迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい






戦いが終わった。


当時は驚いた。マギの世界に転生したと思ったら、アリババ・サルージャに成り代わっていたのだから。しかも女体化。
原作通りに物語が進んだ。原作では白龍がモルジアナに告白するシーンが、何故か私に入れ替わっていたりと、イレギュラーが起きたりしたが…。
 モルジアナとは同性の為、原作と同じく結婚することは不可能だったが、彼女とは戦友のような同性の親友のような関係性でいられた。(まぁ、1番の親友はカシムだと私は思っている。)
 悲しいことも辛いことも色んなことがあった。とにかく皆と冒険するのがとても楽しかった。

何故過去形で話しているかと言えば、
『いやここどこ!?!?』
 アラジン達といつものように冒険にでていれば、突如怪しい光に包み込まれた。何故か私にだけ。何故???
アラジンやモルジアナが私の名を必死に呼ぶ声が聞こえたが、もうあの世界は魔法が消えた様なものなのでどうしようも出来ないはずだろうなぁ。いや、本当さなんで私だけ光に包み込まれたのかな???意味不明すぎやしませんかね??

 
眩しさで閉じていた瞳を開き、辺りを見渡せば、周囲は森に囲まれており、あちらこちらに石像が沢山ある。

『趣味悪いなぁ、…まるで本物みたい』
 そういや、私がアリババに転生する前に人類が突如石化したアニメかなんか放送していなかったか?
 アリババとして生きるのに必死で前世の記憶なんてほぼ無に等しいのであまり信用ならないが。


 歩き回っていれば近くに集落があるのを発見したので、近くに寄ってみることにした。



『ラーメン…?』
懐かしい匂いだ。マギの世界にはラーメンなんて存在していなかったので懐かしく感じる。棒立ちしていればスイカの帽子(?)を被っている女の子にラーメンを渡された。
 『もらっちゃっていいのか…?』
 とりあえず空腹だったので、バレない様そっと隠れていただいてしまおう。
 ちゅるりと麺をすする。うん、美味しい。
 前世のラーメンと比べれば美味しいかどうか微妙だが。美味だ。薬膳のような味だ。

 
 ふと、岩陰に隠れている男性が、「飲み物も欲しくなっちゃうね〜。コーラとか」と呟く。
「コーラ??」
「千空、君の仲間か」
「違うな」
  
ラーメンが存在するってことは原始時代じゃないのかなとは思っていたけど、コーラって単語があるからここは現代…?? 
 

「偽りなく答えろ。さもなくばこの場で喉をかき切る!貴様長髪男の手の者か!?」 
私が思案している間に、いつの間にやら先程「コーラ飲みたい(意訳)」と呟いていた彼の周りに武器を持っている方々に囲まれている。

「こんな可愛い子にシメられるなら悪くはないけど、なんか俺と誰かを間違えちゃってない?——長髪男なんて知らないなぁ、俺は石化がとけてからずっと一人だけど…?」

「!、どっかで見た顔だと思ったらテメー"あさぎりゲン"か!」 
「知り合いか!?」
「いや1mmも知らねぇゴミみてぇな心理本書いてたマジシャンだ」
「読んだことあるの?嬉しいね~そんでゴミみたいは酷いね〜メンタリストって呼んでよ」
 
『………なんかヤバそうな雰囲気』
 
「いやぁ勝手にラーメンいただいちゃったのは謝るよ。だからさ武器おろしちゃってくんない?もう怖くて手足ブルッブルでせっかくのラーメンこぼしちゃいそうでね」
「ぼぼぼくが!持っててあげるよう」

『……(なんかこの人嘘くさい人だなぁ、全然怯えてなんかいない。)』

「今日も1人で食材探してたらビックリ!懐かしいラーメンの香りがしてフラフラ〜っとさ」
「……ククク、まぁそういうことにしといてやるよ。ともかく世の中タダ食いはねぇ、ラーメン食ったヤツは全員!仕事があんだ」
 
