迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい
『よし、村へ戻るか』
アリババがそう言って踵を返したその時、不意にあることが頭に浮かぶ。——しまった。大事なことを話し忘れていた。
『なぁカシム。聞いてくれよ。有名な漫画家に俺が主人公の漫画描いてもらったんだぜ?——題名は、"アリババと40人の盗賊"って話なんだけどな、盗賊が40人死ぬのは変わらないんだけどな、……たった一人の兄を救ったんだよ』
ある日、貧しい暮らしをしているアリババと彼の妻であるモルジアナは、盗賊が隠した宝を持ち帰って、一夜にして金持ちになりました。
裕福な兄、そのことを知った兄のカシムは、宝物を持ち帰ろうとしますが盗賊にバレて命を奪われそうになります。
——その時、アリババが駆けつけました。アリババは勇気をふりしぼり、たった一人で40人の盗賊と戦い、盗賊たちを倒し、兄を助けることができました。
助けられたカシムは、自分の欲深さを反省し、「命より大切な宝はない」とアリババに感謝しました。それからは兄弟で力を合わせ、お互いを助け合って暮らすようになりました。
アリババとモルジアナは手に入れた宝を自分たちだけのためには使いませんでした。
貧しい人たちを助けたり、町の人々の暮らしをよくしたりするために使いました。
町の人たちは、勇気があり、優しい心を持つアリババを本当の英雄として尊敬しました。
こうしてアリババたちは、家族や町の人々と幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
『…まぁーその漫画がすんごい売れるわけでよ、モデルのアリババはどこだー!!!とか会わせろー!とかうるせぇのよ、そんで、"俺がアリババだっ!"って言うと、"え?お前みたいな軟弱そうな奴があのアリババなのか!?"とか言われるんだよ。……いやあのアリババってどのアリババだよ!?!?』
「~~ふっ、ははは!」
一人でむなしくツッコミを入れていると、不意に背後から笑い声が聞こえてきた。
『誰だよ?…………って羽京さんか!驚かせないでくれよ!?』
「あっはは!ごめんね。アリババが面白いこと話してるから…つい」
『わ、笑うなよ……。誰も聞いてないと思ってたんだから、余計恥ずかしいだろ…!!』
「あはは!あの漫画、僕も読んだよ。」
『え…?』
突然の言葉に私は思わず固まり、何も返せなくなった。その様子を見て、羽京さんはまた楽しそうに笑った。
村へ戻ると、あちこちから人々のにぎやかな声が聞こえてきた。何事だろうと思って足を速めると、千空、龍水、クロム達が気球に乗って石神村へやって来ていた。
「挨拶をしてくるよ」
そう言って、羽京さんはコハクとともに三人のもとへ向かっていった。
***
「感謝するぜ!美女たちのもてなしに!」
「いやだあ、美女だってよぅ、アタシらに」
龍水は得意げにフィンガースナップを鳴らす。
村のおばあさんたちは頬を緩め、どこか照れくさそうに笑みを浮かべた。
「やべえええ!なんだコレ!豪華すぎんだろ飯!!」
「ほぅ……!!」
クロムの興奮した声に、龍水はなんだか期待しているようだ。
そうして目の前に並べられた料理を見た瞬間、龍水の表情が凄いことになっていた。そのあまりに分かりやすい反応に、思わず、おいおい、顔に出しすぎだぞ?と突っ込みたくなるほどだった。
『美味しいなぁ』
焼き魚のサラダ風を食する。魚と野菜って相性いいよな、この世界に来るまで食べたことなかったから、未知の世界を知ったみたいだ。
「ジャスパー、ターコイズ。テメーらだけで守れてたか?ジジババ共をよ」
千空はジャスパーとターコイズに視線を向けると、静かに問いかけた。
「戦闘なんかほぼゼロよ!たまにアリババが熊を狩ってきてくれるけど」
「ここ1ヶ月はずっと毎食魚だな」
『明日また熊でも狩ってきますよ!』
「ああ」
ターコイズとジャスパーと話していた千空は、ふとこちらへと視線を向けた
「アリババ、テメー、頭は冷えたのかよ?」
『おかげさまでな』
「!」
不敵な笑みを浮かべたまま答えると、千空はわずかに目を見開いた。
というか、私も村人たちを守るために動いていたんですが、……?
