迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい
「おお、アリババ。随分2人を鍛えてくれたみたいだな」
『えへへ…2人とも頑張ってたよ』
照れるなぁ〜と笑みを浮かべていれば、「いやあれ褒めてねぇだろ!?」とクロムが騒いでいるのが聞こえる。
「おい。チビテメーも手伝え」
『あら、…スイカちゃん呼ばれてるよ?』
「スイカは手伝ってるんだよ?」
「テメーだよ!チビババ!!」
『は?私??これでも155cmあるんですけど!?』
いやいやそこまで低くないんですけど!?というかチビババってなんか腹立つな!?
はぁ、とため息をつきながら千空の傍に近づけばガラスを磨くのを手伝わされた。この人、人使い荒いなぁ……。
そうして出来上がったガラスをスイカちゃんの被り物にはめて、完成し、ひまわり畑までやってきた。
「スイカ、テメーの目の前に今何があるか見えてっか?」
「フツーにひまわりだよ?別に見えてないわけじゃないんだよ、スイカだって……」
そっと上から被り物を被せる千空。
感動したようにひまわりを見つめるスイカちゃん。かぶりものの中では今頃大号泣だろう。
『…………優しいんだな、千空って』
ぽつりと零した言葉に、千空がちらりとこちらを見る。
「は?」
『だって、スイカちゃんのために眼鏡作ったんでしょ?』
「勘違いしてんじゃねぇ。必要だったから作っただけだ」
『そっか』
この人素直じゃないよな。一人でくすりと笑みを浮かべる。
「アリババってお姫様みたいに可愛いんだよ!…千空もクロムも意外とかっこ良かったんだね!」
「意外とってなんだよクソ」
『わ、私がお姫様?……ああそういえば王宮にいた頃じゃじゃ馬姫って影で呼ばれてたなぁ』
「ククク王国の労働力パワーアップだな。ガラス器具でガンガン薬品作んぞ!!………………王宮?」
「労働力言うな!いい話でまとめとけよ!…って、どうしたんだよ?千空」
驚いた様子で私を見つめる千空。
「アリババ、テメー…………王宮にいたってどういう事だ?」
「え?アリババって姫かなんかだったのか!?」
『あー………うん。元だけどね』
私ってばいつの間にか独り言呟いてたのか。うわ、次から気をつけよう。
「あ"ー、だから所作が綺麗なのか」
『え?』
所作が綺麗だなんて初めて言われた。驚愕してしまい千空の顔を2度見してしまった。
「すごいんだよ!アリババって本当にお姫様なんだよ!!」
『あはは』
原作でアリババが教育を受けていたことも習ったが、花嫁修業もどきみたいなことやらされたりもしたなぁー。
スラム育ちって知ったらまたうるさくなりそうだからとりあえず黙っとこー。
「ククク楽しいガラス細工教室のスタートだ!」
「おうガンッガン作ってこうぜ!!」
もこもこと白い泡がでてきたのを見て、スイカちゃんは「わーなんか白い泡みたいなの出てきたんだよ?」と千空に質問している。
「黒曜石炙ると枠く発砲体だ。…これを断熱材にしてガラスの整形窯を作る」
窯作るの大変そうだな。
「あとは鉄のストローでガラスを吹いて膨らますだけだ…!!」
ぷくりと膨らませるクロム。どうなるんだろうか?と観察していれば完成したのは……
『なんかすごい形だな。ドクロ巻いてるというかなんというか…』
「クククまぁ最初はこんなもんだ土器ん時もまともなもん作んのに何ヶ月もかかった」
「何ヶ月!!あんま悠長にしちゃいらんねぇぜ」
「ルリ姉の容態も心配だしな」
「ガラス職人じゃねぇんだトライ&エラーしかねえだろ」
「職人…??」
クロムの職人の知り合いでもいるのだろうか…?
