、考えるだけでどうにかなっちまいそうだ。 その時はエイドリアンに協力を頼んでみようか。 こいつは俺が彼女に会ったいきさつを知ってる。 それに女性の心情ならきっと俺よりも文学教師のこいつの方が詳しいだろう。 憂鬱だったはずの昼休みはいつの間にか楽しい空想タイムになっていた。 彼女のことを考えるだけで楽しくなれる。 「飛んでしまいそうだ」 と思わず呟く。 浮かれて飛んであの空へ。 だけど一緒に居た同僚の言葉はあまりにもあっさりしていて 「飛ぶ?跳ぶことは出来ても飛ぶのは無理だよ」 そして冒頭へ戻る。 きっと彼女にも無理 ルーカス視点*TVシリーズ第一話直後推定 *** 02.「大丈夫」と君は言ったけど その表情はとても痛々しくて直視できなかった 空が白み始めた頃、燃え落ちた塔の傍らで土を手に跪く彼女は明らかに落ち込んでいて。 声を掛ければ弱々しく、「大丈夫」と君は言ったけど その表情はとても痛々しくて直視できなかった その頬には明らかに涙を流した跡があるくせに、俺にはそれを見せないように笑おうとする。 こうして話をしているのだから、多少は気を許してくれているのだろう。 だけどもっと、根本的な部分で未だに俺を拒んでいる彼女に一体何が出来る? 泣きたいときはちゃんと泣けばいいのだと、その簡単な言葉すら出てこない俺自身が情けない。 「いつか教えてくれないかい?」 君たちの事を、 それが精一杯だった。 彼女から返ってきた言葉は了承を表すものだったけど 今はまだ話せない、と同時に拒絶されてしまった。 彼女の悲しみは俺には話すことができない程深いものだろうか。 俺は君の力になりたい。 今この瞬間だって。 黒豹と共に朝日の中を去っていく彼女の背中が小さく見えた。 俺はまだ彼女の傍に居ることを許されていない。 約束した「いつか」をいつの日か現実にしたい、と ルーカス視点*TVシリーズ第参話ラストから *** 03.神様が嘘をついた 僕等は何を信じればいいのだろう 神様が人間を作ったのなら、人間を作ったからこそ神様と呼ばれているのなら 私の神様はあの男 そいつは人間の為に存在している神様と全然違っていたのだけど、私達バイオロイドを創った彼は間違いなく私にとって神様で。 だから ありえない事だった。 “神様”が私達を裏切るなんて、その偉大な力を私達に向けてくるなんて事は。 ありえない事だった。 “神様”だったはずのあの人間は私達を裏切った。 大事だと言ったのに 一番信じていた存在に裏切られた。 神様が嘘をついた 僕等は何を信じればいいのだろう 部屋の窓を開け、サイバーシックスは夜の空気を肺いっぱい吸い込んだ。 今度は何を信じるの? この街に来てエイドリアン・シーデルマン名義で借りたアパートの部屋。 テーブルの上に置かれた彼の身分証明書に貼られた写真は男の姿をした自分自身 「エイドリアンが男性だったのは良いことだったのかしらね」 彼女は一人呟く。 昔手に入れた男性のIDは結果として昼間の彼女に男として振舞うことを強いることになった。 もしこのIDが女性のものであれば、もう少し違ったものになったかもしれない。 本当の性を隠す必要が無かったのなら友達も、もしかしたら恋だって出来たかもしれない。 それが仮初めの、ただ一時だけのモノだったとしても、信じ愛する存在が居ることはきっと素敵なことだもの。 「だけど私は生きることを選んだの」 自分が“神様”に疎まれた存在であっても。 人間が自分の幸せを神様に願うのと同じ位強く、 『生きたい』と願ってる。 だからね。誰も“私”に気がつかないで? 信じられる存在なんかいなくても大丈夫。 私は人間の神への祈りの言葉を知らないけど。 お願い。 友達なんかいらないから。 