成り代わり夏目は石世界で生きる

成り代わり夏目は石世界で生きる!の続きです

夏目貴志女体化成り代わりしているので地雷の方は観覧注意です。
 
夏目友人帳とdcstのクロスオーバーです。

コロコロ視点変わります。
オリジナル妖が名前のみ登場します。(ユキノメ)

  
***
 

『石神』
「あ?」
『ここは、——いやこの世界は一体何なんだ…?』
「全人類が石化して文明が滅びた世界だ。今は3700年後だ」
『そうなのか、…………は、?』
ありえない。そんな時間が経っているはずがない。あれから3700年も経っているのか?では、塔子さん、滋さん、北本、西村、田沼や多軌は――?。
無事なのだろうか?一瞬で、胸の奥が冷えていく。
先程まで私は石化していた。…もしかしたら、とそんな最悪な想像までしてしまう。
 
「おい、顔色悪くねぇか…?」
心配そうに私の顔を覗き込む、額にハチマキを巻いている青年。
『……いや、大丈夫だ』
塔子さん達の元へ行かないと…!!立ち上がった瞬間、ふらりと視界が揺れる。
 
「おい?どこ行くんだ!?」
『家に帰らないと…!!』
 
「おい、待て!」
石神に後ろから伸びた腕に軽く肩を押さえられる。
『……離してくれ。今すぐ行かないといけないんだ』
「行く?どこにだ。地図もねぇのにか」
淡々とした声。けれど押さえる力は思ったよりも強い。振り払えないまま、息が詰まる。
『家だ。大切な家族がいる』
「3700年後の世界に家がそのまま残ってる可能性はゼロだと思っとけよ」
その一言が、胸の奥に沈む。わかっている。頭では理解している。それでも、確かめずにはいられないんだ。
「そこまで行くっつうなら聞くが、家はどこだ?」
『熊本だ』
「……は?徒歩で行く気か?車も電車もねぇのにどうやって行くつもりだ?」
『……それは、』
まさかニャンコ先生の背に乗ってここから熊本まで行くだなんて言えるわけがなかった。




 

 
『ニャンコ先生』
「なんだ?夏目」
『塔子さん達は無事だと思うか?』
「フン、あっちには中級達やヒノエや三篠だっている」
『!』
親しい妖たちが夏目の家族や友人のために駆け回る姿は、どうしても想像できなかった。それでも、張り詰めていた心だけは、ゆっくりと落ち着きを取り戻していった。








 
  
『ありがとう。これはわたあめか?』
「うん!千空が作ったから食べてほし、————って、ポン太に食べられちゃってるんだよ!?!?」
スイカから受け取ったわたあめを眺める間もなく、肩の定位置に丸まっていたニャンコ先生が素早く身を乗り出す。制止する暇もなく、ふわふわのわたあめはその小さな口へ吸い込まれ、あっという間に跡形もなく消えてしまった
「にゃん」
『こら!にゃんじゃない!!!ニャンコ先生!!…………ポン太?」
「うん!ポン太なんだよ!」
『…スイカは、田沼と同じ呼び方するんだな』
「タヌマ?誰なんだよ…?」
独り言のつもりで呟いていたのがスイカに聞こえていたようで首をかしげている。
『ああ、……私の友人だよ』
そう微笑めば、スイカは、眉を下げ不安そうに私を見つめる。
「………夏目、寂しそうなんだよ…!」
『ああ……懐かしくなっただけだよ』
心配をかけるつもりはなかった。 みんなとの思い出は大切だからこそ、時折こうして思い出してしまうのだ。それだけのことだ。
 
わたあめを食べ、満足したのか私の肩から飛び降りた先生。
「待つんだよ、ポン太ー!」
「にゃーん!」
追いかけるスイカとそれをひらりひらりとかわして逃げ回る先生。スイカの楽しそうな様子に思わず頬が緩む。

  
 
「夏目」
『どうしたんだ? コハク』
「……"友人"を思い出していたのか?」
『……ああ。少しな』
「大切な友なのだな」
『そうだな。私には大切な人がたくさんいる。その一人だよ』
「そうか」
コハクは短く頷き、スイカたちへ視線を向けた。
「その者も、スイカの様なのか?」
田沼がスイカと同じようにスイカの被り物をかぶっている姿を想像してしまい、思わず吹き出してしまう。
『っふ、はは、!……いや、ニャンコ先生のことを"ポン太"って同じ呼び方していたから、つい思い出してしまったんだ』
「ふふっ。では、夏目の友人とスイカは気が合いそうだな!」
「そうだな」




 
***
居住させてもらっている、科学王国こと石神村では、この原始時代ではありえないモノを作りあげた。—————ケータイだ。

本来使用するには二台必要なのだが、コードを伸ばしせば電話として通じるようだ。
「それじゃあ、やってみるか」
そんな流れで、私達はこの時代では誰も経験したことのない通話をすることになった。
額にハチマキを巻いている青年——クロムと石神村の巫女——ルリが通話をする。無事に通話相手の声が聞こえ、成功したことを喜ぶ面々。


  
ふと、石神の耳に、ルリの小さな呟きが届く
「まるでスピーカーですね」
「ルリ。テメー今なんつった?"まるでスピーカー"?」 
「いえ、あの。スピーカーって蜂の種類の名前では……??」
「どうしてそうなった!?」
「石神村に伝わる百物語其之14。スピーカーというおしゃべりが大好きな蜂がいました。スピーカーは墓石き針を刺すと、死者の声をしゃべることができたのです」


 
 

