迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい

「…千空ちゃんVS司ちゃんでどっち勝たした方がオイシイのかな~?俺はそこしか興味ないからさ」

白菜のようなネギのような特徴的な髪型をしている彼は"千空"と呼ばれている。
「こっちにはいけてる科学アイテムとかラーメンなんかはあるけどまぁ仕事は地獄すぎてドイヒーだよね。逆に司ちゃん帝国は科学とかないしご飯はシンプルだけどね。仕事は楽だよ。それでアイドルとか復活させれば夢のハーレム生活」
「ハーレムって何?」
「ああごめん。子供はまだ知らなくていいんだ」
『うわぁ…』
 うわぁ、なんかすごいなこの人…。
「スイカは絶対ラーメンのがいいと思うんだよ!」
 え、あの子スイカちゃんって言うんだ。スイカの帽子被ってるもんね。
「うーんラーメンもいいんだけどねこう暑いとねぇ何だかんだ、司ちゃん推しに傾くかな」

「あさぎりゲンと言ったか、貴様のような薄っぺらで身勝手な男はやはり殺すか幽閉すべきだ」
 黙って話を聞いていた、女の子(先程私とあさぎりさんに武器を向けてきたうちの一人)が、武器を持ち、あさぎりの元へ寄る。
「いや、怖っ!?」
 
「……いや、こいつ帰さなかったら司本人降臨でソッコー詰みだろうが」
『…(千空さん、やっぱ頭の回転速いなぁ)』
「クフッ安心しまくれ。素敵すぎるニューアイテム鉄を使って今から作るもん見たら100億%科学王国に入りたくなっからよ」
「ああ、なんだろ刀とか作っちゃう?」
「発電所」
「発電所!?ジーマーで言っちゃってんの?いや無理ゲーすぎるでしょ」
『発電所…!?こんな原始的な世界で作れるもんなんですか…???』
「いやどう考えても無理でしょ!?」
『で、ですよね…』
 そんな私たちを置いて、千空さんは科学倉庫へ移動した。

「なんだ?自然銅あんじゃねぇか」
「それ綺麗だから壊したくねえまんだよな~」
「溶かして銅線にすんぞ」
「聞いちゃいねぇよクッソ」

「あとは雷さえ来てくれりゃ—」

 千空さんがそう呟けば、雷がゴロゴロと上空から鳴り響く。
「本当にきちゃったんだよ」
「ハ!確かに雷の季節だが」
「ラッキーすぎんだろ」
「逆だバカ!最悪のパターンだ。まだ1ミリも準備してねえときによ」
 
『ジュダルがいればいつでも雷なんて……!、あ、そっか、もう魔法使えないんだった』
というかね、そもそも魔法使えたとしてもジュダルのやつが言うこと聞くわけないんだよなぁ~。

「まさかの雷発電?」
「ねぇよそんなもん」
「だよねぇ」
「磁石だ。磁石さえありゃ、発電機ができる」
「磁石なら砂鉄とったのが、あるんだよ」
「天然もんじゃパワーが話にならねぇ」
「鉄の棒に雷落としてハイパワー磁石を科学の力で自作すんだよ」
「避雷針アホほど立てて待つつもりだったがな、このチャンスをスルーはねぇよ、超即効で準備する!!—ああ、文字通りの電光石火だ」

 
「——銅を溶かす。コハクの盾に漆が塗られてる。村のどっかにあるはずだ!」
 そう言うとスイカちゃんが漆が借りてきてくれた。
「漆の絶縁体性能は半端じゃねぇ、鉄の棒に塗りたくれ!」
 そう言えば、千空さんは漆を鉄の棒に塗っている。
「なにを…」
一体何をするのだろうか…。
 千空さんは橋の板を1個拝借し、
 板に溝を彫るのを金髪の女性、コハクさんに指示をしていた。
『橋の板で何を…?、…………ああ、そういうことか…!』
「アリババちゃん?そういうことって…?」
『アリババちゃんって…、ンン、千空さん達は橋の板で作った溝に銅を流して、固まらせて、銅線を作ろうとしてるんだろうな、って』
その呼び方、紅玉にしか呼ばれたことないから、なんだか新鮮。
 


「銅に溝を流し込んだら固まった銅線を鉄の棒にグルグル巻きまくる」
 出来上がった銅線をグルグル巻き付ける千空さん。
千空さんの様子を後ろからそっと伺っていれば、橋の方から体格のよい男性が近寄ってきた。

