迷宮攻略よりも文明復興の方が難しい
「そもそも千空、貴様はどこから来た!?認めんぞよそ者が長など!!」
「おやおやこれは先代長様じゃねぇか。テメーの認める認めねぇに1mmたりとも興味ねぇなぁ〜」
「えええどっちにつけばいいの、これ!?」
「コクヨウ様に決まってるでしょ、バッカじゃないのあんたたち!!」
「でもちゃんと神様の前で優勝して」
「巫女様と結婚までしちゃってるしねぇ…」
「ともかく優勝したんだから酒だ!酒よこしやがれ!!」
「言い方!!」
「とんでもなくアレな人に聞こえちゃってるぞい」
『ふっはは!』
皆混乱してんなぁ。……きっと前代未聞よね。なんて見守っていれば村の住人がお酒を持ってきてくれた。
「この瓶ダメだ。完璧に酢になっとる」
「捨てんな!それも要る!」
なんてにこやかに見守っていれば、
「ゴボッ!ゲホッ」と吐血してしまうルリさん。
「ルリ姉……!!」
「まー1杯!」
「飲みたいだけでしょ、あんたたちは」
「今日はこれから皆で夜通し飲み明かす婚礼の儀!」
「ほーんそうか、——じゃあ離婚!」
『……………………は、?』
千空が離婚した。
こんなに最速で結婚して離婚したやつ初めてみたよ!?!?
「ククク酒&酢大量ゲットだ!とっとと行くぞ化学王国民ども!!」
「いつの間にワシが化学王国民になっちゃったんじゃい!」
「すまないルリ姉、説明は後にする!」
『し、失礼致します』
「む、…むちゃくちゃすぎる男だ……!!」
「…よくわからないけれど私は前代未聞のバツイチ巫女になったみたいです。……ねぇ、クロム」
なんて背後から聞こえた気がした。…………千空。バツイチとかって結構気にする人って意外といるもんだからな…!?まぁ心配しなくともクロムがいるから大丈夫だとは思うけど。
千空達は、万能薬——サルファ剤を1日で作りあげ、ルリさんに薬を飲ませていた。ゲンは「残念、俺は村に入れないから、ルリちゃんが飲む記念シーンは立ち会えないよ」と言うので『じゃあ私も待ってよっかな』と言えば、「ほらほらアリババちゃんも行きなよ〜」とゲンに背中をグイグイ押されたので、私もほぼ何もしていないが堂々と村に入った。挙動不審にしてるよりかは、「え?ここ私の村ですけど?」みたいな態度取ってる方がいいよな。
そして驚いた事が1つある、たまたまルリさんの薬を飲ませている千空の背後にいたのだが、薬を飲ませながら「唆るじゃねぇか……!!」と千空が口に出しており、アングルがちょっとなぁ……って感じで。きっと千空はそういうつもりで言ったワケではないと思うのだが、私からしてみれば……うんちょっとなんとも言えないです!ごめんなさい!!!!
村にいたネズミの死骸を、持ち帰ってきた千空。
「どうすんの?千空ちゃん。そのネズミ……?」
「食べるのか?」
「即そういう発想になるのがすごいね……」
「いや私だってネズミは食べないぞ」
「ああ良かった〜」
「普段は」
「ああ…普段は…ね」
『…昔食べたことあるけど鶏肉みたいな味だったな…』
「え、アリババちゃん食べたことあるの!?ジーマーで!?!?」
『そうそうジーマー。別に好き好んで食ったわけじゃないけどな』
そりゃあ、スラム育ちですから。
「うわぁ……」
『食えるもんは大体食ったぞ。ネズミ、野鳥、虫……』
「虫!?」
流石にコハクでも虫食べたことないんだな。驚いている様だ。
「いやネズミでも十分衝撃なんだけど!?」
『限界までお腹が空くとさ。食べれるか食べれないかしか考えられなくなるんだ。……まあ、今は食べないけどな!』
「よ、良かった……」
安心したようにホッとするゲン。
「ククク貴重なタンパク源だからな。ただ残念ながら今は違うがな。検死だ。」
検死をした結果を千空から聞けば、「もしもルリが、肺結核つまり敵が結核菌なら今の俺らに太刀打ちする術はねぇ……」と説明を受けていれば、スイカちゃんが村から走ってきた。
「たた大変なんだよー!!ルリ姉、ルリ姉が……!!」
走って、ルリさんのいる元へ向かえば、激しい咳をするルリさん。
「こんなに酷いのは初めてです。ルリ様を診てきましたが危険な状態かもしれません」
「変な白い粉!アレ飲んでから急によ!?だから言ったのに妖術の薬なんか……!!」
「ルリ」
「ルリ姉……」
「起きなくていい横になれ」
「ゆっくり呼吸しろ!!」
「千空…??」
入口付近でしゃがみ込む千空。
「千空、貴様……!!」
ルリさんとコハクの父、コクヨウさんはそう言って千空の首元を掴もうとしている。私は咄嗟に2人の間に割り込みコクヨウさんの手を掴む。
「!、離せっ!!!……あの薬のせいだ、でなければルリが!ルリがこんなにも急変するわけがない!!」
「あ"あ"かもな」
「「「!?」」」
「やはり……」
「菌がいきなり本気だしてきやがった。周りの無害な菌にまで毒の遺伝子ブチ込んでお仲間増やしまくるっつう技でな。"肺炎レンサ球菌"様のスペシャル技だ。つまりルリと病名は——肺炎だ。」
『!』
「たかが肺炎じゃねぇぞ、人類が何億人も殺してきた難病だ。だがな、サルファ剤は肺炎レンサ球菌をブチ殺す!勝ったんだよ!人類の科学はよ……!!!」
——正体が分かりゃ、もう敵じゃねぇ。後はガンガンサルファ剤ブチ込むだけだ!
