迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい


「やー!これ泳ぐにも捗るというものだ……!!」

「これがシルクの水着……!素晴らしい触り心地ですね……!」
「えっホント?触り心地?触ってみてもいい?」
「あああ……」 
『おー?どうした、金狼?ルリに見惚れてたのか……?』
「!、…………アリババか、」
『お?何だよそんな残念そうな顔して!?』
「え~!?アリババちゃん!水着着てないの!?」
『皆スタイル良いから、着るのが恥ずかしくてな……』
「そんなことないです!アリババさんはとっても似合います!」
「うんうん!アリババちゃんに似合う水着作ったんだよ?着てみない…?」
『あーえーと……だ、大丈夫デス!!!』
 あーもう!、最近羽京さんのせいで食べすぎて太っちゃったんだよ…!!!
ルリと杠には悪いがここは逃げさせてもらおう!!!





  
パシャリと撮られた写真には、私がルリと杠から逃げ、砂浜に足をとられ、転ぶ3秒前の写真が写っている。

「あ、速すぎてもうオバケみたいに伸びてる光が……」
「この時代のカメラだと全部、心霊写真になるのね、コハクちゃんは…」
『え!?南さん。この写真飾るの!?』
「いいじゃない!思い出よ思い出!」
『……そっ、そっか』 
マヌケな顔して写ってるからどうにかできないのか、これ……。


 
南さんが、なぜその写真を飾ろうと思ったのか。その答えを、私はすぐに知ることになる――。
***



「ククク。完成まで一年か……意外と早かったな」
「わはは!そのセリフ、大昔にも聞いた気がするな!」
「ホワイマンも攻めてこないでくれてるしね!」
「こっちが動き出すの待ってんじゃねぇか?」
「フゥン、なら俺達から探しに出向いてやろう。この機帆船で世界にな……!!」

「…………だよね。もう行っちゃうんだよね。行く人は。……ホラ集まって!ついに完成したんだから、船とみんなで全員集合写真!」

「どんだけ、写真撮りまくってんだ!記者テメーは!」
「だって!!これでお別れなんだよ!残る組と、船出組で、——この一年がみんなで過ごせる最後の時間だったから、もう二度と会えないかもなんだから!せめて写真で、って——」
「!、……(そっか、復活者の選定係してたんだから、南ちゃんだけはもともと全員と顔見知りだったのね……)」



 
寂しいよな。……もしかしたら、会えなくなるかもしれないんだからな。だから、写真をたくさん撮って、思い出として、残したかったのか。
  
「……なにほざいてやがる。最後じゃねぇよ。100億%石化の謎突き止めて、100億%地球の裏から戻ってくんだからな」
千空……!南さんもそれを聞き、少し口元がゆるんだ。
  
「ともかく!みんなで一枚だけでも撮らせてよ!……あははシャッター切る私は一人だけ写れないんだけど……」
「そのような流れもあろうかと、カメラのタイマー作成をご依頼申し上げておきました」
「そういう使い方だったのね、この工作」
「高すぎんだろ先読み力!」

「ししおどしでカポーンかよ、ひでぇ原始的タイマーだな」
 私はどこで写真を写ろうか悩んでいれば、ゲンと目が合う。
『…ゲンの隣にいてもいいか?』
「どうぞ!大歓迎~!」
私はコハクとゲンの隣に割りこむ。
「使えりゃいいんだよ!」
「押すなバカ!」
 
「はい撮りまーす、笑ってー!!!」

 ——西暦5741年9月10日、「機帆船ペルセウス」竣工——


***

「このプロジェクトを始めた一年前から、全員覚悟してっと思うが、——今日を最後に俺らは完全2チームに分かれる。"石化の謎をとく世界冒険チーム"と、本土に残る"人類発展チーム"だ」
「はっはー!船長の俺が独断で揃えた、乗船メンバーのリストだ。本来全員欲しいところなんだがな——」
「んなもんそれ沈んだ瞬間人類滅亡じゃねぇか!」
「たしかに」
「てか定員あるでしょ!」
「当然だが、人類未踏の危険すぎるミッションだ!二度と戻れないかもしれん、命の保証すらない、だから今から呼ばれても残りたいやつは残れ。それは貴様は自身が決めることだ……!!」

『……選ばれるのか……?私は…』
危険な旅になることは、わかっている。命の保証なんてない。それなのに――不謹慎だとは思うけれど、胸の奥が少しだけ高鳴ってしまうのは、私だけなのだろうか。
マギの世界での冒険の様で、私はどうしようもなく期待と興奮で胸を満たされていた。

 
「今から名を挙げる者で覚悟のある奴だけ、自分の足で乗り込め。科学戦ペルセウスに…………!!!」
  
「まずは絶対に必要な、船のエンジニア——千空!クロム!カセキ!」 
 
「ってもう乗り込んでじゃねえかよ!?」
「もう少しこう……あるでしょ、出発の決意の感じとか!」
「わはははは!それが千空だ!」
『ふっ、ははは!』

「杠!」
「私エンジニアだっけ?」
「帆のな」 
「レーダー&ソナー、羽京」 
「コック、フランソワ」
「そして実際の帆船の運行は究極の力仕事だ。パワーチーム」
「「「「おおおおおお!!」」」」
「名前呼ばれてから、呼ばれてから!」
羽京さんは、困ったような苦笑いを浮かべていた。パワーチームのみなさんは名前を呼ばれるよりも早く、次々と船へ乗り込んでいく。その勢いに、思わず笑ってしまいそうになった。