「やべぇ、マグマだ!」
「話の通じる男ではない。闘いは避けられんぞ……!!」
「今、村と全面戦争したら詰みじゃねぇか、クッソなんとか……」
『……!、なら私が—』
「ああ、しゃあないねこりゃ、巻き込まれて殺されんのとかカンベンだしね」
行きます。と言う前に遮ったあさぎりさんは、にこりと私に笑いかけた。
『!、(意外とあさぎりさんっていい人だ…)』
「花束くれない?スイカちゃん」
「え?」
「戦争より花でしょ」

 
マグマ?さん達の目の前に立ち、花を見せたあさぎりさん。一体何をするのだろうか。

「あー?花なんか持ちやがって、んだよこのキザな男はよぉー?」
「空の怒りを呼んだのは貴様か?ムハハハ自分から殺されに来るとはいい度胸だ」
「嫌だなぁ〜逆だよ。俺らはねあの雷ちゃんを妖術で消しに来たんだよ」
「なぁーに適当な寝言…」
「こんな風に、ね」
 そう言ったあさぎりさんはマグマさんの目の前から花を消した。
「!?」
「マジで消えた。目の前で……バカな!?」


「あれで見えていないのか?マグマ達には」
「バックパームとかいう技だ。手品師がトランプとか使ってやるやつだな」
『…………すごい!あさぎりさん!!』
「やるじゃねぇか、インチキマジシャン」 
 私達—そうあさぎりさんの背後にいる人にはタネが見えている。手の甲に花を隠している。千空さんが言うにはバックパームという技らしい。
それにしても、後であさぎりさんにはお礼しないとなぁ。



今から避雷針を立てよう。とのことで千空さんがクロムさんに「良いスポットはないか?(意訳)」と問い、超絶雷スポットを教えてもらい、私達は、はげ山に着いた。

「着いたぜはげ山」 
「超絶雷スポットだ!狙うならここっきゃねぇ!」
『………これ雷落ちたら死ぬんじゃ、?』
というか、私は無傷だろうけどここの住人の方々はマズい気がする…。 
「ソッコーで、避雷針を立てるぞ!」
私も参加し、避雷針を立てるのに手伝っていれば近くで雷が落ちる。
「雷が近い…!」
「やべぇじっくりやぐら組んでちゃ間に合わねぇぞ。くっそ少しでも高くしねぇと」
「くっ…地面に突き立てられる長物でもあれば——ん?」

「だ、だめだ!この槍だけは」
「なんだやっぱ気にいってんじゃんよぅ」
「うあああああ!!!」
  コハクさんが何かを発見したと思えば、金色の槍(持っていた人から無理矢理奪い)をGETし、髪紐をほどき先程作成していた物を金の槍を縛り付け、地面に突き立てた。

コハクさん…あの身のこなしからして、相当強そうだ。

「やりいいいいい!」
「ククク降りてきたぜ電気の神が—」
「やりいいい!発電機用の強力磁石ゲットオオオ!」

 
「ハハハッ何なの?千空ちゃん。このなーんもない石器時代にゼロからまさか本当に…」
「"電気"の爆誕だ!唆るぜこれは…!」

 
「うわぁボロボロだぁー金の槍」 
「すまないが許せ金狼。非常事態だったものでな」
「きっとまた千空が作ってくれるんだよ!」
「……」
 落ち込んでいる様子の金狼?さん、そりゃああんなにカッコいい槍がボロボロになってしまったらショックだよなぁ。

「あれぇーどこいっちゃったのかなぁ槍?無くなっちゃったねぇ!?自分だけ作ってもらってさぁ!僕に貸してもくれなかった金の槍あれぇー!?」
 からかっていた金狼さんと似た雰囲気の男性に怒った金狼さんに殴られ、地面に倒れ込んでいる。きっと、兄弟かだろうか。
 ああいう様子をみているとスラムにいたときの自分とカシムを思い出してしまう。

「!!、…千空、磁石作りは失敗かもしれんぞ!」
「!?」
「くっつくどころか近づけん、謎の力で弾かれる…!!」
「SN逆だ」
『……それ反対ですね』
 なんか自分も小さい頃そうやって遊んだことあったな…懐かしい
 クルリと反対方向に向ければコハクさんと千空さんの持つ磁石がぴったりくっついた。
「おおー!」
「おおお!すごい強さだよ!」
「これで作れんだな、そのやベぇ電気っつぅやつをよ!」
「しっかし千空ちゃん発電所って火力発電?風力発電?まさかの電子力発電…?」

