悲喜交交

お前が苦しいくらいに恥を感じて、俺から顔を背けても、心底お前に惚れてる俺を信じてほしい。祈るように抱きしめる。

恥。すべてがお前の存在を嘲笑う。そういう認識の世界に、お前は生きている。心の反応が、傷つくことしかできなくなる妄想に囚われている。俺が「好き」と言って、それを幻聴だと本気で思って、いいことを、お前はぜんぶ拒絶しちまう。



「嘘つき、嘘つき、嘘つき、大好き、ごめんなさい、許さないで、ごめんなさい、恥ずかしい、恥ずかしい、怖い、罰だ、罰、嬉しい、気持ちいい、汚い、私、もっと、恐れを、ください――殺して」



お前の全部が正しいって、俺なら言えるのに。

誰も言ってくれないのなら、目の前で俺が言ってやる。お前からは、見ることも聴くこともできない、遠くて近い、目の前。俺の言葉を逃さないで、と祈る。

間違ってない。汚れてない、汚れてない。汚くなんかない。俺が、お前を生きることに繋ぎとめるから。


「嘘つき。消えるべき私なんかに。本当は構ってほしいって、本音がみっともない私なんかに――。汚く朽ちて死んでしまいたい。本当は死にたくないくせに。でも生きることもしたくない。生も死も嫌になる」



何を与えたら、幸せになる……?

じっとり湿気を帯びながら、泣きじゃくる様に、胸騒ぎがする。俺は幸せが見たいはずなのに。いつだって傷つけないようにって思ってるのに、お前はずっと怪我人みたいで。

いくら抱きしめても癒えない。誰が救えるっていうんだ。

恐れ戸惑う子供の眼差し。でも、混乱の限界に達した果ての静けさ、その時、大人びた優しい眼差し、両方持っていた。

急に穏やかにならないでくれ。消えそうだ。

おいで。――おいで。



俺も、俺もずっと泣きたかった。

もう、だめだ。死んじまうかも。もう、何もいらない。

朦朧とした表情を見て、このままずっと、こうしていたい、なんて。幸せと勘違いするなんて。――本当に勘違いなのか?

幸せって、死にたくなるんだな。

抱きしめて、微かな触れ合い、意識が痺れるような、細やかなざわめきが全身を走る。だから、ずっと、ずっと――。
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