負傷

仗助に近づきたい。触れたい。幼さを残す頬を傷つけないように、指先は怖気づいて、手のひらで包んでも冷え切っていて、くちとくちが重なっても実体のないかんじ……。

最低だ。反吐が出る。みじめな気持ち。

そこにいるのに、虚しい。澄んでいるから、希薄なんだ。重さも痛みもありゃしない。私には私を虐めるドス黒い濁りが必要。

どうして怪我を負うのが仗助の方なの? その怪我を、全部、全部、私に与えてほしい。仗助のことが好きだとか関係ない。それ以上に重要なのは私が私を嫌う。だから傷がほしい。

でも、何度も何度も嫌っても、ほら、今だって私は自分のことばかり。嫌うことが結局自分を大切にしてしまうのね。

なぜか癒えてしまう傷。仗助といると、いつも。

せめて悲しくいさせて。最後には絶望をちょうだい。すべての怪我を引き受けて、私だけが消えたい。

「できっかよ、おめーのような小物によぉ……」

優しすぎて、抱きしめられても感触がないみたい。確かなのは、苦しさ、そして悦び、両方あること。
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