迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい




「スイカの目はねボヤボヤ病なんだよ。ボンヤリしか見えなくてムリヤリ見ようとしてこんな風になっちゃうのが、恥ずかしいんだよ…」
『……あらら』
「でもこのマスク被ってるとなんでかちょびっとだけ見やすいんだよ、」
「あ"ーピンボール効果ってやつな。穴から覗いて光を狭めりやぁ、まぁ多少はピンボケが減るっつう理屈だ」
「そのスイカのボヤボヤ病がガラスと関係あんのかよ?」
「100億%ありまくるわ。…良く聞けスイカテメーはなド近眼だ!それは病気じゃねぇ、欠陥でもねぇ、科学文明の世界じゃ誰一人気にもしねぇ、ガラスで作る科学の目。眼鏡ってのが全てを解決する…!!」

「科学使いって、目まで作れちゃうんだ?すごすぎるんだよ…」
「ああ」
「スイカだって本当はね一度でいいからキレイな世界見てみたいんだよ。ボヤボヤじゃないみんなに。本当のみんなに。一度でいいから会ってみたいんだよ…!!」
「おう、作ってやろうじゃねぇか!ガラスってやつをよ!」
「ああ、何を集めればいいんだ、千空…!?」




 


 
『いってらっしゃい!』
「…アリババ、おまえついて行かないのか?」
「いや、私は銀狼と金狼を鍛えるのを手伝う役目があるから!」
「ああ、そうだったな、……すまない千空、スイカ。行く前に私とアリババで手合わせしてもいいか?」
「ああ」
 私が行かないと言えば、ついてこないの?と四人ともキョトンとした表情を浮かべていた。
 ………………ん?コハクと私で手合わせするの!?!?











 





***





アリババの剣術はすさまじかった。 
見たこともない構えだった。左手を背中へ回し、右手に握られた短剣はまっすぐコハクを捉えている。

コハクは石槍を構え、慎重に間合いを測る。
「短剣……? あの長さで私の槍と戦うつもりか」
どう考えてもアリババが不利だろう。
槍の方がはるかに間合いが長い。
しかし、アリババの落ち着き払った表情を見ていると、そんな理屈が通用する気がしなかった。
先に動いたのは私だった。
鋭い踏み込みとともに槍を突き出す。
「はっ!」
一直線の刺突。
だが次の瞬間、アリババの姿が視界から消えた。
「なっ――!」
アリババは槍の穂先を紙一重でかわしながら、半歩だけ斜め前へ滑り込んでいた。
キィンと短剣と槍がぶつかり合う音がする。
コハクは反射的に槍を引き戻して防ぐ。
だが衝撃は軽かった。
斬るための一撃ではない。
体勢を崩すための一撃だった。
気づいた時には、アリババはすでに反対側へ回り込んでいる。
「速い!」
コハクは槍を振り回し、距離を取ろうとした。
しかしアリババは離れない。
まるで影のようにまとわりつき、短剣を次々と繰り出す。首。肩。脇腹。手首。
急所ばかりを狙った鋭い連撃。
コハクは必死に槍を操って防ぐが、防戦一方だった。



 
「アリババのやつ相当強いじゃねぇか!?」
「アリババってばすごいんだよ!!」

なんだこれは…剣術じゃない……!  
そう感じた。
まるで踊るような動き。
無駄な力が一切ない。
相手の死角へ滑り込み、最短距離で刃を走らせる。
コハクは大きく後ろへ跳び、ようやく距離を取った。
肩で息をする。
一方のアリババは乱れた様子もない。
短剣をくるりと回し、静かに構え直した。
『すごいな。』
アリババが笑う。
『今の攻撃を全部防ぐなんて…』
コハクも口元を吊り上げた。
「お前こそだ。あんな剣術、見たことがない。」
私達が同時に動き出そうとすれば、クロムが二人の間にすっと割って入る、片手をひらりと上げた。
「そ、そこまでだ!!!手合わせは終了!!!」
コハクの石槍の穂先が止まり、アリババの短剣もぴたりと動きを止める

「まだ決着はついていないぞ。」
思わず眉をひそめてしまう
「だからだよ。決着がつくまでやらせたら、夕方になっちまうだろうが」 
クロムはアリババとコハクを交互に見た。
「アリババ…!!お前あのコハクと互角って相当強いな…!?」
『あ、ありがとうな』
アリババは、その言葉に照れたように首の後ろをかき、笑みを浮かべている。そして私は槍を下ろせば、アリババも短剣を鞘へ収めた。

