迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい
千空達がケータイを作りあげてしまった。この原始時代で。やったぁぁあ!と喜ぶ周囲。そんな中、場の空気を悪くすることを言いたくなかった私はそっとゲンに耳打ちする。『ケータイって1台だと無意味だよね?』「うん」はぁ、とため息を吐く私達。
「うむ……ところで声が大空を舞うのはいいが、それをキャッチして聞くのは誰なのだ?」
あーあー気づいちゃったか、コハクさん……。
「いっけね!もう1台必要だったわ」
「てか敢えて黙ってたでしょ、それ。最初っから2台って言うとみんな心折れるから……」
『あははは……』
「「ケータイ電話」かけるにはもう1台ないとだがな、コード伸ばしまくりゃ電話としては通じるはずだ…!!」
ということで村からと天文台の距離まで通話することになった。
「おうこっから喋ればルリんとこに聞こえるんだな!?」
「でも真空管が上手に作れてなかったら聞こえないんでしょ?これってば?ワシら1発で成功したことないからの〜」
「……オホン、クロムぅ!ついに完成した電話に乗せる大事な第一声はもう決めたのかなぁ〜??」
「向こうでルリちゃんが聞いてるよ、ほらぁ、クロムの本当の想い…!!!言うチャンスなんじゃないのぉ?今ココなんじゃないのぉぉ??」
『よし!!銀狼ナイスだ!!!』
こういう時原作アリババだったらハンカチ加えて悔し涙浮かべてそう。
いやぁ、やっぱりクロムとルリさんはデキてるのね!?!?前々からそんな気はしてたけど。
「通話スイッチオンなんだよ……!」
「ルリ……!見たかルリ。やべーだろ!!科学はよ……!!!!」
「「「「んがァー!!!!」」」」
まさかの天然系なんですね!?なんとなく分かってたけど!!!純情だね!?
「!?、なんなんだよテメーらは、さっきから……!」
通話側——、ルリさん側の声も聞こえていたので、成功したのだろう。だが、その割にはルリさん側で会話していないか? 悪いことでもあったのだろうか?
結論、悪いことじゃなかった。千空のお父さんのお墓はタイムカプセルになっていたようだ。ヒントは石神村に伝わる百物語。其之14。「スピーカーというおしゃべりが大好きな蜂がいました。スピーカーは墓石に針を刺すと死者の声をしゃべることができたのです」
タイムカプセルをとりだしてみればあらびっくり、ビンの底でレコードを作成していたようだった。
〈これを聴いている何百年後か何千年後のどなたわかりませんが——私は宇宙飛行士の石神白夜と申します〉
「「「「おおおおおお」」」」
「うるせぇ聞こえねぇよ」
「これが石神村の創始者様の」
「千空の父上の」
「肉声……!!」
〈なーんつってな!堅っ苦しー建前はおわり!!千空、石化から復活とげて今このレコードを聴いてんのは、千空、お前だろ。わかるんだよ俺には……千空、忘れんな、俺はずっとずっと、————……いやそういう父子の感動うんたらはいらなー派だな、お前は!とっとと本番にいこう〉
「ククク、わかってんじゃねぇか」
「ドライだな父上に」
優しい声だなぁ。千空のお父さん。
〈千空もしもお前がまだ村の仲間たちの心を掌握できずに困っていたらこれを聞かせるといい。音楽の灯の消えた彼らに————〉
そう千空のお父さんが言い、聴こえてきたのは女性の歌声だった。
綺麗な歌声だ。英語なので海外の方なのかな。なんだか懐かしい気持ちでいっぱいで涙が溢れてしまう。あーあここ来てから涙腺が緩くなったな。
「歌……」
「でもこんなの綺麗すぎるんだよ」
「天女の声じゃい……!!!」
「リリアンちゃんは俺らの時代でも歌唱力トップの1人だから、そんなのいきなり聴いちゃったらね〜」
聴こえてきた歌手の名前はリリアン、と言うのか。
「うおおおおん!すごいよう!歌がもう……凄く、ものすごいすごいんだようう!!」
「語彙」
「——千空たちの昔にはこんなすごい音楽がたくさんあったのぅ…?」
「あ”ぁ音楽だけじゃねぇ。ゲーム、テレビ、漫画、映画、世界には超絶面白ぇもんが山ほどあった。どいつもこいつも科学の進歩で作れるようになったエンタメどもだ。」
「!」
「現物は消えちまったが、全部人類の記憶の中に残ってる!テメーらにも全部見してやるよ。司帝国ブチ壊して世界中の石像復活させたらな……!!」
「ハ!素晴らしいぞ士気がだだあがりだ!!」
「やるね〜千空ちゃんパパ。石神村のみんなにも石化した旧人類を復活させたいってモチベ作っちゃった。リリアンちゃんの歌1発でね…。村のみんなを戦いに巻き込んじゃった————っていう千空ちゃんの引け目も消えるんじゃないの……?」
『!』
「…………クククねぇよ。そんな引け目はよ」
『………私には散々あんなこと言ったくせに嘘つき』
一人で抱えこむな、みたいなこと言ったクセに1番抱えこんでるのお前じゃねぇか……!!!!
