本性の扉

仗助の手のひらが、あったかい。ふわふわと触れて、怯えをなくそうとしてくれる。空気よりも優しい手触り。

仗助の、空気よりも澄んだ無垢。どんな表情も、どんな感情も。柔らかな笑顔。いたずらを企んでる時の可愛い顔。怒った顔の鋭さや歪みすらも、いい子の証なんだ。

悲しそうな顔はあまりにも可哀想で、こっちもつられそうになる。惹きつけられたら、ずーっと見つめあうふたり以外は世界からなくなってしまう……なんてね。

見つめあって、心が痛むと体がこわばる。体は憶えてる。誰もが持つであろう寂しさを。

泣いちゃいけないって、いつからか決意した。弱さに正直になると、いずれ致命傷になる。抑圧は鎧だったのに、仗助、どうして私から外そうとするの。

蓋をしてたのに。今まで潜んでたものが全部上がってきたら。駄目なんだ。弱くない振りをしないと、踏みにじられる。誰よりも自分が自分を虐め抜きたくなる。私は駄目な奴だから、許さないって。

「おれ……白状しねーとな」

何を?

「すげー切ない気分なのによ……もっと見たい、可哀想な顔」

私は恐れを止められず、取り乱す。感情の暴走を引き出したのは、乱暴とは正反対の感触だった。

仗助。仗助がどんなに清らかでも、清められない濁りなんだ。

「もうとっくに混ざってる。隠れてたそれ、ずっと覗きたかった……潔白なんて言えねーよ」

そう、なのかなあ……。
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