 
『コハク』
「なんだ?」
『私が金狼達の相手をして怪我しないか心配で手合わせしてくたんだよな?』
「!、…ああ、当然だ」
『ありがとう。……コハク達が戻ってくるまで金狼と銀狼を鍛えあげとくから安心してくれよ!』
 にこりと先程の手合わせの時に見せた鋭い表情とはまるで違う、純粋な笑みを向けられる。
その顔を見ていると、なんだか毒気を抜かれてしまう。 つい先程まで、あれほど恐ろしい剣技を見せていた彼女と同一人物とは思えなかった。

「……ふっ」
 思わず小さく笑みが漏れる。
「お前は変なやつだな。」
『そうか?』
「戦う時は獣のようだというのに、今は子供のような顔をする。」
アリババはきょとんとした後、ふはは、と楽しそうな笑みを浮かべる。
『よく言われる』
その様子に、コハクは肩の力を抜いて笑った。












『よし、…コハクの代わりに私があなた達の手合わせの手伝いをしに来ました!アリババです!よろしくお願いします!!』 
「金狼だ」
「僕は銀狼だよ。…えーと、アリババちゃんって強いの?」
『……大体コハクと同じくらいかな?』
「えっ!?アリババちゃんひ弱そうに見えるのに!?そんなに強いの?」
『…………私って弱そうに見える?』
 それは初めて言われたなぁ。白龍には"何であんたみたいなヤツが強いんだよ!自分の国ほっぽってシンドリアでのんびりしてるようなヤツが!!"って言われたけどなぁ。あれはちょっと傷ついた。
「うん。背とかも低いし、な、なんか全体的にふわふわしてるし……!!」
ふわふわ?太ってるってこと???確かにアリババの弱点は太りやすいことですけどなにか文句ある???22歳の女性に太ってるは禁句だと思うんだよなぁー?
「お、おい銀狼!?」
『ふーんそっか。じゃあまずは銀狼から始めよっか。お手合わせよろしくね?』
 





 
あの後、金狼と銀狼は地獄を見た。
『まだまだぁ』
槍を振るうアリババの声が響く。

「うわっ!?」
「銀狼、右だ!」
「分かってるよ!」
 二人は必死に攻撃を受け流す。

最初は「弱そう」と思っていた。それは完全な勘違いだった。

アリババの動きは速い。そして何より無駄がない。
気付けば攻撃を受け流されており、喉元に突きつけられる。

『はい、一本!』
「またぁ!?」
銀狼が悲鳴を上げる 
しかしアリババは不思議そうに首を傾げた。
『え?まだ十回くらいじゃない?』
「十分多いよ!!」
銀狼の抗議にアリババは「あはは」と笑った。
 『でも二人ともすごく上達してるよ?最初より全然動けてるし』
「そ、それは嬉しいけど……」
「問題はアリババが全然疲れてないことだろ…」
銀狼が地面に倒れ込み、金狼もその隣に座り込んだ。

 アリババは額にうっすら汗を浮かべている程度だ。
『そうか?結構汗かいたけどなぁ』

「嘘だろ…」
「コハクちゃんと同じくらいって本当だったんだね……」
銀狼が呆然と呟く。

 アリババは少し考えてから苦笑いを浮かべる。
『まあ、昔はもっと強い人たちに囲まれてたから』
マギであったアラジン。強靭な脚力持つファナリスであるモルジアナ。理不尽なほど強かったシンドバッドさん。

そんな面々と比べれば、自分などまだまだだと思っている。

だからこそ、金狼と銀狼の反応が少し新鮮に感じてしまった。
「アリババちゃんってさ」
『ん?』
「本当に強かったんだね」
銀狼が素直に言う。

『ありがとう。…でもさ』
「?」
『強い弱いよりも、一番大事なのは諦めないことだよ』
そう言って二人の前にしゃがみ込む。
『二人とも何回倒されても立ち上がったでしょ?それってすごいことなんだからな?』
金狼と銀狼は顔を見合わせた。

そして同時に笑う。
「へへっ」
「はっ」


『でしょ?』
アリババは立ち上がり、にっこりと笑った。
『じゃあ休憩終わったらもう十本いこうか!』
「「ええええええっ!?」」
2人の悲鳴が響きわたる。
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