「まだ言うか、貴様!その妖術の毒を——!」
千空を殴ろうとするコクヨウさん。私が動く前にコハクが動いた。
コクヨウさんの攻撃を防いだコハクは、「父上、これは妖術などというまやかしではない。科学という人類の英智の結晶なのだ。私は化学をそして千空を信じている……!」
「おうよ!俺らもだぜ!」
コハク、クロムに続けて頷く銀狼、金狼、スイカちゃん
「ワシもまぁ、なんとなくの……」
『…私は村の者ではありませんが信じています……千空のことを!』
そうして、ルリさんは肺炎を完治し、村の外に出られるようになった。
「もう何年ぶりかも忘れました。村の外に出たのも、走れるのも……」
そう言うとルリさんは走りだす。
『ええええ、そんなに走って大丈夫なの!?!?というか速いな!?』
「コハクちゃんのお転婆かホントは姉妹の血筋なんじゃの」
皆目玉が飛び出そうな位びっくりしてるよ!?
そっと千空の隣に寄り、彼の腕を掴み上げたコクヨウさんは、「皆の者!!千空。この男こそ、今日から石神村の新しい長だ……!!」
と皆に宣言する。石神村と聞いて驚愕している様子の千空。
「——そう、千空。私は悠久の遥か昔から知っていたのです。貴方の名前は石神千空」
「……あ"ー、おかげでやっと話が繋がったわ。全部一気に謎が解けた」
「「「!」」」
「いやすまない私には何一つ分からないぞ」
『悪い。私も何言ってるのかわからない』
「おう村と名前が偶然一緒とかありえねぇだろ。てかルリは千空のこと知ってたのかよ!?」
「ククク、おおかた巫女の伝承話に出てくんだろ、俺が」
「……はい」
「!?」
「伝承話って例のゴリラ出てくる桃太郎とかの……」
「ああ巫女が後世に知恵を伝授するための百物語だ」
「お母様が話してくれたのはとても強くてそして、とても優しいお話でした。百物語其之100。題名は、"石神千空"」
「ふしぎなお話すぎてスイカにはどういうことかわからないんだよ……?」
「おう何千年も昔によ人類石になったんだ。そこら中に石像が転がってんだろ?あれが全部人間なんだよ」
「千空の親父たち6人だけが宇宙にいたおかげで助かった。俺ら石神村の住人は全員その何千年越しの子孫ってことだ……!!」
「……つまり私たちは皆、千空の親戚なのか……?」
「ククク、俺と白夜が血縁ねぇから系図上だけな。てか何百世代離れてんだよ、親戚もクソもねぇだろが」
『……(そうか、なら千空はもうお父さんとは会えないのか。)』
と、その考えが咄嗟に浮かんでしまった。大切な人に会えなくなってしまうのは悲しいよな。
「おーい!何してんの?主役達が、宴なんだから新村長誕生の!」
「だからあんたらは飲みたいだけでしょ!!」
「…………行きましょうか宴に。みんなで」
「お前も飲め飲め!」
『え?あ、はい』
いつの間にやら、ルリさんと千空は姿を消していた。きっと今頃大事な話でもしているのだろう。まあ帰ってきたら笑顔で千空達を迎え入れるのが私の仕事だ。
「いいペースで飲むな!」
『あはは、ありがとうございます』
私の飲みっぷりに遠く離れた位置にいるゲンと目が合う。「ちょ、ジーマーで大丈夫なの!?アリババちゃん」と目が語ってるよ。
大丈夫、と笑みと共にハンドサインをする。それからしばらくして私の意識がなくなった。
『聞いてくれよ!ゲン〜!!』
「え、ええどうしたの…?アリババちゃん!?」
先程まで離れた位置にアリババちゃんがいたはずなのに、いつの間に俺の隣を陣取っている。
『寂しい……』
「!」
そっか、そうだよね。アリババちゃんは俺より歳下の女の子だもんね。千空ちゃん達と話していた内容をコッソリ聞いてたので、異世界人なのは把握している。
『っ〜アラジン、モルジアナ……!!』
「はいはい」と背中をポンポン叩く。アラジン、モルジアナと言うのはアリババちゃんの仲間だろうか。
『ううう…………ゲンって優しいよな』
ふと下を向いていたアリババちゃんが、こちらを覗き込むように見上げている。キラキラと輝く瞳は涙でウルウルしており、宝石みたいだ。頬もほんのり色づいていて、…………って!
心臓が変な音を立てた。
「ヴッ」
何この破壊力バイヤーすぎない???
「いや〜俺はコーラ専門でさ」
「コーラ?」
「飲んだらマジ話出来なくなっちゃうしね、村がやっとまとまったんだから伝えないと……」
「あ"ー聞かせてもらおうじゃねぇか、メンタリスト。何があった。司帝国に」
「来るよ、司ちゃん達が」
「「!!」」
いつの間に眠りについていたのか、目が覚める。頭がポヤポヤする状態で話を聞いている、そうか、敵が来るのか。なら、なんとかしないとなぁ。
「ククク、いよいよ科学王国の力魅せどころじゃねぇか、唆るぜこれは……!!!!」
