Touch wood
それはいつもの日常の中で起きた。
パドマはだだっぴろい砂漠を眺める。運転するニコラスの背中にもたれながら。
その隣でヴァッシュは呑気にドーナツを食べている。
二つの恒星、水蒸気により生まれる雲は少なくまばらに飛んでいる。
「呑気な空ね〜」
バイクのエンジン音越しにニコラスは大声を出す。
「じゃあ運転代わらんかい!」
「女の子に運転させるの?ウルフウッド」
「しゃーないやろ何時間走っとるんやこれ!!」
いつものじゃれあいも合い余って、余計に日常を彷彿とさせた。
ここ最近は物騒な事件が多く続いた。
たまにはこんな日があってもいいだろう。
パドマは二人の口喧嘩…もといじゃれあいを聴きながらまた空を見上げる。
カールしたクセの強い髪がゆらめいて、坂道を転がる風がパドマの背中を抜けていく。
すると遥か遠くから、上下に揺れながら空を飛ぶワムズがいた。
パドマが警戒したのは、ワムズがただ飛んでいるだけではないからだ。長い寿命の果てに墜落しようとしている、飛行型ワムズ。
どう見ても巨大で、尚且つこちらに落ちそうになっているのだ。
「ちょっと!喧嘩してる場合じゃないよ!」
パドマの声に二人はようやく空を見上げた。
ワムズの影が3人とバイクを覆う。その大きさたるやヴァッシュでさえ初めて見る巨躯であった。
ぽかーんと口を開けて思わず呆然としてしまう。
そしてウルフウッドは前方を見た。
街がある。
ワムズにとってみれば至極どうでも良いことなのだろう。
だが人間からすればあの巨体、この速度。このまま突っ込めば生き残ることなど無理だろう。
先程まではいつもの日常だったのにこうしてハプニングはやってくる。
パドマとウルフウッドは互いの位置を入れ替える。
ウルフウッドはパドマの腰を持ち、足をサイドカーに引っ掛けながら回るようにパドマにハンドルを握らせる。
ウルフウッドは荷台のパニッシャーをすぐに取り出し銃口を向けた。
「バイク跳ねるで!歯ぁ食いしばっとき!」
焼夷弾をワムズに向かって迷わず放つ。
ウルフウッドが警告した通りバイクは衝撃によって跳ねるが、その衝撃にすら負けないウルフウッドの肉体はどうなっているのか毎度疑問に思うパドマ。
焼夷弾は真っ直ぐワムズの尻尾に当たり、悲鳴を空に響かせた。
「これで街のやつらもちったぁ逃げるやろ!」
「でもまだだ!!
パドマちゃん!もっと飛ばせる!?」
「で、できるけど!あんな大きなワムズどうするの!?」
「可哀想だけど手前で落とす!」
人間二人は、はぁ?と怪訝な顔をする。
ともかくパドマは言われるがままにバイクの速度をさらにあげる。
「んなら、もう一発ぶち込んどくで」
巨大な弾…もはやミサイルのようなそれをパニッシャーに装填する。
そして鈍い音を立てて発射した。今度は翼に被弾する。
速度が落ちただけでなく、片翼がだらりと垂れ下がることで体は否応なしに旋回を始めた。
「いいんちゃうかコレ」
「…ダメじゃない?」
「ダメだと思うなぁウルフウッド…」
旋回することでワムズの頭は三人を向く。つまり、その巨躯はこちらに落ち始めていたのだ。
風圧により砂漠の砂が巻き上がる。
とうとう垂れた翼が砂漠に接面した。
「どうすんのよー!」
砂漠に翼を取られて余計に減速する。
砂の波が三人の頭上に迫り上がっていた。
「トンガリ!ジャリっ娘しっかり捕まえとけや!」
「へ!?」
ヴァッシュがパドマの腕を引っ張り抱き寄せる。
ウルフウッドはまたもや焼夷弾を装填し、真下に撃ち込んだ。
発射の衝撃だけではない。膨れ上がる砂漠の砂とバイク。
ヴァッシュとパドマは同じタイミングで空へと跳ね上がった。
そしてウルフウッドも。
ぐるぐる回る視界に情報処理が追いつかない。
「ウルフウッドーーー!!」
「そっちで!なんとかせーーー!!!」
波を越えたはいいが、今度は着地をどうするのか。
翼を持ち上げたワムズの皮膜と運良くウルフウッドの飛んだ方向は近い。
パニッシャーで衝撃を和らげながら上手く着地したのを見た。
だがヴァッシュたちの真下はワムズの頭。
硬い外皮は鱗のように艶があり恒星を映し出していた。
このまま落下すれば人体などあっという間にバラバラになるだろう。
とはいえ考える時間などあるはずもない。
ヴァッシュは今ある手段をいくら考えてもパドマを生かす方法は見当たらなかった。
「大丈夫!私がいるよヴァッシュ!」
情報と全てのことが頭の中を駆け回っていた中、パドマの声が脳内に響く。
ああ、なんてことを言ってくれるのだろう。
パドマを抱く腕に力が入る。
するとヴァッシュの右腕が内側から発光した。
その眩さにヴァッシュとパドマは目を瞑る。
何が起きているのか、どうしているのか。
ヴァッシュの背中がワムズの外皮に接触するまで10センチのところで空間は圧縮され、その砂漠には始めから何もなかったかのように、ただ広い空を抱いていた。
「あ……?」
ヴァッシュのいる方向が一瞬光ったのはニコラスにも見えていた。
だが目の前のワムズごと消えたのは自分の目を疑うほかない。
ぽつんと残された黒い男。
片足は焼夷弾による火傷に晒されていた。
「ど……ど…どこ行ったんやあのトンガリジャリっ娘〜〜〜〜!!!!」
そうツッコミを入れるしかなかった。