「…なんとも白夜らしいな」
『!、……ニャンコ先生、石神のお父さんと知り合いなのか!?』
私とニャンコ先生は小声で会話をする。
「ああ。夏目、お前が石化していた頃、ワタシがあやつらの用心棒をしてやっていたのだ!!」 
『先生、どうして黙ってたんだ!?』
「聞かれなかったからだ。それに、わざわざ言うような話でもなかろう。……それより石神の小僧のところへ行ってやらんのか?。今から白夜の墓標とやらへ向かうようだがな」
『!、それを早く言ってくれ!先生!!』
 私はニャンコ先生を胸に抱きかかえ、その言葉を合図に小走りで目的地へと駆け出した。

遅れてその場に辿り着いたとき、石神のお父さん——白夜さんの墓石は、タイムカプセルとなっていたようで。表面を破壊すれば、銀色の塊を覆っており、アルミホイルでガードされていたようだった。そして塩酸で洗われ、現れたのはビンの底を加工して作られた“レコード”だった。

「その円盤に俺の親父たちの声が入ってる。わざわざ音にまでして、何残したのか。唆らねぇもんだったらブチ殺すぞあの親父。とっくに死んでっけどな」

『…(もし、先生もその場にいたのならレコードに声が入ってたりしないよ、な…!?)』

***



  
星空が澄み切った静かな夜。天文台には、ただ一人、石神千空の姿があった。ふと足元の影がわずかに動くのを感じた。千空が視線だけを落とすと、そこには転校生——夏目のペットである丸々としたタヌキのような生き物が居座っている。見た目は普通のタヌキとは少し違っていて、どこか偉そうで、こちらをじっと観察しているような雰囲気がある

「……あぁ? 夏目のとこのタヌキじゃねぇか」
千空は眉ひとつ動かさず、珍しいものを見つけたみたいに静かにつぶやいた

その言葉に、猫──正確には妖であるニャンコ先生はぴくりと耳を動かした。
「誰がタヌキだ、小僧」
低く渋い声が響く。ニャンコ先生は丸い体をゆらしながら、気に入らないと言わんばかりに鼻を鳴らした

「………………はあ!?!?タヌキが喋るとかどういう原理だよ???」
ありえない現象を目の当たりにしたかのように、千空はニャンコ先生をまじまじと見つめている。
「だから違うと言っているだろう!わたしはタヌキではない、ニャンコ先生だ!…………まったく、親子そろって失礼なことを言いおって」
「!……おいテメー今なんつった?」
千空の目が鋭く細まる。
――今、この化け狸は"親子そろって"と言ったか?
「お前、……白夜の息子だな?」
ニャンコ先生は千空をじろりと眺め、口の端をわずかに吊り上げる。その表情には、確信めいていた。
「ああ……。何でテメーは白夜を知ってる?」  
「フン、…………にゃあおーん」
「あ?テメー何急に猫のフリしてんだ」
「にゃーん」
「………せ、千空ちゃん?今千空ちゃんと聞いたことないおじさんの声したんだけど……千空ちゃん一人だけ??」
「あ?この化け狸が……!!————、ハァ、なんでもねぇよ」
「化け狸って!?、夏目ちゃんが連れてる、えーと確かニャンコ先生だったっけ?」
「にゃおん」
「で、…………何の用だ?」 
「やー、純粋まっすぐちゃんたちに聞かれたくなくてさ、金狼ちゃんやコクヨウちゃんや」
「ククク、その時点でロクな策じゃ無さそうだ」
「いい読み〜必よ——————」
「………その前にテメーは飼い主の元へ帰りやがれ??」
「にゃおーん?」
「テメー…!!」
ニャンコ先生は「何のことだ?」と言わんばかりに首を傾げる。そのわざとらしさに、千空のこめかみにぴくりと青筋が浮かんだ。
「え??千空ちゃん…??別にニャンコちゃんは、ちょ、そんな猫相手にムキになりすぎじゃ……!?」
あまりの剣幕にゲンは目を丸くする。ニャンコちゃんはただのネコにしか見えず、千空がそこまで警戒する理由がさっぱり理解できなかった。
***





  
科学王国にはとても美しい女性がいる。
白銀の髪は月の光を浴びているように淡く輝き、緑色の瞳は静かな湖のように澄んでいた。その目には優しさと強さが同時に宿っていて、どこか寂しさも感じさせる。見つめられると、心の奥まで見透かされてしまうような気がした。
顔立ちは整っていて、細い眉やすっと通った鼻筋が印象的だった。ふとしたときに見せる笑顔は春の日差しのようにあたたかく、見る人の気持ちをやさしく和らげた。




   
ある夜のことだった。
静まり返った夜気の中、不意に耳へ届いたのは、かすかな話し声だった。
『――――……、――――……』
誰かと言葉を交わしているようなその声に導かれるように、羽京は音のする方へと足を進める。


やがて視界が開けた先にいたのは、夏目一人だけだった。
『我を守りし者、その名を示せ』
静かでやさしい声が夜に溶けていく。夏目がいつも持ち歩いている古い紙の束を静かにパラパラと勝手に開く

『——ユキノメ』
夏目はその中から一枚を選び取り、
『君へ返そう』
紙片をそっと口元に運ぶ。
『受けてくれ』
静かにそう告げると夏目はその名に向かってそっと息を吹きかけた。
 
すると、その紙は淡い光を放ち、細かい光の粒となって夜空へと舞い上がった。あたりはやわらかな光に包まれ、まるで夢の中のような景色だった。
その光景を見て、羽京は思わず息をのんだ。

 

 
声をかけようと思えばきっとできたはずだった。
なぜだかその場の空気をこわしてはいけない気がした。一歩も動けず、ただ静かに見つめることしかできなかった。あの夜に見た幻想的な光景は、羽京の心に深く残り続けた。

——————羽京はその美しい光景を忘れることができない
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