「…………千空、俺たちはいつまでこの村で過ごす…?」
「あ"?さあな、石油見つかるまで1年か2年か……」
「はっはー!見つけるぞ、食料も!!空からな。絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にだ!!!」
わなわなと震えながら、龍水は力強く宣言した。……この人、本当欲望に忠実だよな。
「ものっすごい、断固たる決意だね。最近気付いたんだけど、こういう世界だと欲張りって悪いことじゃないよね」
「あ"ー実におありがてぇ、バリバリ頼むぜ、パイロット……!!!」
羽京さんと千空の声に確かにな、とうんうんと同意する。
そうして、龍水達は食糧マップを作り上げた。
村人は皆喜び、泣いている者もいた。"この先飢えで死んだりもせず、済むのかもしれない"と告げる姿に、思わず反応してしまう。スラムで生きるのに必死だったあの頃が思い浮かぶ。
***
なんだか焦げ臭いニオイがするな?、と思い、様子を見に行けば
『これが、パン……』
「うめえええ」
「これは岩のようだ……!ザリザリの食感がめっぽう楽しいな!!」
「真っ黒だけど結構いい臭い…」
千空達が小麦を発見していたのは知っていたが、こんな真っ黒な炭の様な物が食べ物だなんて。まあ、味はわからないだろう。とすずちゃんと共にパンを貰い食す。
「お、美味しい……!!」
『お、意外と美味いな』
目をキラキラと輝かし、初めて食べた!!と楽しそうな笑みを浮かべているすずちゃん。
『…本当は、焦げてる食べ物って体に良くないんだけどな』
まあ、食べられるものは食べる。勿体ないからな!
この体になって食べ物のありがたさに気付いた。"どんなものでも美味しく感じる"ようになってしまったというか、……完全に貧乏舌だな。——味音痴とも言う。
千空と龍水がパンに手を伸ばし、それを口に運んだ次の瞬間、二人はその場に崩れ落ちるように倒れた。
「現代人は舌が肥えすぎてて、マズすぎて、食べられないのが原因で飢え死にすることがあるらしいね……自衛隊のサバイバル演習で習ったよ」
「……このパンじゃ全員くたばる。違うか!?」
「あ"あ"、地球の裏まで大航海時代すんには、絶対に——————、」
「「プロのシェフを叩き起す!!」」
「……ハモったね」
『……そうだな』
「アリババも現代人なのに、よくあのパン食べれてたね…」
『え?みてたのか!?』
「うん。すずと美味しそうに食べてるから目に入っちゃってね」とクスクスと楽しそうに笑っている羽京さん。
『……まあ、生活が苦しかった時はネズミとか虫とか食べたり、——』
「今、なんて?」
『え?生活が苦しかった時はネズミとか虫とか食べたりして空腹をしのいでたから、ちゃんとしたご飯食べられることがありがたくてさ…』
「ぼ、僕の聞き間違いじゃなかった…………!」
私がそう言うと、頭を抱えて泣き出してしまった、羽京さん。
『え、えええ〜!?う、羽京さん!?』
「おい。何、羽京困らせてんだ」
「どうした、羽京?」
呆れ顔の千空と驚いている様子の龍水がやってくる。
『何もしてねぇ!!……昔、生活が苦しかった時ネズミとか虫食べたりしてたって話したら羽京さんが急に泣き出して……』
「あ"ー……そりゃあ100億%テメーが悪い」
「ネズミ……?虫……?」
やれやれとため息を吐く千空と。まるで未知の生物でも目の前にしたかのような視線を向けてくる龍水。
『……流石に今は食べてないからな!?』
「……ア、アリババ。君は苦労してきたんだね…!」
復活した様子の羽京さん。ウソ、やっぱまだ鼻声気味だ。
確かにいわれてみれば波乱万丈な人生送ってきてる気がするなぁ。
『ははは!』
やっぱ優しいな、羽京さん。
***
プロのシェフと叩き起すと宣言していたが、石化した人物を復活させるには復活液が必要で、その復活液は司帝国が占領していたのだが、なんと今は復活液を手に入れることできなくなってしまったらしい。なぜかと言うと放火は……じゃなくて、ほむらが氷月の指示で奇跡の洞窟の爆破してしまったからだ。
そんな話初耳なんですが……?というか、ほむらのことをもう放火犯と呼べないじゃないか。まあ仲間になったのだからそんな呼び方もうしないけど!!!