 「腕力発電」
 あさぎりさんがそう問えば、千空さんは耳をほじくりながら、そう答えた。
「だよね~やっぱり」


 先程の様に製鉄炉に大量の酸素を送り込む作業が終わり、倒れ込む村の住民の方とあさぎりさん。

『あさぎりさん、大丈夫ですか…?』
「う、うん……アリババちゃんはよく平気だね!?!?」
 ——というかさ、あさぎりじゃなくてゲンで良いよ。それに敬語使わなくていいよ
『へ?、あ、じゃあお言葉に甘えて…』

すぐ隣で千空さんとハチマキを巻いている男子—クロムさん、コハクさんの三人が別の作業をしていた。

 
「銅板ぶっ叩いて伸ばしたら、削りまくって円盤にする」
「くらえ!この間見したやべぇ硬さの石、コランダムで、削りまくるぜ!」
「ダイアモンドの次に硬ぇ石だ。やるじゃねぇかクロムコレクション」
「銅線のカバーはリン酸でって思ったが漆が、べっちょりでもいけるな」
 う、さっきからずっと気になる…。千空さんの顔が気になってしまう。
 
「んーと千空ちゃんらいつツッコもうか悩みまくっちゃってたんだけどね…なんでアンパンマンになってるの?」
「漆かぶれ」
『ふっ、ははは』
 アンパンマンは面白すぎる…!!思わず吹き出してしまった。





 千空さんの話していた腕力発電は、二刀流手回し発電機として完成された。
「円盤を二枚同時に回すのか!かなり難しいな」
「二人でやればいいんだよ!」
「息あわせて回さねぇとガッタガタにぶっ壊れるんぞ」
「ああ、息ピッタリで身体能力高ぇなんつうコンビてでもいりゃそいつらに………あ、!」
金狼さん達、良さそうだよね。
 
 なんて皆思ったのか門番している二人の元へと近づく。
「またおまえ達か、今度は何の用だ?」
「おうやべぇ科学の機械見せてやるからついてこい!」
「行くわけないだろう!」
「ううう……」
落ち込んでいる様子のクロムさん。
「いつにも間して意固地だな。何が気に入らないというのだ」
「ククク、どう考えても金の槍ぶっ壊したからだろうが」 
「いやぁ電気ってすごいんだよね!俺らの妖術世界では、もうねあらゆるカラクリが電気で動いてんの」
「フン」
「電気さえあれば金や銀の槍なんかも作れちゃったり、直せちゃったりするのかな?—ねぇ千空ちゃん…?」
「電気でメッキは相当厳しいぞ。知ってんのかよ、レシピ!」
「何一つ知らないよ~」
「あさぎりゲン、貴様本当に言葉が羽の様に薄っぺらいな」
『ゲンはやる気スイッチを入れるのが得意なんだなぁ!』
 ゲンと共に小声で会話する千空さん。……いや、もう、千空でいっか。


「「おりゃあああああ」」
 円盤を回す、金狼と銀狼。
 
「流石兄弟息ピッタリだ!」
「ククク金狼銀狼ゲットで、科学王国民も、だいぶメンツが揃ってきたな!!」
「本当にあれで発電できてんの?」
『…』
ゲンが千空に疑問に思っていることを問いかける。千空は、竹の繊維を蒸し焼きしたものをゲンに見せる。

 科学倉庫の屋根の上に登り、何かをしようとしている。
「高い場所が必要なのか?」
「ククク関係ねぇよ、ただまぁせっかくだからな」
「?」
 

「あ〜、そうかアレ、エジソンか〜!」
『わ、眩しい…』
 一瞬だが、真っ暗な闇に光が見えた。すごい、すごいなぁ千空は。


「石器時代に電気だよ、ジーマーで。こんなもん見せられちゃあねぇ〜?司ちゃん」
「科学本漁り始めて生まれて初めて読んだ伝記がな、エジソンだった…図書館に100億%あっからなそりゃあそうなる」
『この時代は当たり前のモノが消えてしまった時代なんだよな?…それを一から作り上げるって相当すごいことだよ』
 それに私はつい先程まで前世と比べたらそこまでいかないが、電気や色んな便利なものに囲まれていた。それが急になくなってしまったら人類は混乱するだろう。実際マギ世界で全てが終わった後、眷属器の力や魔法が消えてなくなってしまった際、最初は混乱というか皆戸惑っていた。


「来たぞまずは!ここまでな……!!!」
 ぎゅっと拳を握りしめ、笑顔で笑う千空。

千空は、きっとここまで色々大変なことがあったんだろう、詳しい話を後で聞けないかな。まぁ、そうなったら私のことも、詳しく説明しなきゃいけないよな。 
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