迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい
『よし、すずちゃんお手伝いだ!!』
「うん!」
『私は冬備えのお手伝いしてくるから、すずちゃんはすずちゃんのミッションを遂行してくれよ?』
「うん!」
私が敬礼をすると、すずちゃんも真似して敬礼をする。くっ、っかわいいなっ…!!
あーあ、春だったら私が大得意の花冠作ってすずちゃんにプレゼントできるんだけどなぁ。前の世界でアリババちゃんと唯一呼んでくれる友人にプレゼントしたことをふと思い出した。
『よし、金狼、銀狼!!』
「どうしたの?」
「なんだ?」
『今から猪を狩りに行こう!!!!』
その時のアリババの笑みは遠足に行く子供のようだったと後にゲンが語っている。
***
『この辺りに大きな足跡があるんだよな』
アリババがしゃがみ込み、地面に残された蹄の跡を指差す。
「確かに新しいな」
金狼もしゃがみこみ確認する。
猪は気性が荒いので、危険な相手だ。
しかしアリババは楽しそうだった。
『猪鍋楽しみだな~!』
「まだ獲れてもいないだろう」
「アリババちゃん。気が早いんじゃないの!?」
金狼と銀狼が呆れたように言う。
その時だった。
藪の奥からガサリと大きな音が響く。
現れたのは巨大な猪だった。
「ぎぃやぁあああ」
『いたぞおおおお!!!!』
悲鳴をあげる銀狼に対し、アリババは嬉しそうだった。
猪が突進するが金狼が横から飛び出し、その進路を塞いだ。
「こっちだ!」
猪が牙を振るう。
金狼は紙一重で回避した。
その隙にアリババが背後へ回り込む。
「今だ!」
『うん!』
手にした宝剣を猪の首筋に突き刺し、猪は地面へ倒れ込んだ。
『やったぁぁぁ!!』
「よ、よかった…!!」
「うるさいぞ」
その後何匹か猪の狩り、村へと持ち帰れば皆喜んでくれた。
「おかえりー!アリババお兄ちゃん!」
ぎゅっとすずちゃんを抱きしめ返す
「オニイチャン……?」
「なぜアリババは女性なのにお兄ちゃんと呼ばれているんだ?」
『私はすずちゃんの王子様らしくて、お兄ちゃんって呼ばれてます……』
なんだか自分で言ってて恥ずかしくなってきたや…顔をパタパタと手で扇いでいれば、一番聞かれたくない相手に聞かれてしまった。
「ほーん、アリババ王子ちょっとこっち来い」
『おー!………………待って、千空。今さりげなくアリババ王子って呼ばなかったか!?!?』
そういやあ前の世界でも敵からアリババ姫じゃなくてアリババ王とかって呼ばれてたな。今思えば皮肉みたいなもんだよな!?何故今まで気付かなかった!?!?
***
『で、何の用だよ?』
「いや、何でもねぇ」
『は?……………お、おおお前、!私をからかうためだけに呼んだのか!?!?』
「テメーはいちいちリアクションが大きい女だな!?」
「いや、ごめんね……?アリババちゃん呼ぶように、頼んだの俺なの」
『用事あるじゃねぇか???』
「ちょ、落ち着いてアリババちゃん!!!」
いや、何でもねぇって今千空が言ったよね!?というかゲン!一体何の用事なんだよ!?
「最近ちゃんと休んでる?」
『休んでるけど…?むしろすずちゃんと遊んでばっかで申し訳ないって思ってますけど…』
むしろ申し訳なくてさっさとここから帰りたいんですが!?もしかして今から攻められるんですかね??
「すずちゃんから、"色んな人の手助けしてて、アリババお兄ちゃんがお休みできてないよっ!!"って言うからさ」
『それは子供目線の話じゃないのか?』
めちゃくちゃ声真似似てるんですが???どっからその声出した!?
「…大人も言ってるよ?冬支度するのに木の実とったり猪の狩るの、手伝ってくれた、って」
『はぁ、』
「まぁ兎に角休憩は大事よ~?」
これでも前の世界にいた時より動いてないんだけどなぁ。それに動いてないとと太るんだよな。
ということでしばらく可愛い監視が二人つくことになりました。
その名はー?スイカちゃん~とすずちゃん~!
そして、現在何をしているかと言うと。
「アリババも石神村の仲間なんだよ!」
『そうだよな、あの格好じゃ悪目立ちするからな…』
「ああ!とても似合っているぞ!!」
『う、うん……』
服装はコハクと同じでワンピースだ。服の色は赤色だ。
体がムチムチで服のせいで体のラインがハッキリわかるし、丈も短いし……せめてルリさんくらいの長さが……いや、闘うには動きやすい方がいいもんな!!