復活液がない中でどう復活させるかと言うと復活液を隠し持っている人物がいる、——隠し持っていた人物とは北東西南さんという敏腕記者の方だった。復活液とあるものを交換ということで条件を受け入れてくれて、龍水の執事兼フランソワさんを石化から復活させるようだ。
「フランソワってことは…フランス人??日本語は通じるの?」
「フゥン、気にしたこともないな。日本人かもしれん。フランソワだか、フランソワーズだか、本名も忘れたし、性別も知らん」
「性別も!?」
「適当すぎんだろ……」
『ははは』
「俺の知る事実はただ一つ。奴が世界一欲しい執事だということだ!」
「ウデの前には人種も性別もどうでもいいことだ。違うか?」
『……そうだな』
龍水がもしマギの世界に存在していたら良い王様になったんじゃないか?と思わず考えてしまう。カリスマ性もあるし、国民から大変人気がありそうだ。
なんて考え事をしていれば、ゲンが人を連れて石神村にやって来た。!もしや、その人こそがフランソワなのでは…?
「失礼。龍水様、皆様。まずはパンの完成品を拝見します。」
「!?」
「来てるーーー!?シレッと」
「バ、バイヤ〜〜〜ほぼ二日ノンストップ……!!!」
『だ、大丈夫か!?ゲン!』
倒れ込んだゲンへ手を差し伸べる。すると、彼は苦笑しながらその手を握り返し、ゆっくりと立ち上がる。
「まぁ、なんとかね、……」
「もろもろの説明をしなくていいのか!?」
「そんなものはいらん!フランソワが道中あらかじめ、状況確認しながらこないわけがないだろう」
「これが、俺たちの小麦から焼いたパンだ!!」
龍水がみせたのは、真っ黒焦げになったパンだ。それを見たフランソワの目がどんよりと濁った目をしている。
「最悪の事態を想定するのも仕事ですので、お聞きしますが、まさかこの産業廃棄物をゲストに出されたのですか??」
「はっはー!そうだ!」
「——今回のメニューの目的、——ゲストのご要望をお教えください。」
フランソワは片手に持っていたエプロンを広げると、慣れた手つきで身に纏う。
「長期航海の保存食だからな、超絶長持ちで腹もちもいい、食えるレベルのパンが欲しい」
「いえ、リミットは何ヶ月か、できる限り正確な数字が欲しいのです」
「経験から言って一年以上の航海は乗員が耐えられずらいずれにせよ詰む。つまりせいぜいが、10ヶ月。腐らなければ、それでいい!!」
「10ヶ月ですね、畏まりました。ならば私共がご用意するメニューは"ヤギの恵みのシュトーレン"」
シュトーレン……か。美味しそうだ。手伝おうと足を踏み出そうとすれば、腕を掴まれる。
「アリババちゃん」
『どうしたんだ?ゲン…?』
「ちょっと俺とお話しよっか?」
『え……?あ、うん』
にこりと笑みを浮かべるゲンに思わず身構える。何かまずい話でもあるのだろうか?