明日から学校 サイバーシックス視点*TVシリーズ第零話妄想 *** 04.『もし明日世界が滅ぶとしたら・・・』 そんな事考えてる暇があれば今日をちゃんと生きなさい あのねぇ、あたし本当は怖かったんだから。 あの変な奴らに誘拐されたとき、もしかしたら殺されるかもって思ったんだから 本当に怖かったんだから。 だからこういう時助けに来るのは王子様でナイトの役目でしょ? なのにどうしてあの女が出てくるのよ。 どうして先生が助けに来てくれないのよ。 いい?あの女はあんたの彼女であたしのライバルなんだから! そういうことで今あたしはとっても気分が悪いの。 だからエイドリアン、今のあんたのお説教なんて全然聞いてないんだから。 「ねぇ、先生」 死んだら、なんて仮定は怖くて恥ずかしくて聞けない。 だから 『もし明日世界が滅ぶとしたら・・・』 そんな事考えてる暇があれば今日をちゃんと生きなさい って、先生は両手を腰にあててお説教の続きをしだした。 「昨日のことがあったから今日は大目に見るけど……ロリ、君はまた課題やってないだろ。 P158からP172まで読んで感想をレポート用紙三枚にまとめて提出するようにって」 あーあ、これだもん。 もう、最後まで言わせてよ それからもうちょっと考えて返事してよ。 ふーんだ! あんたの彼女なんかルーカスに盗られちゃえばいいのよ。 あたし、ちゃんとルーカス先生の気持ちにだって気がついてるんだから。 顔をぷぅとふくらませたあたしを無視して教室へ戻るエイドリアンの背中にちょっとだけつぶやいて、 そして 思いっきり舌を出した。 「いーだ!!!」 そんな心配しないで、私が必ず助けるから ロリ視点*TVシリーズ第伍話後日談希望 *** 05.後悔しない人生を送ろうと思っていても 後悔しなかったことが後悔になる場合もある いつものレストランで一人パスタの山にフォークを突っ込みかき混ぜる。 食欲なんて湧かない。 全然後悔しない人生なんてありえないことだけど、推察されるこれからの長い人生の中で出来るだけ回避 したい事柄の一つがそれ。 放課後ロリに聞いた衝撃的な事実。 あのお堅い同僚に実は彼女がいて、それは自分が思いを寄せている人だった、 なんて全部信じた訳じゃないんだが。 二人が知り合いだったなんて話は初めて聞いた。 何も言わなかったからだ。 エイドリアンも サイバーシックスも。 疑問をそのまま放置して悶々とするのは好きじゃない。 どうせ『あの時ちゃんと聞けば良かった』と後悔するに決まってる。 そう思って仕事帰りのエイドリアンを捉まえて話を振ったのだが。 後悔しない人生を送ろうと思っていても 後悔しなかったことが後悔になる場合もある 今回はちょっと違った。 後悔しないようにしたことが後悔になった場合。 人付き合いの苦手なエイドリアンのことだ。本当は友人の俺に打ち明けたかったに違いない。 俺がいつも彼女の話をするから話しづらかっただけだろう。 だから俺から振れば、奴も話してくれるに違いないだろうと、思ってたんだ。 あの顔を真っ赤にしながら 打ち明けてくれたら。 俺も笑って認めてやろうと それがあれだ。 エイドリアンは肯定も否定もせず、俺の話をそらした。 タイミング云々じゃない。こいつは知っててあえて黙っていた、気に入らない。 黙っていた理由さえ話す気が無いらしい。 俺が彼女の話をする度にこいつは何を考えてた? あざ笑っていたのか? 辺りはすっかり暗くなり後ろのTVからニュースが流れてきたが、今は画面を見る気も音声を聞く気も起こらない。 カラン その時、レストランのドアが可愛らしい金属音を鳴らし、エイドリアンがこっちに向かって歩いてきた。 俺はあいつの友人だと思ってたが、あいつはそうでないらしい。 ルーカス視点*TVシリーズ第伍話中盤想像 |