見ざる

何もない休日、俺は無心になりたくて昼にもかかわらず横になっていた。暇は考えが堂々巡りになっちまう。寝ちまいたい。

静かな胸の鼓動があいつのことを忘れさせてくれない。ぼやけた日差しに切なさが込み上げる。ベッドの柔らかさがあいつの無防備や危うさのようで、思わずぎゅっ……と枕を抱きしめてしまう。

あいつの怪我を見たら治したし、怪我をしないように安全な場所に導くつもりで、いつも気にかけていた。

ある時、妙なことを言っていた。

「仗助の隠れ家、ちゃんとあるの?」

「お前、俺が囲わなきゃいけねえほど、居場所ないの?」

いつも一緒にいられたら、と少し期待した。現実的ではなかったが。

「そういう意味じゃない。仗助自身ひとりが隠れる場所があるかって話」

なんで俺が隠れなくちゃいけないんだ。

「さらされて傷つくのは私じゃない。私を見てそう思った仗助こそ、傷つけられるのが嫌なんだ」

「それは、お前の体が——」

「おばかさん」

どうしてその時に限って、あんなに穏やかで柔らかな笑顔を見てしまったのだろう。

結局、こうして今隔たりを感じて、早く会いたいとそればかりくり返して。

俺は傷ついちゃいない。ただ、俺の中のあいつが、放ってしまえば消えてしまいそうだから、食い止めないといけないんだ。
 
  ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎
 
私から言えることは、仗助、何も見てはいけないよ。見えすぎたら、こもって寝ちゃいな。ね。
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