アリババがそう言って踵を返したその時、不意にあることが頭に浮かぶ。——しまった。大事なことを話し忘れていた。
『なぁカシム。聞いてくれよ。有名な漫画家に俺が主人公の漫画描いてもらったんだぜ?——題名は、"アリババと40人の盗賊"って話なんだけどな、盗賊が40人死ぬのは変わらないんだけどな、……たった一人の兄を救ったんだよ』
ある日、貧しい暮らしをしているアリババと彼の妻であるモルジアナは、盗賊が隠した宝を持ち帰って、一夜にして金持ちになりました。
裕福な兄、そのことを知った兄のカシムは、宝物を持ち帰ろうとしますが盗賊にバレて命を奪われそうになります。
——その時、アリババが駆けつけました。アリババは勇気をふりしぼり、たった一人で40人の盗賊と戦い、盗賊たちを倒し、兄を助けることができました。
助けられたカシムは、自分の欲深さを反省し、「命より大切な宝はない」とアリババに感謝しました。それからは兄弟で力を合わせ、お互いを助け合って暮らすようになりました。
アリババとモルジアナは手に入れた宝を自分たちだけのためには使いませんでした。
貧しい人たちを助けたり、町の人々の暮らしをよくしたりするために使いました。
町の人たちは、勇気があり、優しい心を持つアリババを本当の英雄として尊敬しました。
こうしてアリババたちは、家族や町の人々と幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
『…まぁーその漫画がすんごい売れるわけでよ、モデルのアリババはどこだー!!!とか会わせろー!とかうるせぇのよ、そんで、"俺がアリババだっ!"って言うと、"え?お前みたいな軟弱そうな奴があのアリババなのか!?"とか言われるんだよ。……いやあのアリババってどのアリババだよ!?!?』
「~~ふっ、ははは!」
一人でむなしくツッコミを入れていると、不意に背後から笑い声が聞こえてきた。
『誰だよ?…………って羽京さんか!驚かせないでくれよ!?』
「あっはは!ごめんね。アリババが面白いこと話してるから…つい」
『わ、笑うなよ……。誰も聞いてないと思ってたんだから、余計恥ずかしいだろ…!!』
「あはは!あの漫画、僕も読んだよ。」
『え…?』
突然の言葉に私は思わず固まり、何も返せなくなった。その様子を見て、羽京さんはまた楽しそうに笑った。
村へ戻ると、あちこちから人々のにぎやかな声が聞こえてきた。何事だろうと思って足を速めると、千空、龍水、クロム達が気球に乗って石神村へやって来ていた。
「挨拶をしてくるよ」
そう言って、羽京さんはコハクとともに三人のもとへ向かっていった。
***
「感謝するぜ!美女たちのもてなしに!」
「いやだあ、美女だってよぅ、アタシらに」
龍水は得意げにフィンガースナップを鳴らす。
村のおばあさんたちは頬を緩め、どこか照れくさそうに笑みを浮かべた。
「やべえええ!なんだコレ!豪華すぎんだろ飯!!」
「ほぅ……!!」
クロムの興奮した声に、龍水はなんだか期待しているようだ。
そうして目の前に並べられた料理を見た瞬間、龍水の表情が凄いことになっていた。そのあまりに分かりやすい反応に、思わず、おいおい、顔に出しすぎだぞ?と突っ込みたくなるほどだった。
『美味しいなぁ』
焼き魚のサラダ風を食する。魚と野菜って相性いいよな、この世界に来るまで食べたことなかったから、未知の世界を知ったみたいだ。
「ジャスパー、ターコイズ。テメーらだけで守れてたか?ジジババ共をよ」
千空はジャスパーとターコイズに視線を向けると、静かに問いかけた。
「戦闘なんかほぼゼロよ!たまにアリババが熊を狩ってきてくれるけど」
「ここ1ヶ月はずっと毎食魚だな」
『明日また熊でも狩ってきますよ!』
「ああ」
ターコイズとジャスパーと話していた千空は、ふとこちらへと視線を向けた
「アリババ、テメー、頭は冷えたのかよ?」
『おかげさまでな』
「!」
不敵な笑みを浮かべたまま答えると、千空はわずかに目を見開いた。
というか、私も村人たちを守るために動いていたんですが、……?
