過剰

おれたちはふたりだから寂しい。目の前にいるのに。こんなにくっついてるのに。

いちばんの本音があらわになると、おれたちは泣くことしかできなくなる。どうして?

「仗助……こうするたびにね、『ずっと会いたかった』って思うの。いっしょにいたのにね」

やっと「会えた」のに、その笑顔は苦しそうに見える。その表情にそっと手を添えて安心させたいのに、おれも余裕がなくて指先がおびえてしまう。

「私……助けてほしかった。私が今まで隠してたダメなところ、仗助はえぐろうとしないで、まるで手当てするように大事にしてくれた」

だって、痛いのは誰だって嫌だろ?

「仗助も痛いんだね……」

おれが?

「もう助からなくていいね。仗助はどうする?」

涙のせいで何もかもはっきり見えない。意識もぼやけて、にじんで、おれがお前の心になっちまいそう……。苦しいのに離れられない。きっと、痛みも苦しみも、まだ取り除きたいと執着している。

「おれは、助かりたい」

「きみなら大丈夫」

「ふたりがいい」

「そもそもね、私は大袈裟に演じているだけ……」

「——?」

「全部気のせいだよ。辛いことも、今みたいな幸せも。私みたいなやつにこんなドラマ似合わない」

「でも泣いてるぜ」

「きみの前では女優気取りでいさせてよ」

何が本当かわからない。少なくとも、おれは切ない。

置き去りにして隠していた自身が互いに引っ張り出される。こんなに弱かったなんて——。苦しい。鼓動と息の乱れに耐えかねて、助けてほしいと音を上げる。唇に血がにじむほど噛みしめる。何かが怖い。

ひとりにしないで。大事なものほどなくなる気配がする。欠けた、壊れた、元に戻したい。砕かれた残骸を見て、いつも可哀想だと思った。おれ自身が悲しんだのをなかったことにして、直すと意気込んだ。

おれは、おれ自身が壊れてしまうのが怖い。涙、嗚咽、血、痛み、悲しい気持ちがこんなに激しいのに、ここはとても静かだ。

「仗助、やっぱり心中する?」

答えたくない。ずっとしがみついていたい。はなしたくない。
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