彼は村の方へと走っていってしまった。そうしてすぐ戻ってきたクロムは、人質かなんか連れてきたのか縄でグルグル巻きにされたおじいさんとセットで戻ってきた。
『……クロム、お年寄りの方は大切に扱わないと!!』
「む……こらやめんかクロム!!」
千空の顔が、だれだのこのジジィって顔してるよ。この人本当めちゃくちゃ顔に出るタイプだよね。
「頼むぜカセキのじいさん!あんたの職人技借りてぇんだ!」
「荒縄で人を縛り変態プレーがお主のモノの頼み方か?ワシは妖しい術のたぐいは一切手伝わんぞ!」
「ホラ、そう言って来てくんねぇからよ〜」
「カセキ爺ちゃんスイカはうっかりしてうるし返し忘れてたんだよ」
「おおそういえば」
「爺さんあんたが作ったのか?この年季もんのご立派な盾。鉄の道具も染料もロクにねぇ環境でよ」
そう言う千空は、コハクの身に付けている盾のことを質問しているようだ。確かに私も気になってた、この盾。ちょっと素敵だな、なんて思って見てた。
「ああ、元はコハクの父コクヨウが御前試合で優勝した時贈った物でな、ワシもけっこうガッツいれて作っちゃったのめっちゃ懐かしいの〜」
「…」
「文明の割に工作技術がクッソ高ぇから腕の立つ職人がいんじゃねぇかと思ってたがこんなヨボヨボの爺さんとはな……そこのすげぇ吊り橋もあんたの仕事か!」
「ああ、そうじゃ勝手に板はがしおって!主らに協力など絶対に……!?こ、この透明な石細工は……??」
先程クロムが作成していたガラス細工を見て驚いているカセキのおじいさん。背後に悪い顔してる人達がいまーす
「手伝いたくねぇならねぇでいい。ちーっとそこで眺めてやがれ、面白ぇもん見してやる……カセキあんたにとっちゃ100億%——唆るぜこれは!!」
『……千空のやつ煽ってやがる』
クロムと千空の作りあげているガラス細工の様子を見てソワソワしているようだ。
「ククク。モノづくり一筋の男がよ、ガラス細工なんつうヨダレ垂れまくるもん目の前にして、大人しく座ってられるわきゃあねぇよなぁ??カセキの爺さんよ……!」
そうしてカセキのおじいさんは、縄を、ブチブチと筋肉の力で縄をほどき、ムキムキのマッチョ姿で「ワシに造(や)らせろ」と言い、初めてみるガラス細工を使って、フラスコを完成させていた。
「いつの時代にといるってこった、黙って人生仕事に捧げて生きてきた、ホンモノのウデのオッサンがな」
そうして科学研究室(ラボ)を作り上げた。
科学研究室の入口で立ち止まる千空。チラリと表情を覗き込めば、なにかを思い出している、懐かしんでいる表情を浮かべている。
「おうなんだどうしたよ千空!ついにラボゲットしたんだぜ!もっと喜べよ!!」
「ああ、めでたいめでたい」
——こっからが化学の夜明けだ。いよいよ豪華になってきたじゃねぇか。司ランドよりか100億倍楽しいアトラクションがいっぱいの科学王国がよ…!!!
化学研究室を作り上げ、私は金狼と銀狼の元へと戻る。
「いいなぁ妖術チームはなんかキラキラ楽しそうで、僕らだってさぁ…」
『…』
「ねぇ、金狼もしもだよお?この槍先ガ、キラッキラに光ってたら目がボヤボヤ病の金狼でも間合いがつかみやすくて練習になると思わない?」
「……?何を言ってるんだ銀狼貴様」
『え、金狼って目悪かったんだ!?………だから距離感を掴めていなかったのか』
アリババは思わず顎に手を当てて考えてしまう。
「……千空達には言うなよ」
『ん?うん』
「あれぇー!?そういえばキラキラ光るといえばホラぁ金の槍と銀の槍!!やっぱりいるんじゃないの~??あくまでも御前試合に勝つためにね??絶対いるよねこれ~!?」
そう言う銀狼を黙って見つめた金狼は二人してがしっと手を組んだ。
『……あ、行くんだね!?』
後ろから二人についていく。
「……あ"??」
小声でコハクと会話している千空。
きっと、闘うのに金の槍と銀の槍を作る必要性があるのか問いているのだろう。
「ほらぁこんなにいっぱい!ガラスだっけ??すごい研究室もできたし、銀の槍とか作れるんじゃないかな~って」
「ククク、そ~うだガラス容器ができた今、いよいよ万能薬の最難関素材!腹くくって取りに行くしかねぇわなぁ……おし、銀の槍だけ作ってやる」
私はそっと、ショックを受けている様子の金狼を慰める。
『金狼……いずれ作ってもらえるから大丈夫だよ。…きっと』
「やぁあああゴメンねぇ~~金狼!僕ってホラ可愛がられるタイプでさぁ」
『いや、どこが???……あ、やべ心の声が』
「ひ、ひどいよう!アリババちゃん!!」
「ククク、1mmも可愛かねぇよバカ。代金は文字通り死ぬほど高ぇぞ銀狼。…まじで即死もある、危険度MAXエリアでテメーの命を張ってもらう!!!」
「へ???」
