黒歴史アーカイブ

私と接触する世界の全てが、私の心を挫こうとする。そんな時に、仗助は私を抱きしめて隠してくれる。ここにいれば、私の存在に意味なんて無くていいと思える。

この世の全てから叱られて、全ての痛みを感じる。私が間違っているから。ならば仗助にしがみつく。仗助からの痛みを一番感じられるように。

仗助は乱暴しても私を被害者にしない。叱ってほしい。私の心が、どこまでも挫けてしまうように。傷つけてほしい。

外の喧騒、物音のノイズ、狂人の興奮、子供が泣きわめく幻聴がする。仗助は安心させようと抱きしめてくれる。そんな優しさに私の身はさらにこわばる。どこまでも苦しくなる。どこまでも不安になる。甘さに全部グズグズに崩されてしまう。うっとりして、同時にものすごくこわい。その恐れや苦しみをむしろ望んでいる。積み重なった恐れがすべて仗助と私に流れ込んでぐちゃぐちゃになる。べったり密着して抱き合って、互いに甘えて、病んだ眼差しが見つめ合ったり、虚を見たり。

流れ込んだ激しさに、仗助は目から大粒の涙をぼろぼろ零して、くちを噛みしめる。互いがくっつくほど取り残されそうになるのが怖いらしい。自分を痛めつけるな、と切なく声を絞り出す姿は、私よりも切羽詰まっている。か弱い子供の頬擦り。柔らかさが心臓を包む。視界がぼやける。荒れた息遣い。震え。だけど、激しさは静けさに殺される、殺されてしまう。

この上ない輝きを放つ心。こんなに輝いてるのに、まったく鋭い光じゃない。こんなに透き通ってるのに、どうして血の滲みを感じるの。

怪我を見るのも、怪我をするのも怖かった。気がつけば傷だらけだった。でももう治らなくていい。壊したい。自分を引っ叩きたい。

私が自分に向ける罵倒は混じり気のない明晰な意志。罵倒こそが私の唯一気高い行為かもしれない。正しいことをしている気になる。私に正しさなんてどこにもないのだけど。

仗助の気高い慈悲。ちゃんと受け取りたかったけど、できなくて、何重にも罰当たり。

私はどうしようもなく愚かだから、虐めるなり見捨てるなり、それでいい。仗助、耐え難い別れがほしい。別れには凶暴な蔑みの表情を見せてほしい。別れを甘美なものにするために、たくさん、たくさん、泣いて、謝って、頭をぶっ壊して、わざと悪いことをして、仗助に必死にしがみつく。

もう二度と目覚めないような「おやすみ」を仗助に言いたい。



朝が来る。目覚めた横でまた会えたと、仗助は安堵の表情を見せるのだけど、陰りがある。おはよう。窓の外の空気も穏やかで、ただの平和な一日が今日も繰り返される。そう思ってもいないのに、幸せなまどろみを演じてみせるのも、愛したいという互いの気持ち。

おはよう。ごめんなさい。
2/3ページ
スキ