怪夢

「仗助、恋って何?」

見つめあって、溶けてしまいそうなおれたちに、今更それを問うのか。

「おれは、恋以上のものを知りたい」

時間をかけて飴を味わうように、ずーっと唇の甘さを感じていたい。やわらかくて、かわいらしい弾力にときめいてしまう。噛みついて、いっそ食べてしまうか……。

どんなに深くつながりあっても、満たされることがない。どこまで行っても、あたたかさから置き去りにされた子供が、世界でひとりぼっち。おれのすべてを明かしても、おれがお前を食べてしまっても、報われそうにない。

身をよじって、絶望にうめく。与えた気持ちが傷を刻む。いっぱい、いっぱい、傷だらけ。好きなひとをいじめる。癒しを望み続けたおれが駄目になっていく。気持ちいい。

部屋は暗さを増して、不気味な気配が近づいてくる。重苦しい快感が、肌の上を蛇行して這う。寂しさへの恐れが、するするどこかへ抜けていく。

(どん底が見えてきた……)

「なあ、『助けて』って言わねえの?」

あと少しで、純粋になる。

「殺して——仗助の『最悪のひと』になりたい!」
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