「アリババ!似合ってるんだよ!!」
「………………アリババお兄ちゃんがお姉ちゃんになっちゃった!!!」
「アリババは元々女だぞ?」
「知ってるもん!!!!」
なんだか拗ねたようなすずちゃん。
『…………すずちゃん、似合ってないかな?』
しょぼんといかにも落ち込んでいます、と表情を浮かべれば、すずちゃんは、「ううん!そんなことない!でもアリババお兄ちゃんワンピース着てるからお姉ちゃんって呼ばなきゃいけない……」と寂しそうな表情を浮かべている。
『ああ!そういうことだったんだ。良いんだよ。そのままで。私の友達もアリババくんってずっと呼んでたし』
「そうなの?じゃあすずもアリババくんってよぶ!」
『うん!!』
元々私の事を男だと勘違いしていた青髪の友人。女子だと気付いても私の呼び方を変えない彼は、「アリババくんはアリババくんだからね」と笑っている姿を何となく思い出した。とーっても懐かしい気持ちになってしまった。あーあ寂しいな。
暖かい上着を羽織り、千空達の元へ向かう。手伝ってほしいって頼まれてたんだよな。
「ヤベー!雪だ。点灯テスト中止か?」
「いやできれば今日がいい」
「で、この木に、飾りつければいいのか?」
「ああ」
千空と一瞬目が合えばぎょっとされた。何かしたっけ?
木々に巻き付けられた無数の灯りが輝き始める。
雪の粒が光を反射して、夜空から星が降っているようだ。冬の冷たい空気さえ忘れてしまうほど、その景色はとても幻想的だった。
「イルミネーション……なんか一気に戻ったみたいだね~現代に」
『わぁ、綺麗だな』
「ここまで2ヶ月。オホー、けっこうかかっちゃったのう〜」
「いやまぁ予定通りだ」
「あ〜もしかして今日って——クリスマスか……!?」
「あ"ーそういやそうだな。偶然にもな」
「ウッソ〜」
「やべぇ思いついちまったぜ……!いるんだろいろんな素材が?ケータイ作んのによ。バッテリーと電球がありゃー行けんじゃねぇか、鉱石採りに。今まで行けなかった洞窟深くまで……!いよいよ出動だぜ。クロム科学発掘隊!!!」
『なんだかみんな元気ないなぁ…』
最近どことなく気分が沈んでいる気がする。気になったのでさりげなくゲンに聞いてみれば、なんと千空が行き詰まってるらしい。そっか、だからかぁ。よし、私も手伝えることするんだ。
『スイカちゃん、何が良さそうな石でもあったか?』
「……スイカは千空みたく石博士じゃないけど、森や山で遊んでるから石ならいっぱい見てるんだよ……!」
スイカちゃんが1人必死出探している姿を見て、何故だかそばにいたい、と思ってしまった。
『うん』
「珍しい石見つけてお役に立ちたいんだよ…!!」
『よおーし!私も手伝うよ!』
「!、ありがとうなんだよ!!」
『私もね、いつも皆の為に頑張ってる千空とスイカちゃんの力に私もなりたいんだ!!!』
にししと二人で顔を見合せて笑う。一生懸命探していれば、いつの間にやら人が集まってきていた。
新年だから初日の出みんなで拝もうよ。とのこと。
『よし、行こう!!』
「ス…スイカも行くんだよ!」
「なんだスイカとアリババ、一晩中石漁ってたのかよ!?」
『そうそう。スイカちゃんと探してたんだ〜』
「新年か〜。でも石化の分体内カレンダーズレちゃってるしもう自分の年もわかんないね」
「生きてた日数で考えろ」
「そんなの覚えてるわけなかろう…」
「ええ、千空ちゃんは??」
「6268日」
「ヒ〜……」
皆の後ろを歩き、そっと村の皆、科学王国の皆を見守り、下を向く。
なんだかよく分からないが懐かしくて寂しくなっちゃう。
『なんだろ、今日おかしい。……ホームシックってやつだ』
「?、どうしたの?アリババくん??」
『ううん。なんでもないよ!すずちゃん』
ギュッと手を繋ぐすずちゃん。あ〜今その呼ばれ方されるの大ダメージ。22歳、立派な大人なのに恥ずかしいなぁ。
「朝陽が登るぞ!」
コクヨウさんの声に目線を上に上げれば、キラキラと光輝く蒼い宝石……。
「綺麗……」
「わぁ!!!!綺麗だね、アリババくん!!」
『!…………うふふ、うん……そうだね』
綺麗だ。とても綺麗。でもこの綺麗な景色を元の世界の仲間達に見せたかったな。なんて思ってしまうのは今の仲間に失礼何じゃないかって思ってしまう。……………………いや、そうだよな、魅せたかったモノは物語として元の世界に帰った時に話すのに沢山思い出を作るんだ。そうだよ、きっと青髪の友人ならそうするはずだ。
「初めて見たぜ!こんなもん…」
「あ"ー俺もだ!ウルトラレア鉱石だな。クロム&スイカ&アリババの超絶グッジョブじゃねぇか!!こいつは現代のフィラメントにも使われる。——原子番号74スタングステン。熱に負けねぇ全宇宙最強の金属だ…!!!」
日が変わり、千空とクロムとマグマの3人が洞窟探検に出発していった。
3人に手を振り、見送れば、ゲンが悪役全開の笑みで「やっといなくなってくれたね〜。石神村から、千空ちゃんがさ〜」と話をする。
『!?』
咄嗟に身構えるが、ゲンが話した内容は「千空の誕生日のお祝いをしようよ!!!(意訳)」とのことだった。何あのメンタリスト……!?!?人を驚かせやがって。早とちりした私も悪いけど。