「フン、残って村牛耳る手もあってがな。最後に一番の長になんのは、戦争で派手に手柄挙げた奴だろうがよ」
「あい〜存じております。マグマ様がそんなに小さな野望に収まらないのは」
どうやらマグマとマントルも共に船へ乗り込むらしい。
口ではああいっているが、マグマのやつだいぶ丸くなったよな。
 
「ククク、こりゃ逆のが早ぇ、リストにあんのに乗ってねぇ奴ぁ、誰だ?——あ"ー、金狼」
「了解した」
「「「あー」」」
「さっすが1人だけ呼ばれてからってルールクソ真面目に守ってる」
「ルールはルールだ!」
 
「アリババ」
『!、……おー!』
選ばれた嬉しさが込み上げてきて、思わずそっと拳を握りしめた。
へへ……やったな。

「そして、銀狼!!」
「いやだあああああ!!!絶対絶対行かないぞ!地球の裏なんてそんなアブナイの僕はああああ!!!!」

『……相変わらずだな、銀狼のやつ』
私は思わず、はははと乾いた笑みを浮かべた。

 
「銀狼、貴様は何を言っている?……何も問題などないぞ。言ったはずだ。覚悟のある奴だけでいいと」
「発展チームも重要な仕事だ」
「マジか!」
「じゃ、じゃあ俺も残ろう」

 
「——しかし、船にパワーチームが不可欠なのは分かるが、一つだけ懸念があるな」
『?』
「牢にいる氷月とほむらだ。めぼしい戦闘員が皆旅立ってしまった後では万が一脱獄でもされた日には、日本全土を乗っ取られるぞ…………!!」
 
コハクの言葉に、思わず反応してしまう。

そうだ。そのことが、完全に頭から抜け落ちていた。もし本当に氷月達が脱獄したら…!。氷月とは一度も戦ったことがない。だから、正直なところ自分が勝てるのかどうかも分からない。……だったら、ここに残るべきなのか?
せっかく選ばれたことが嬉しかった。 皆と一緒に、この先の冒険へ進めることを楽しみにしていた。
でも――。仲間たちが危険な目に遭う可能性があるのなら、話は別だ。

「ああ、んなことか。——ククク、動く戦場牢獄だ。連れてきゃ、問題ねぇだろが」
「いるーーーー!?船に」
『マ、マジかよ……』
「いいのかよ!?それで」
「良くはないのかもだけど、強すぎて、置いてくのが危険すぎるんだよ。」
その言葉に、思わず納得してしまった。
……確かに、その通りだ。氷月やほむらを残していくほうが、よほど危険なのかもしれない。私は小さく息を吐いた。

「……それにリスク覚悟で手持ち最強の武力カードとして、出さざるを得ねぇかもしんねぇ、いざっつう時はな」
まぁ、そんなことにならないように頑張りたいがな……。

 
 
「これで船メンバー全員かな?。はい、じゃあみんなお見送りしよ〜〜〜」
「何を言っている、最後にゲン。貴様もだ!」
「ジーマーで!?!?」
うんうん。やっぱり、ゲンがいないと寂しいよな。
「いや〜いらないでしょ、俺は体力とかモヤシだし……」
「どんな敵と会うかも分かりゃしねぇんだぞ。そこでメンタリストが出ばらねぇで、いつ出んだバカ」 
『そうそう。それに、モヤシ男が一人や二人増えたところで問題ないだろ!』
「誰がモヤシだ。科学者サマって言え」
『誰も千空のことをモヤシって言ってないだろ?』
…どうやら、自分がモヤシ扱いされている自覚はあったらしい。 

 
「んま〜〜ね〜〜、もしホワイマン攻めてくんなら、バイヤーなのは本土も一緒だし。——だったらが科学王千空ちゃんのいるチームの方がリアルな話、安心かもね。俺はどっちだっていいのよ。自分が得ならね〜!」
そう言うと、ゲンはいつものように笑みを浮かべながら、軽い足取りで船へ乗り込んでいった。



  
『ゲン!!』
「最近さ、アリババちゃんにしっぽと耳が生えて見えるんだよね〜……」
『???』 
ゲンはアリババがまるで大好きな飼い主を見つけた犬のように、嬉しそうにしっぽを振っているように見えていた。
まあ、羽京ちゃんと話している時もいつもあんな感じだし、きっと自分のこともかなり慕ってくれているのだろう。誰だって、こんな素直で可愛い子に懐かれて、嫌な気持ちになる人なんていないはずだ。
 

  
「——、——あの偽悪が蝙蝠男の矜持なのだな。……ハ、!実に面倒だ……!」
「何か言った?コハクちゃん?」
「フフフ。いや、何も???」







 

 
船員メンバーが揃い、ついにペルセウス号は出港した。後から、銀狼も合流し、これで本当に全員だ。 もう迷う理由なんてない。
今度こそ、——私たちは本当の意味で、同じ船に乗る仲間になったのだ。
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