「司軍のみんなもこのレコード聴いたらいいんだよ…」
「綺麗すぎてビックリ、ズッキューン!で攻撃の手止めてくれちゃったりしないかの〜」
「いや、現代人だとリリアンちゃんの歌とか有名すぎてね今更ビックリズッキューンもないと思うよ?大体こんな音質じゃ……」
何か思案している様子のゲン。一体どうしたんだろう。 後に、考えていたこととはきっとこのことだったんだろうな、と私確信している。
「あ”ー!わかった!じゃねぇー!ひとつとわかんねー!」
バキリと大きな声が聞こえる。
眠れなかったので川で顔を洗いに行き、戻ってくればクロムの大きな声が天文台から響く。
『…クロムのやつ、今何時だと思ってるんだよ!?』
はぁ、注意しにでも行くか。と天文台の傍に寄れば偶然聞こえてしまった。
内容はケータイを司帝国にいるスパイ大樹と杠という子に届ける。そしてこっそり司軍に(リリアンの声真似をしたゲン)の声を聞かせる。リリアンの歌声を流して、「これアメリカからの電話!世界は滅びてないよ〜」と騙す。らしい。
すんごいこと考えたね……ゲン。きっとゲンのアイデアなのだろう。
「ククク連中は旧世界が滅びたと思ってっから、お強い司リーダー様についてってんだ」
「いや滅びてんだけどね」
「実は復興してて軍が助けに来るとなりゃ、話はまるで変わってくる。司軍を寝返らしたら、あとはケータイで連絡とりあって——一気に制圧すりゃ、一滴の血も流れねぇ」
「おおおおお!!!!…………って後でウソバレバレじゃねぇか!?」
「いーのいーの!ともかく司ちゃんと氷月ちゃんさえ抑えちゃえばどうにでもなるから」
「テメーらしさ100億%のドゲス作戦だな。唆るじゃねぇか!!」
「!」
「……あとで俺と千空ちゃんが司帝国のみんなに殺されるほど恨まれる。そんだけだよ〜」
「村の連中にはやり口は黙っとけよ。悪者は旧世界の俺ら二人で十分だ」
「何言ってやがる。今聞かされたから、俺も共犯じゃなぇか!」
「テメーが勝手に首ツッコんで来たんだろうが!」
「文字通り」
「おう、そもそも俺は実行部隊は俺だ!クソでけぇケータイ現地でセッティングする技術者がいんだろ?顔割れてる千空より俺だろよ!!」
「————3人仲良く地獄に堕ちて、かわりに世界を70億人救おうぜ…!!」
あー、私は何も聞いてない。知らない。クロムのように千空とゲンの元に割り込む勇気がなかった。
『男の子ってずるいな』
こういうのは男の友情ってやつだよな。
あの3人が地獄に堕ちたら、私は大地獄に堕ちることになるだろう。あーあ、この世界怖いなぁ。自分のせいで国王だった父が亡くなり、親友だった男——カシムも目の前で亡くした。そんなやつの方がよっぽど地獄生きだろう。