パドマはだだっぴろい砂漠を眺める。運転するニコラスの背中にもたれながら。
その隣でヴァッシュは呑気にドーナツを食べている。
二つの恒星、水蒸気により生まれる雲は少なくまばらに飛んでいる。
「呑気な空ね〜」
バイクのエンジン音越しにニコラスは大声を出す。
「じゃあ運転代わらんかい!」
「女の子に運転させるの?ウルフウッド」
「しゃーないやろ何時間走っとるんやこれ!!」
いつものじゃれあいも合い余って、余計に日常を彷彿とさせた。
ここ最近は物騒な事件が多く続いた。
たまにはこんな日があってもいいだろう。
パドマは二人の口喧嘩…もといじゃれあいを聴きながらまた空を見上げる。
カールしたクセの強い髪がゆらめいて、坂道を転がる風がパドマの背中を抜けていく。
すると遥か遠くから、上下に揺れながら空を飛ぶワムズがいた。
パドマが警戒したのは、ワムズがただ飛んでいるだけではないからだ。長い寿命の果てに墜落しようとしている、飛行型ワムズ。
どう見ても巨大で、尚且つこちらに落ちそうになっているのだ。
「ちょっと!喧嘩してる場合じゃないよ!」
パドマの声に二人はようやく空を見上げた。
ワムズの影が3人とバイクを覆う。その大きさたるやヴァッシュでさえ初めて見る巨躯であった。
ぽかーんと口を開けて思わず呆然としてしまう。
そしてウルフウッドは前方を見た。
街がある。
ワムズにとってみれば至極どうでも良いことなのだろう。
だが人間からすればあの巨体、この速度。このまま突っ込めば生き残ることなど無理だろう。
先程まではいつもの日常だったのにこうしてハプニングはやってくる。
パドマとウルフウッドは互いの位置を入れ替える。
ウルフウッドはパドマの腰を持ち、足をサイドカーに引っ掛けながら回るようにパドマにハンドルを握らせる。
ウルフウッドは荷台のパニッシャーをすぐに取り出し銃口を向けた。
「バイク跳ねるで!歯ぁ食いしばっとき!」
焼夷弾をワムズに向かって迷わず放つ。
ウルフウッドが警告した通りバイクは衝撃によって跳ねるが、その衝撃にすら負けないウルフウッドの肉体はどうなっているのか毎度疑問に思うパドマ。
焼夷弾は真っ直ぐワムズの尻尾に当たり、悲鳴を空に響かせた。
「これで街のやつらもちったぁ逃げるやろ!」
「でもまだだ!!
パドマちゃん!もっと飛ばせる!?」
「で、できるけど!あんな大きなワムズどうするの!?」
「可哀想だけど手前で落とす!」
人間二人は、はぁ?と怪訝な顔をする。
ともかくパドマは言われるがままにバイクの速度をさらにあげる。
「んなら、もう一発ぶち込んどくで」
巨大な弾…もはやミサイルのようなそれをパニッシャーに装填する。
そして鈍い音を立てて発射した。今度は翼に被弾する。
速度が落ちただけでなく、片翼がだらりと垂れ下がることで体は否応なしに旋回を始めた。
「いいんちゃうかコレ」
「…ダメじゃない?」
「ダメだと思うなぁウルフウッド…」
旋回することでワムズの頭は三人を向く。つまり、その巨躯はこちらに落ち始めていたのだ。
風圧により砂漠の砂が巻き上がる。
とうとう垂れた翼が砂漠に接面した。
「どうすんのよー!」
砂漠に翼を取られて余計に減速する。
砂の波が三人の頭上に迫り上がっていた。
「トンガリ!ジャリっ娘しっかり捕まえとけや!」
「へ!?」
ヴァッシュがパドマの腕を引っ張り抱き寄せる。
ウルフウッドはまたもや焼夷弾を装填し、真下に撃ち込んだ。
発射の衝撃だけではない。膨れ上がる砂漠の砂とバイク。
ヴァッシュとパドマは同じタイミングで空へと跳ね上がった。
そしてウルフウッドも。
ぐるぐる回る視界に情報処理が追いつかない。
「ウルフウッドーーー!!」
「そっちで!なんとかせーーー!!!」
波を越えたはいいが、今度は着地をどうするのか。
翼を持ち上げたワムズの皮膜と運良くウルフウッドの飛んだ方向は近い。
パニッシャーで衝撃を和らげながら上手く着地したのを見た。
だがヴァッシュたちの真下はワムズの頭。
硬い外皮は鱗のように艶があり恒星を映し出していた。
このまま落下すれば人体などあっという間にバラバラになるだろう。
とはいえ考える時間などあるはずもない。
ヴァッシュは今ある手段をいくら考えてもパドマを生かす方法は見当たらなかった。
「大丈夫!私がいるよヴァッシュ!」
情報と全てのことが頭の中を駆け回っていた中、パドマの声が脳内に響く。
ああ、なんてことを言ってくれるのだろう。
パドマを抱く腕に力が入る。
するとヴァッシュの右腕が内側から発光した。
その眩さにヴァッシュとパドマは目を瞑る。
何が起きているのか、どうしているのか。
ヴァッシュの背中がワムズの外皮に接触するまで10センチのところで空間は圧縮され、その砂漠には始めから何もなかったかのように、ただ広い空を抱いていた。
「あ……?」
ヴァッシュのいる方向が一瞬光ったのはニコラスにも見えていた。
だが目の前のワムズごと消えたのは自分の目を疑うほかない。
ぽつんと残された黒い男。
片足は焼夷弾による火傷に晒されていた。
「ど……ど…どこ行ったんやあのトンガリジャリっ娘〜〜〜〜!!!!」
そうツッコミを入れるしかなかった。
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