「仕事?」 
「皿洗いとか?」

「そこのテメーもだ」
『げ、』
私を見つめる男の子は、髪の毛は白菜の様なネギの様な特徴的な髪型をしている。彼と目が合えば何故か驚いている様だ。
「おい、貴様も長髪男の仲間なのか!?」
『え!?いや知りませんけど…?』
 第一、名前を言ってくれなきゃ分からないんだよなぁ。長髪男と言えば私の中ではシンドバッドさんのイメージだから…。まぁ、この世界にいるとは思えないが。


 とりあえず食べてしまったものは仕方がない。お仕事手伝わないと。

「「「うおおおお」」」

『意外としんどいなぁ』
 現在、製鉄炉に大量の酸素を送り込む作業を私達はしている。腕は疲れるが普段の鍛錬に比べればしんどくない。
 隣にいる"あさぎりゲン"さんが、化け物を見る目で私をみているのは流石に傷付く。

「あさぎりゲン、大樹と杠は元気にやってっか?」
「あ〜そゆことね必死こいてる心の隙にカマかけようと。勇気あんなぁ、メンタリストにそういう勝負挑んじゃう?」
「…」
「でも安心しなよ。引くほど元気だからさ特に大樹ちゃんなんか底なしの体力!知ってんだろ、千空ちゃん」
 
「!、長髪男の手先確定だ、殺すか!?」
「待てバカ」
「あさぎりゲン、テメー100億%カマかけに気付いててなんで急にあっさり司の仲間だって認めた?」
「——情勢が変わったんだよ。コイツを見たからね」 

 『…司、?』
 一体誰のことなんだろうか。そしてあさぎりさんの言うコイツとは鉄のことだろうか。

「ぶっちゃけね〜10対0で司帝国の勝ちだと思ってた。」
「だろうな」
「俺の仕事は千空ちゃんが死んだことの確認だよ」
「"司!千空は生きてた!"ハイそれで君は一巻の終わり—そのつもりだった」
 だが、もし鉄の武器ができれば、勝負はわからない…!!
「ウソの報告をするだけだ。"原始的な集落があっただけ"、"千空は死んでる"それで千空ちゃんは助かる」
「ククク。も〜しそうしてくれると実にありがてぇ」
「俺はな〜んのポリシーもない世界一ペラッペラな男だ。可愛い子達と楽しく暮らせりゃそれでいい。司が死のうが千空ちゃんが死のうが知ったこっちゃない」

 『……(さっきから私ずっと空気なんだけど、何話しているのかさっぱりなんですが!?)』

「俺は誰を切ってでも勝ち馬に乗る!迷ってんだよ〜司を裏切って千空ちゃんの味方につくか!?司帝国VS科学王国、勝つのはどっちかね〜?」

「あ"?決まってんじゃねぇか、そんなもん科学王国だ!!」

『……(化学王国。この人達は原始的な服装をしているのに随分チグハグな名前なんだなぁ)』

 
「……おい、そこのテメーもだ。お前何者だ。その服装と剣…一体どこで手に入れた?」
『え?私!?』
「!、……君、司帝国にもいなかったよね?どこから来たの?」
 2人の視線が私に集まる。
『私の名前は、アリババ・サルージャです。……友人と旅していたら、光に包まれていつの間にか私一人だけここにいました。服と剣は元々所持していた物です』

「…」
「ど、どういうこと!?石化してないってこと?」
『石化…?していませんけど。え、?ここの集落の外にある石像達って元は人間だったんですか…!?!?』
 え、あの石像って本物の人間だったの!?!?
 というかね、ここって異世界だよね!?なんか私と顔の造形とか違う感じするし…!!

先程から無言の白菜、ネギ頭の彼は私の服の繊維等、観察している様子だ。
先程のあさぎりさんとの会話からみて彼は相当頭が切れるはずだ。私がこの世界のイレギュラーな存在であることを見抜いていてもおかしくなさそうだ。
 
2/26ページ
スキ