「…………千空、俺たちはいつまでこの村で過ごす…?」
「あ"?さあな、石油見つかるまで1年か2年か……」
「はっはー!見つけるぞ、食料も!!空からな。絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にだ!!!」
わなわなと震えながら、龍水は力強く宣言した。……この人、本当欲望に忠実だよな。
「ものっすごい、断固たる決意だね。最近気付いたんだけど、こういう世界だと欲張りって悪いことじゃないよね」
「あ"ー実におありがてぇ、バリバリ頼むぜ、パイロット……!!!」
羽京さんと千空の声に確かにな、とうんうんと同意する。
そうして、龍水達は食糧マップを作り上げた。
村人は皆喜び、泣いている者もいた。"この先飢えで死んだりもせず、済むのかもしれない"と告げる姿に、思わず反応してしまう。スラムで生きるのに必死だったあの頃が思い浮かぶ。
***
なんだか焦げ臭いニオイがするな?、と思い、様子を見に行けば
『これが、パン……』
「うめえええ」
「これは岩のようだ……!ザリザリの食感がめっぽう楽しいな!!」
「真っ黒だけど結構いい臭い…」
千空達が小麦を発見していたのは知っていたが、こんな真っ黒な炭の様な物が食べ物だなんて。まあ、味はわからないだろう。とすずちゃんと共にパンを貰い食す。
「お、美味しい……!!」
『お、意外と美味いな』
目をキラキラと輝かし、初めて食べた!!と楽しそうな笑みを浮かべているすずちゃん。
『…本当は、焦げてる食べ物って体に良くないんだけどな』
まあ、食べられるものは食べる。勿体ないからな!
この体になって食べ物のありがたさに気付いた。"どんなものでも美味しく感じる"ようになってしまったというか、……完全に貧乏舌だな。——味音痴とも言う。
千空と龍水がパンに手を伸ばし、それを口に運んだ次の瞬間、二人はその場に崩れ落ちるように倒れた。
「現代人は舌が肥えすぎてて、マズすぎて、食べられないのが原因で飢え死にすることがあるらしいね……自衛隊のサバイバル演習で習ったよ」
「……このパンじゃ全員くたばる。違うか!?」
「あ"あ"、地球の裏まで大航海時代すんには、絶対に——————、」
「「プロのシェフを叩き起す!!」」
「……ハモったね」
『……そうだな』
「アリババも現代人なのに、よくあのパン食べれてたね…」
『え?みてたのか!?』
「うん。すずと美味しそうに食べてるから目に入っちゃってね」とクスクスと楽しそうに笑っている羽京さん。
『……まあ、生活が苦しかった時はネズミとか虫とか食べたり、——』
「今、なんて?」
『え?生活が苦しかった時はネズミとか虫とか食べたりして空腹をしのいでたから、ちゃんとしたご飯食べられることがありがたくてさ…』
「ぼ、僕の聞き間違いじゃなかった…………!」
私がそう言うと、頭を抱えて泣き出してしまった、羽京さん。
『え、えええ〜!?う、羽京さん!?』
「おい。何、羽京困らせてんだ」
「どうした、羽京?」
呆れ顔の千空と驚いている様子の龍水がやってくる。
『何もしてねぇ!!……昔、生活が苦しかった時ネズミとか虫食べたりしてたって話したら羽京さんが急に泣き出して……』
「あ"ー……そりゃあ100億%テメーが悪い」
「ネズミ……?虫……?」
やれやれとため息を吐く千空と。まるで未知の生物でも目の前にしたかのような視線を向けてくる龍水。
『……流石に今は食べてないからな!?』
「……ア、アリババ。君は苦労してきたんだね…!」
復活した様子の羽京さん。ウソ、やっぱまだ鼻声気味だ。
確かにいわれてみれば波乱万丈な人生送ってきてる気がするなぁ。
『ははは!』
やっぱ優しいな、羽京さん。
***
プロのシェフと叩き起すと宣言していたが、石化した人物を復活させるには復活液が必要で、その復活液は司帝国が占領していたのだが、なんと今は復活液を手に入れることできなくなってしまったらしい。なぜかと言うと放火は……じゃなくて、ほむらが氷月の指示で奇跡の洞窟の爆破してしまったからだ。
そんな話初耳なんですが……?というか、ほむらのことをもう放火犯と呼べないじゃないか。まあ仲間になったのだからそんな呼び方もうしないけど!!!
復活液がない中でどう復活させるかと言うと復活液を隠し持っている人物がいる、——隠し持っていた人物とは北東西南さんという敏腕記者の方だった。復活液とあるものを交換ということで条件を受け入れてくれて、龍水の執事兼フランソワさんを石化から復活させるようだ。
「フランソワってことは…フランス人??日本語は通じるの?」
「フゥン、気にしたこともないな。日本人かもしれん。フランソワだか、フランソワーズだか、本名も忘れたし、性別も知らん」
「性別も!?」
「適当すぎんだろ……」
『ははは』
「俺の知る事実はただ一つ。奴が世界一欲しい執事だということだ!」
「ウデの前には人種も性別もどうでもいいことだ。違うか?」
『……そうだな』
龍水がもしマギの世界に存在していたら良い王様になったんじゃないか?と思わず考えてしまう。カリスマ性もあるし、国民から大変人気がありそうだ。
なんて考え事をしていれば、ゲンが人を連れて石神村にやって来た。!もしや、その人こそがフランソワなのでは…?
「失礼。龍水様、皆様。まずはパンの完成品を拝見します。」
「!?」
「来てるーーー!?シレッと」
「バ、バイヤ〜〜〜ほぼ二日ノンストップ……!!!」
『だ、大丈夫か!?ゲン!』
倒れ込んだゲンへ手を差し伸べる。すると、彼は苦笑しながらその手を握り返し、ゆっくりと立ち上がる。
「まぁ、なんとかね、……」
「もろもろの説明をしなくていいのか!?」
「そんなものはいらん!フランソワが道中あらかじめ、状況確認しながらこないわけがないだろう」
「これが、俺たちの小麦から焼いたパンだ!!」
龍水がみせたのは、真っ黒焦げになったパンだ。それを見たフランソワの目がどんよりと濁った目をしている。
「最悪の事態を想定するのも仕事ですので、お聞きしますが、まさかこの産業廃棄物をゲストに出されたのですか??」
「はっはー!そうだ!」
「——今回のメニューの目的、——ゲストのご要望をお教えください。」
フランソワは片手に持っていたエプロンを広げると、慣れた手つきで身に纏う。
「長期航海の保存食だからな、超絶長持ちで腹もちもいい、食えるレベルのパンが欲しい」
「いえ、リミットは何ヶ月か、できる限り正確な数字が欲しいのです」
「経験から言って一年以上の航海は乗員が耐えられずらいずれにせよ詰む。つまりせいぜいが、10ヶ月。腐らなければ、それでいい!!」
「10ヶ月ですね、畏まりました。ならば私共がご用意するメニューは"ヤギの恵みのシュトーレン"」
シュトーレン……か。美味しそうだ。手伝おうと足を踏み出そうとすれば、腕を掴まれる。
「アリババちゃん」
『どうしたんだ?ゲン…?』
「ちょっと俺とお話しよっか?」
『え……?あ、うん』
にこりと笑みを浮かべるゲンに思わず身構える。何かまずい話でもあるのだろうか?
